2013/5/17
2619:定期演奏会

サントリーホールの入口に着いたのは、7時10分ほど前であった。先月ほぼ同じ時間にここに来た時には、あたりは暗かったが、今日はまだ明るさが残っていた。「日が伸びたな・・・」そう思いながら入口を入った。
胸のポケットに入れていたチケットを取り出して、係に女性に見せた。そして階段を上がって「C1」の扉からホールの中へ入っていった。「2階C10列19番」チケットに記載されている座席番号を確認しながら、その座席を探した。
2階席のやや後方、着席して辺りを見渡すと何故かしら外人の団体さんが座っていた。なんとなく緊張した。
今日のプログラムは、前半がショスタコーヴィチ 交響曲第1番で、休憩を挟んだ後半はドヴォルザーク 交響曲第8番である。演奏はユーリ・テルミカーノフ指揮読売日本交響楽団。お目当ては後半のドヴォルザーク 交響曲第8番である。
まずはショスタコーヴィチの交響曲第1番から、構成は古典的な4楽章構成。しかし、内容は若く才能あるシュスタコーヴィチが自らの才気が溢れ出る勢いのままに作曲の筆を進めた感じが良く出ている。
近代的な響きとリズムが錯綜する。少し掴みどころが分からない感じもないわけではなかったが、その才気の奔流に圧倒される感じであった。
15分の休憩時にはホールの外に出て、日が落ちて心地よい気温の外気に触れた。ホールの中は大ぜいの人間が出す熱で少し蒸し暑かった。
後半はお目当てのドヴォルザークの交響曲第8番。こちらも伝統的な4楽章構成。第1楽章が始まった。「ドヴォルザークはチャイコフスキーと並ぶメロディーメーカーだ・・・」そんな感想が自然と漏れる。
ショスタコーヴィッチにみられるアイロニカルな響きはそこにはなく、生の喜びをストレートに表すような音楽は心地良い。
第2楽章と第3楽章は、詩情豊かな展開。特に第2楽章は瞑想的ともいえる雰囲気を湛えていて、深く豊かな響きが心に沁み込んでくる。
最終楽章は、ボヘミアの民族舞踊を思わせる躍動感があふれる展開である。そこには土着的と言っていい熱気が溢れている。生の喜び、生活の匂い、民衆のエネルギー感・・・そういったものが渾然一体となって大きなリズムを形作っていく。
指揮者のユーリ・テルミカーノフはロシア人。どちらの曲も彼の得意なレパートリーなのだろうと思わせる一体感のある演奏であった。
アンコールが終わると、観客は一斉にホールの外へ流れ出ていく。その列は「溜池山王駅」の方へ徐々に細くなりながら続いていった。涼しく心地よい空気であった。「来月ここに来る時にはもう少し蒸し暑くなっているだろうか・・・」そんなことを思いながら、その人の流れに身を任せた。