2013/5/11

2613:鉛筆削り  

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 手動式鉛筆削り器は鉛筆を削り穴に差し込み、削り刃の部分に押し付けて削る構造である。鉛筆をつかむクリップ部を引いて鉛筆をはさみ、ハンドルを手で回す。

 するとバネの力で、鉛筆は削り刃に押し付けられる。このとき片手で削り器自体が動かないように押さえる必要がある。だいたい左手で削り器を押さえ、右手でハンドルを回す。

 鉛筆がちょうど良い具合に削られると鉛筆と刃の抵抗が少なくなり自動的に空回りするようになる。そうなったら、クリップ部を引いてえんぴつを取り出す。

 削ったばかりの鉛筆はシャープでスムース、削りかすの香りがほのかにする。筆箱に削ったばかりの鉛筆を並べて入れると、実に気持が良いものである。

 今日は2ケ月に1回の割合で行っている整体の日であった。チューバホーンさんが経営されている杉並区の「PRO・FIT」にお邪魔した。施術の時間は90分。

 90分は、Mt.富士ヒルクライムの私の目標タイムである。整体を受けている90分は心地よくうとうとするくらいであるが、富士山をロードバイクで上る90分は苦しく険しい時間である・・・まあ、なにはともあれ、90分ほどするとすっかり体のバランスが整い、右腕はすっと上に上がり、張りのあった右の背筋がリラックスしているのである。

 今日は時間に余裕があったので、90分の施術後すっかり楽になった体で2階のリスニングルームに上がった。

 チューバホーンさんの使用機器は、アナログがROKSAN XERXES20、CDがラックス。プリアンプとパワーアンプはサウンドパーツ、そしてスピーカーはTANNOY LANCASTERである。

 まず聴かせていただいたのは、チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲。その流麗な音の流れに身を任せていた時、なぜかしら鉛筆削り器から漏れてくるあの独特の削りかずの香りがした。そして削ったばかりの鉛筆のイメージが頭に浮かんだ。

 実に整った円錐。削られたばかりの木の表面はスムースで芯の先端は美しくとがっている。その鉛筆で書く最初の一文字は心なしか丁寧な文字になる。

 LANCASTERは実に丁寧に音を削る。そして、HBの濃さで美しいバランスの文字を連ねる。それは音楽を心地よく解説し、聴く者に優しく語りかける。声高に大ぶりな身振りで表現することはない。それはスマートである。奥行き深い音場に、削り終わりに右手に感じる軽い回転感を伴いながら音が広がる。

 スピーカーが消えるのはAVALONやWILSON AUDIOの専売特許ではない。あの四角い古い意匠のLANCASTERも忍者のように消える。空気の美しい振動としての音楽は広く高い空間にふわっと漂う。

 ヴィヴァルディ、グリーグ、ドボルザーク、シベリウス、ブルックナー、マーラー・・・その音楽のいずれもが、削りたての鉛筆で白い画用紙の上にすらすらと描かれる素描画のように滑らかに展開する。

 鉛筆削り器は手動式のものが良い。電動式は楽であるが、音がうるさい。それに手に感じるあの徐々に削られていく鉛筆の感触がないことが致命的である。削り具合が光であらわされたとしても、そんな小細工は不要である。

 チューバホーンさんのリスニングルームには、手動式の鉛筆削り器で鉛筆を削り終え、鉛筆を抜く瞬間に感じるあの独特の嬉しさが、そこはかとなく漂っていた。



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