2013/5/11

2613:鉛筆削り  

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 手動式鉛筆削り器は鉛筆を削り穴に差し込み、削り刃の部分に押し付けて削る構造である。鉛筆をつかむクリップ部を引いて鉛筆をはさみ、ハンドルを手で回す。

 するとバネの力で、鉛筆は削り刃に押し付けられる。このとき片手で削り器自体が動かないように押さえる必要がある。だいたい左手で削り器を押さえ、右手でハンドルを回す。

 鉛筆がちょうど良い具合に削られると鉛筆と刃の抵抗が少なくなり自動的に空回りするようになる。そうなったら、クリップ部を引いてえんぴつを取り出す。

 削ったばかりの鉛筆はシャープでスムース、削りかすの香りがほのかにする。筆箱に削ったばかりの鉛筆を並べて入れると、実に気持が良いものである。

 今日は2ケ月に1回の割合で行っている整体の日であった。チューバホーンさんが経営されている杉並区の「PRO・FIT」にお邪魔した。施術の時間は90分。

 90分は、Mt.富士ヒルクライムの私の目標タイムである。整体を受けている90分は心地よくうとうとするくらいであるが、富士山をロードバイクで上る90分は苦しく険しい時間である・・・まあ、なにはともあれ、90分ほどするとすっかり体のバランスが整い、右腕はすっと上に上がり、張りのあった右の背筋がリラックスしているのである。

 今日は時間に余裕があったので、90分の施術後すっかり楽になった体で2階のリスニングルームに上がった。

 チューバホーンさんの使用機器は、アナログがROKSAN XERXES20、CDがラックス。プリアンプとパワーアンプはサウンドパーツ、そしてスピーカーはTANNOY LANCASTERである。

 まず聴かせていただいたのは、チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲。その流麗な音の流れに身を任せていた時、なぜかしら鉛筆削り器から漏れてくるあの独特の削りかずの香りがした。そして削ったばかりの鉛筆のイメージが頭に浮かんだ。

 実に整った円錐。削られたばかりの木の表面はスムースで芯の先端は美しくとがっている。その鉛筆で書く最初の一文字は心なしか丁寧な文字になる。

 LANCASTERは実に丁寧に音を削る。そして、HBの濃さで美しいバランスの文字を連ねる。それは音楽を心地よく解説し、聴く者に優しく語りかける。声高に大ぶりな身振りで表現することはない。それはスマートである。奥行き深い音場に、削り終わりに右手に感じる軽い回転感を伴いながら音が広がる。

 スピーカーが消えるのはAVALONやWILSON AUDIOの専売特許ではない。あの四角い古い意匠のLANCASTERも忍者のように消える。空気の美しい振動としての音楽は広く高い空間にふわっと漂う。

 ヴィヴァルディ、グリーグ、ドボルザーク、シベリウス、ブルックナー、マーラー・・・その音楽のいずれもが、削りたての鉛筆で白い画用紙の上にすらすらと描かれる素描画のように滑らかに展開する。

 鉛筆削り器は手動式のものが良い。電動式は楽であるが、音がうるさい。それに手に感じるあの徐々に削られていく鉛筆の感触がないことが致命的である。削り具合が光であらわされたとしても、そんな小細工は不要である。

 チューバホーンさんのリスニングルームには、手動式の鉛筆削り器で鉛筆を削り終え、鉛筆を抜く瞬間に感じるあの独特の嬉しさが、そこはかとなく漂っていた。

2013/5/10

2612:ジャガイモとベーコン  

 数日前からE350のエンジンをかけるとオンボードコンピューターには警告表示が出るようになった。「A0メンテナンスの期限がすぎています。」と表示されるのである。前回のメンテナンスから既に10,000km以上走ったようである。走行距離を示すメーターには「52,150」と表示されている。

 そこでディーラーに連絡を取って、今日の午前中、メンテナンスを受けるために車をディーラーに持ち込んだ。メンテナンス作業は明日までかかる予定とのことであったので、代車を用意してもらった。

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 代車は2世代前のEクラス(W210)である。車検証を見ると初年度登録は平成9年6月であった。16年前である。走行距離は10万kmを超えている。

 しかし、その乗り味はメルセデスらしいしっかり感を保持している。シートはやれていない。脚回りも腰が抜けていない。

 インテリアに関しては古き良き時代のメルセデスの特徴があちらこちらに残っている。古いと言えば古いのであるが、ノスタルジックな良さがある。

 全体として「なかなかやるな・・・」といった思いが自然と沸き起こってくる。ハンドリングを含め乗り味はまったりとしたものでけしてシャープではない。エンジンの吹き上がりももっさりとしている。しかし、独特のゆるぎないがっしり感があり、固めのシートに腰を落ち着けるとほっとする。長時間乗っても疲れないだろうと思わせる安心感がある。

 W210は、10年に渡り販売されたW124の後継として1995年に発売された。フロントマスクには楕円形の独立4灯式ヘッドライトが採用されて、大胆なデザインの変更が大きな波紋を呼んだ。

 その多くはネガティブなもので、古くからのメルセデスファンからは総スカンを食らう形となった。しかし、その後もこの独立4灯式ヘッドライトは採用され続け、次のW211ではより流麗な楕円形のデザインとなり、洗練度を増した。

 現行型であるW212にもその意匠は形を変えて引き継がれた。3代にわたってEクラスのデザインアイデンティティーであり続けたこの独立4灯式ヘッドライトであったが、残念ながら、今回のマイナーチェンジで廃止された。

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 現行型のオーナーである私としては、このデザインアイデンティティーは維持してほしかったのであるが、メルセデスの全ラインナップでのデザイン的な統一性を持たせるという方針が貫かれた形となった。

 しかし、その名残が全く残っていないわけではない。LEDライトにより縁取られるデイライトが独立4灯式ヘッドライトのような雰囲気を若干醸し出している。

 W210は、名車の誉れ高いW124に比べて、そのクオリティーが下がったと評価は低いが、なかなかどうしてその下地には確かにメルセデスの香りがしっかりと感じられた。その香りは香水のような優雅な香りではない。例えるなら、ジャガイモとベーコンをバターで炒めたような香りであろうか・・・

2013/5/9

2611:ベイエリア  

 やはり7試合は応えた。1試合の平均時間は30分ほどであろうか。すると3時間30分・・・全身に疲労感はまわりまわった。

 今日は東京税理士会のテニス大会であった。場所は有明テニスの森公園。天気は晴天。気温はこの時期としては相当高い。昼過ぎには25度を超えたはずである。汗が大量に流れた。

 まずは4ペアごとに予選をおこなう。総当たり戦を行い、1位から4位まで順位を決める。その順位ごとにトーナメントを行う。トーナメントに入ると負けると終わりである。

 予選の総当たり戦の結果は1勝2敗であった。この予選ブロックの4ペアは実力が拮抗していた。どれも大接戦。試合の流れ次第でどちらに転ぶか分からない展開でどれも面白い試合であった。しかし、勝負どころで流れをこちらに引き込むことができず、負け越してしまった。順位は3位。3位トーナメントへ進んだ。

 トーナメントは4回勝てば、優勝である。3位トーナメントなので、それほどレベルの高いペアはいないはず。1回戦、2回戦、準決勝は比較的楽な展開であった。しかし、決勝戦は実力が近いペアとあたった。

 前半はゲームを一つづつ奪いあった。3−3とタイの展開。次の第7ゲームはこちらのサービスゲーム。ジュースにもつれこんだが、どうにかキープした。

 これで4−3。次の相手のサービスゲームをブレークできれば、試合の流れはぐっとこちらに来るはず。キープされれば、もつれる展開が最後まで続く。このゲームが肝となるであろう・・・とぐっと集中力を高める。

 このゲームもジュースまでもつれた。どうにかこうにかこのゲームを奪った。これで5−3。次はこちらのサービスゲーム。サーバーは私である。状況は有利な展開。

 ささっとキープしたかったが、このゲームもジュースへ・・・2度ほどジュースを繰り返したが、相手のミスにも助けられて、ようやくマッチポイントを決めることができた。予選3試合で接戦慣れしたのか、この試合の流れはどうにか掴んだまま手放さなかった。

 7試合のうち4試合が接戦・・・体力を相当消耗した。全ての試合が終わる頃には、有明テニスの森公園に降り注ぐ陽光も少し弱まり、影が斜めに伸びる時間になっていた。周囲を見渡すとベイエリアに数多くそそりたつビルや高層マンションが夕陽を浴びてキラキラと光っていた。

 「このエリアは昔と比べて随分変わったな・・・大学生のころにここでテニスをしていた時には倉庫ばっかりだったのに・・・」時の流れの重さをふと感じた。

2013/5/8

2610:セレクター  

 プリアンプのQUAD22にはステレオのライン入力は2系統ある。「RADIO」と「TAPE」である。アナログとCDをそれぞれに振り分ければ、セレクタ―ボタンを押して、ソースを選択することができる。

 しかし、我が家のQUAD22のTAPE入力はずっと不調である。ノイズが乗るのである。「RADIO」入力は、今のところ不具合はない。そんな状況なので、ステレオ入力は実質意的には1系統しかない。

 ではアナログとCD、2系統ある入力をどう振り分けるのか・・・それは恐ろしく単純かつ原始的な手法である。RCAケーブルを繋ぎ換えるのである。CDを聴いて、次はアナログという時は、CDプレーヤーから伸びているRCAケーブルを抜いて、LP12の背面から這い出ているケーブルに差し替える。もちろん、その際QUAD22の電源スイッチはOFFにする。

 しかし、これは少々面倒である。ケーブル端子はQUAD22の背面に並んでいる。それを差し替えるには。まず姿勢が不自然になる。かがみこんで一旦抜いて、「ここかな・・・」と見当を付けて改めて差し入れなくてはならない。

 そして、何といってもスマートではない。かっこが悪い。「やはり修理に出すべきか・・・」そんなことを思っていた。

 それと、もうひとつQUAD22を使うにあたって従前より気になっていたことがあった。QUAD22の時代のソース側の出力はCDの時代よりもかなり低めの設定であった。なので、CDや現代のフォノイコライザーの出力をそのまま入れると、想定よりも出力が高いので歪みやすい・・・ということである。

 そのため古い時代のプリアンプを使う際には良質な抵抗を間に入れて入力を調整するという手法も有効である・・・と聞いたことがある。

 セレクター機能と入力の調整機能・・・そういったことを頭の中でぐるぐる回していた。ふと、とある考えが浮かんだ。

 「そうか・・・その手があったか・・・もしかして有効かも・・・」

 そう思いついて、インターネットをあちこち検索した。すると、とあるオーディオ機器が目に付いた。

 「これ、良いかも・・・少なくとも試してみる価値は充分あるような気がする・・・」

 サイズもとても小さい。そのデザインは「シンプル イズ ベスト」を体現している。見た目的にも美しい・・・これで良い影響がもたらされるなら・・・少し頬が緩んだ。

2013/5/7

2609:読書  

 ゴールデンウィークの最終日である6日には、テニスサークルの練習の予定が入っていた。午前9時から12時までの3時間、立川市にあるとあるテニスコートがとってあった。

 そのテニスコートへは車で30分ほどの距離である。6日は朝から晴れ渡っていた。気温も最高気温の予想は20度を超えるとのことで、テニスで汗を流すには最適な気候と思われた。

 しかし、朝目覚めてベッドから這い上がった時、体が重かった。前日のロングライドの疲労感がずっしりと体の中に残っていた。

 さすがに一晩寝ただけでは、ロングライドの疲労感はすっかりとは消えてはくれないようであった。

 強行突破も考えたが、体にあまりにも負担をかけ過ぎるのもどうかと思い直し、テニスサークルの練習はパスすることにした。
  
 「たまにはのんびりした休日を過ごすのもいいのであろう・・・」そんな風に思った。まずは愛犬の散歩から・・・多摩湖の周遊道路をゆっくりと歩く。

 その脇をジョギングする人やロードバイクが通り過ぎていく。小型犬である愛犬の散歩は普段20分ほど・・・しかし、この日は暖かい気候に誘われて普段よりも遠くまで歩いた。

 家に帰りついてみると結局1時間ほど歩いた。愛犬は家にたどり着くとすぐに水を要求した。専用の器に水を注ぐと、勢いよく飲み始めた。

 庭にあるウッドデッキには木製のテーブルと椅子が置かれている。時折新聞を読んだり、本を読んだりする。このウッドデッキを活用できる季節は限定されている。春か秋しかない。夏は暑く虫がうるさい。冬は寒い。

 犬の散歩を終えてから午前中の間、そのウッドデッキに出て本を読んだ。今話題の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」である。

 特に村上春樹のファンというわけではない。テレビや新聞でその発売日の狂騒ぶりが報道されていて、やはり興味を惹かれたのである。

 その緩やかに展開するストリーは、こんな午前中に読むのにはちょうど良い。晴れ渡っていて、暖かい。時折、庭の木々に蜂が飛んでくる。その羽音が渇いた質感の音を響かせている。まだあのうるさいくらいにひつこい蚊はいない。

 そんなゆったりとした時間を過ごしたおかげで、今日はどうにか体が軽くなった。そこで、やや遅めの夕食をとってから、固定式のローラー台で汗を流した。

 まだ、冷房はかけない。そのせいであろうか、凄い量の汗が流れ出てくる。実際にロードバイクで屋外を走るときには風を受ける。スピードが速くなれば、その受ける風も強くなる。なので、汗がだらだらと流れることはあまりない。

 しかし、ローラー台では、いくら漕いでも風は感じない。1時間ほどで、絞れるくらいにウェアは汗を含む。シャワーで汗を洗い流し、さっぱりする。

 9割ほど読み終えた「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の続きを読もうと、本を持って居間のソファに座った。

 しかし、5日のロングライドの疲れがまだ完全にとれたわけでない状態で汗を大量に流した。薄く残っていた古い雪の上に新たに雪が積もったように、疲労感はその嵩を増していた。しばらくすると、本の印字がうっすらとぼやけていった。

2013/5/6

2608:蒸気  

 結構な急勾配が続いた。脚を使いすぎないように注意しながら上る。サイコンの距離表示を時折確認しながら前半部を上り続けた。1kmを経過した。何名かのメンバーがペースアップ。どんどんその姿が小さくなる。

 2kmほど経過したであろうか。上級者はこのへんからグイッとギアを上げる。先行するメンバーに迫っていく。

 「3kmを経過するまでは、抑えていこう・・・」そう思っていたので、先行メンバーとの距離がどんどん開いていくが、ペースは維持した。

 後半に入って、斜度が緩み始めた。徐々にペースアップ。前半はスローぺースで上ったが、斜度が厳しく脚の疲労度は芯にまで達している感じであった。

 ギアを上げ、スピードを徐々に上げていった。先行メンバーの背中はなかなか見えてこない。確か6名のメンバーが前にいるはず。一人でもその背中が見えてくると、モチベーションが上がる。

 「少し、慎重になりすぎたか・・・後半斜度が緩むのであれば、前半にもう少しペースを上げておくべきであった・・・」少々焦った。

 後半は斜度がそれほど厳しくないので、先行メンバーもペースが落ちない。残り1kmあたりのところでようやく一人のメンバーの背中が見えた。

 その背中を視野に入れ続け、クランクを回し続けた。少しづつその距離は縮んでいくが、まだ追いつけない。最後の最後でスパートをかけた。ダンシングでもがいた。寸前でかわした。苦しいけれど、こういったバトルが楽しい。

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 刈場坂峠の頂上からは遥かかなたの街の景色がミニチュアのように小さく見える。ここで、シートを敷いて昼食休憩をとった。チームリーダーの奥さんお手製のちらしずしもふるまわれた。

 しばしのまったりタイムを過ごした後、グリーンラインへ向かった。下っては上りまた下る。さらに上って下る。目まぐるしい感じでアップダウンが続く。

 東吾野駅で小休憩の後は、後半の断続バトルエリアへ突入した。東峠・山王峠・笹仁田峠・・・メインの峠を上り終えたら、後は野となれ山となれである。残り全ての峠でバトルに参戦・・・喘ぎに喘いだ。

 ゼイゼイと苦しい呼吸音は「機関車」の蒸気音のように峠道に響いた。全ての峠を上って下った。体とOEBEA ONIXの周囲には目には見えないが白い蒸気が沸き上がっていた。「シュ〜シュ〜」と軽い音を立てていた。オーバーヒートしたようであった。

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2013/5/5

2607:大蛇  

 今日はいつもよりも長いコースであった。バイクルプラザR.T.25周年記念ランであったからである。

 小沢峠・山伏峠・正丸峠・刈場坂峠・グリーンライン・東峠・山王峠・笹仁田峠・・・という結構ハードなコース設定である。メインの峠は約6kmの上りを有する刈場坂峠である。

 走る距離は130kmほど・・・峠がなければ何と言うことはない距離ではあるが、これだけ上ったり下ったりするので、後半は体力勝負となる。

 記念ランであったのでいつものロングよりも参加者が多かった。総勢13名。チームリーダーの奥さんが運転するサポートカーも付いた。

 まずはいつものように旧青梅街道と岩蔵街道を通って飯能方面へ向かった。天気は快晴。気温は暖かい。風もそれほどなし。絶好と言っていいロングライド日和。

 思わず「1年中5月であれば良いのに・・・」とあり得ないことを思ってしまう。夏のうだるような暑さも、冬の凍える寒さもなければ何と快適なことであろう。まあ、そうなると5月の穏やかな気候のありがたみも感じなくなってしまうのかもしれない。

 13台のロードバイクが連なるとまるで「大蛇」のようである。道の曲線にそってうねるように進んでいく。チームカラーはエメラルドグリーンである。みな同じ色のチームウェアを着ている。なので、エメラルドグリーンの「大蛇」が進んでいるようかのように見える。

 しかし、車を運転している人にとっては13台のロードバイクが連なった「大蛇」は、「大いなる邪魔もの」という意味での「大邪」でしかないであろう。

 朝は旧青梅街道も岩蔵街道も車の通行量はいつもよりも少なめであった。今日は走る距離が長いことといつもよりも参加者が多いこともあって、ややスローペースで進んだ。

 コンビニ休憩をした後、最初の峠である「小沢峠」を目指した。メインの峠の前はいつもしゃかりきには上らない。脚を残しておく必要があるからである。ゆったりとしたペースで集団で上った。

 小休止の後、行き慣れた「山伏峠」へ向かった。いつもは、ここで熱戦が繰り広げられるのであるが、今日は皆イーブンペースで上った。とても穏やかな「山伏峠」の上りである。今日はここが主戦場ではない。

 山伏峠を下り、途中正丸峠に向かう上りに入る。正丸峠で脚を少し休め、下っていった。そして「刈場坂峠」の上り口に到着。ここまでそれなりの距離を走ってきた。ゆっくりとしたペースではあったが峠を幾つか既に越えてきた。疲労感はそれなりにあった。

 「刈場坂峠」の上りは約6km。前半は斜度がきつい。後半からはやや緩めに変わる。前半で脚を使い果たすと後半のスピードが伸びない。そこで、3kmまでは抑えめに上り、後半に入って斜度が緩んでからペースアップする作戦で臨んだ。

 上り口から見える「刈場坂峠」はいきなり急勾配である。「前半は確かにきつそうだな・・・後半にどれだけペースアップできるかが勝負のポイントか・・・」そう思いながらサイクルシューズのクリートをビンディングペダルに差し込んだ。カシっと乾いた音がした。いよいよ主戦場へ足を踏み入れた。

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2013/5/4

2606:水平回転  

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 宮本輝の小説を読んでいたらゴルフに関する記述がたまたまあった。登場人物の会話としてゴルフ上達のコツのようなものが語られていたのである。

 ゴルフスイングはまず腰の回転である。腰を水平に回転させることが肝要である。腰の回転ラインが歪んでいると、ナイスショットは難しい。そして、グリップは決して強く握らずゆるゆるな感じにしておく。手首もしっかりと脱力する。ワッグルを何度かして手首から力を抜く。両脇は締めておく。この四つのポイントを守ればスコアアップは近い。

 そんなことが書かれていた。「腰の回転か・・・」そう思いながら、腰の回転をチェックした。水平に回転させることは今まであまり意識していなかった。

 今日は今年5回目のラウンドであった。場所は鶴ヶ島G.C.である。少々トリッキーなコース。OBゾーンが近く、グリーンは速い。あまり好きなコースではない。

 ラウンド前「今日は腰の回転をチェックポイントにしよう・・・」そう思ってスタートした。腰を右に回してテイクバック、そして腰を切り返してダウンスウィングを開始する。一連のスイングのリズムを腰が誘導するようにした。

 するとショットはいつもよりも良い感じでボールを捉える事が出来た。「腰の回転を意識するとスイングリズムが良くなるな・・・」そんなことを思いながら、ホールを消化していった。

 しかし、ここはグリーンが硬く速い。特に下りのパットになると、恐ろしく速く、場所によっては止めようがないほどである。アプローチとパットで苦戦した。

 前半は「45」で終えた。私としてはまずまずといったとこころ。後半の頑張り次第で90切りの可能性を残すスコアであった。

 このゴルフ場はセルフが前提である。価格を安く設定して客を呼び、これでもかといった組数を入れる。なので、昼休みが長い。1時間40分と普通のゴルフ場の倍の時間である。

 食事は40分程度で食べ終わる。残りはラウンジにあるソファでお昼寝タイムである。いつものように乗用カートには極力乗らずランニングしていたので、体は疲れていた。ゆっくりと睡眠領域に降りて行った。

 午後のスタートホール。ティーショットがひっかかった。ボールは大きく左へ曲がり、隣のホールへ飛んでいった。そこから打ち戻すのであるが、キャディーさんがいないのでグリーンの方向が分からない。「まあ、このへんかな・・・」と思って打ったボールは、方向と距離が悪かったようで、OBゾーンに飛び込んでしまった。これが痛かった。結局このホールはダブルパーの「8」と大叩き。

 いきなり大きくつまづいた。しばらくはボギーでしのぐホールが続いた。しかし、距離のないミドルホール。今度はティーショットが右方向に抜けた。またまたOBゾーンにボールは転がりこんでしまった。ここはトリプルボギー。後半は二発のOBで撃沈。2発の魚雷を受けた駆逐艦のように船首を上にして海に沈んでいった。後半は「50」であった。

 残念ながらまたまた90台のスコアとなってしまった。しかし、少々収穫もあった。腰の回転をスイングの先導役として意識するとスイングリズムが良くなるのであった。「次回に繋げよう・・・」そう思ってゴルフバッグを車に積み込んだ。

2013/5/3

2605:緑の光  

 A氏邸のリスニングルームは半地下になっている。天井と壁は漆喰で仕上げられている。部屋の両コーナーには、モニター・シルバーが内蔵されたTANNOY GRFが密やかに佇んでいる。

 スピーカーの背後に広がる白い漆喰の壁には、TANNOY GRFから音楽が流れ出すと、様々な映像が浮かびあがったり消えたりする。その映像は色彩が豊かであったり、「多崎つくる」がそうであったように色彩を持たなかったりする。

 淡い色合いが徐々に変化することもあれば、映像が大きくクローズアップされることもある。音楽が変幻自在であるのと同じくらいに、その流れ去る映像も変化に富んでいる。

 今日は夕方から夜にかけて、A氏邸のリスニングルームにお邪魔した。先日頼んでいたエテルナ・レーベルのレコードが海外から入ったので、そのレコード受け取りがてら、最近A氏がお気に入りの数枚のレコードを聴かせてもらった。

 スザンネ・ラウテンバッハの演奏するべートーベン クロイツェル・ソナタを聴かせてもらっている時であった・・・凛とした小さな花が白い壁に浮かびあがった。花弁の色合いはほのかな暖かみを含んだ白。可憐な花である。高原に咲いている。風に揺れ、稀に通る旅人の目を和ませている。

 決してその存在を声高に主張することはない。むしろ抑えている。均整の取れた美しい形、高貴ではあるがかすかな香り。どこかしら近づきがたい。手で触れてはいけない・・・と感じさせる雰囲気がある。もちろん、摘んではいけない・・・そんな白い花である。

 ロシア人の女性バイオリニスト・・・ロサ・ファイン。彼女の弾くシューベルト 幻想曲がかかった。すると、場面は魅惑の園に変容する。風は柔らかい。高原の凛とした空気ではなく、もっと人肌に近い暖かみと湿気を感じる。曲想に沿って、その風はゆったりと流れ、うねる。

 第二楽章に入り、白い壁には、女性の背中が映し出される。そのラインはチェロのように左右均等になだらかである。左右の手の指を使ってその輪郭をゆっくりとなぞる。暖かい。それぞれの手の指先にその体温を感じる。

 すっかりと日が暮れ、天井近くにある小さな窓の外は闇に包まれた。ソプラノのテレサ・シュティッヒ=ランダルの精細な声が響きわった時、暗いはずの漆喰の壁には、緑の淡い光が浮かび上がってきた。

 カール・リステンパルト指揮 ザール室内管弦楽団の演奏に支えられ、彼女の伸びやかな声は天から降り注ぐようである。

 曲はモーツァルト ミサ曲。高く上っていった声の響きは、教会の天井に当たり四方に分散して降りてくる。降下する際に淡い光を発するかのようである。オーロラのような緑の光がはらはらと降ってくる。降り注ぐ緑の光は私の肩や頭に積もる。積もっては消え。また積もる。

 高貴な響きのなかにも、人肌の暖かさや優しさをも感じさせる声の質感である。相反するものを背反するままに備えている。そんな微妙なバランス感覚が素晴らしい。

 A氏邸の音の入り口はROKSAN XERXES10。素晴らしいデザインのレコードプレーである。簡潔で無駄の一切ない造形。声高にその存在を主張することはない。そして媚びることもない。今日出会った3人の女性のなかでは、最もスザンネ・ラウテンバッハに近い存在のように感じられた。

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2013/5/2

2604:奈美喜庵  

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 西府町2丁目の交差点を右折して甲州街道に入った。国立インターに向かう交差点の少し手前に「奈美喜庵」はある。

 駐車場はほぼ満車状態であった。お昼の時間帯をずらして1時半に待ち合わせたのであるが、やはり人気が高いようであった。

 彼女は少し前に着いていたようで、私の車を認めると、自分の車のドアを開けて、手を振った。私も車の中からフロントガラス越しに手を振った。

 モダンな建物である。中も和風モダンというべき洗練された内装。つい最近建てられたようで新しい。

 テーブル席が満席であったので、奥にある掘りごたつのようになったお座敷席に案内された。店内は広い。

 「ここ、この前テレビで見たの・・・『ぶらり途中下車の旅』・・・それで来てみたくなって・・・」

 彼女からメールが来たのは先週のこと・・・府中に美味しそうなお蕎麦屋さんがあるから行きましょう・・・ということになった。

 私の事務所からは車で15分ほどの距離である。私は初めて来る店である。まずはそばがきと野菜のてんぷらの盛り合わせを頼んだ。ビールも頼みたいところであるが、二人とも車であるのでノンアルコールビールを頼んだ。

 そばがきがまず来た。土佐醤油につけて食べる。二人とも顔を見合わせた。素朴な味わいであるが良い味である。

 そばがきが美味しい店はまず間違いがない・・・なので、初めての店に行くとそばがきを最初に頼むことが多い。

 続いて野菜のてんぷら・・・こちらもからっと上がっていて合格点である。いよいよ蕎麦を頼むことに・・・数多くのメニューがある。かなり変わり種のメニューもある。しかし、オーソドックスな蕎麦を頼んだ。

 ちょうどそばがきと野菜のてんぷらを食べ終える頃に蕎麦が来た。見た目はとてもオーソドックスな蕎麦である。奇をてらうことのない、丁寧な仕事ぶりが窺える。

 つけ汁はかなり濃いめ。どっぷりつけるのではなく、ちょっとつけて食する。穏やかな味わいである。蕎麦の軽やかな香りと味わいが心地よい。

 こだわりぬいた職人芸的な蕎麦とは違うかもしれないが、何と言うかほっとする安心感がある。ここなら家族連れで気軽に来れる。「寧々ちゃん」も満足げであった。

 「ここ、また来ましょう・・・」彼女はここの蕎麦の味わいのように優しく微笑んだ。



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