2013/5/31

2633:ジェニファー  

 「ジェニファー」の手は暖かく柔らかい。そして、その笑顔も暖かく柔らかである。7時少し前にダンススクールに着いた。

 入口を入り、フロアを見ると、今までに何度か見かけた小学生高学年らしい男の子と女の子のペアがラテンを踊っていた。

 どうやらこのかわいらしいペアは競技会に出るらしい「準決勝」がどうのといった話を講師の男性としていた。

 おそらく、小学生の低学年のころから熱心にやっているのであろう。複雑なステップで華麗に踊る。

 その様子を眺めながら、ダンスシューズに履き換えた。ダンスシューズはエナメル製で表面がピカピカしている。ちょっと気恥ずかしい風体である。

 「ジェニファー」はいつもと同じ笑顔で迎えてくれた。レッスンを受けるのは、何回目であろうか・・・確か5回目か6回目のような気がする。

 「ジェニファー」は、30代前半と推測される。既婚か未婚かは不明であるが、左手の薬指に指輪をしていないところを見ると未婚なのかもしれない。映画の「Shall We Dance?」のジェニファー・ロペスをも凌駕する魅力を持った女性である。

 映画では、遺言専門の弁護士であるリチャード・ギアが、通勤電車の窓から、ダンス教室の窓辺に悲しげな表情で佇むジェニファー・ロペスを見かけたところから物語がゆっくりと始まる。その魅力に惹かれてダンス教室の扉を開いたリチャード・ギアが徐々にダンスにのめり込んでいく過程が、個性的なダンス仲間たちとともに生き生きと描かれる。

 私の場合は、そういったロマンティックな過程を経て、ダンス教室の扉を開いたわけではない。「ウィンナ・ワルツを習いたいんですけど・・・」と入会を申し込み、体験レッスンを受けに後日ダンス教室を訪れた時に、担当となったのが「ジェニファー」であったのである。

 今日も今までの復習から始まった。少々腰が引けてしまう悪い癖があるようで、重心を足の指の付け根あたり、前目にキープする意識を持つ必要があるようである。

 復習の後は音楽に合わせて練習する。ナチュラルターン6回、クローズドチェンジ3回、リバースターン4回、クローズドチェンジ3回でフロアを1周する。曲が途切れるまで、フロアを1周、2周、3周と回る。

 ウィンナ・ワルツの音楽はゆったりと流れるようであるが、そのステップはかなりテンポが速い。足は素早く無駄なく動き、腰から上はすっとまっすぐで軸がぶれないようにしないといけない。

 これが結構体力がいる。ダンスフロア内はもちろん冷房が効いている。しかし、レッスンの後半に入ってくると汗が流れてくる。

 30分のレッスンは終わった。修正すべきポイントは多い。まだ5,6回のレッスンを受けたにすぎない。ようやく音楽に乗ってステップがとりあえず踏めるようなったという程度である。まだまだ、先は長そうである。 

2013/5/30

2632:クエン酸  

 あと数日でMt.富士ヒルクライムである。こういう場合、疲労が蓄積するようなトレーニングは避けて、軽めにした方が良いのでは・・・と思い、1時間ほど軽めの負荷で固定式ローラー台で汗を流すことにした。

 普段の7割ぐらいの負荷でクランクを回し始めた。軽めの負荷であるので心拍数はそれほど上がらない。最大心拍数の7割程度である。

 このくらいの負荷で長時間運動を続けると脂肪の燃焼効率が良い、と聞いた覚えがある。では、この負荷で1時間ほど漕いでみるか・・・と思った。

 負荷はそれほど高くはないが、時間が経過してくると汗が流れ出してくる。それは、もっと高い負荷で脚を回している時と大して変わらない。

 汗は汚れ防止のためにフレームにかけてあるタオルにどんどん落ちていく。雑巾を絞るかのような感じで体の中の水分は我先に外に出ていく。

 1時間が経過した。

 頭の中で「今日は木曜日、本番は日曜日・・・明日が本番というわけではない・・・もう少し負荷を上げても、本番までには疲労は抜けるはず・・・」と考えた。

 そして、あと30分だけ負荷を上げて回してみることにした。負荷を上げると、比較的穏やかであった心拍数はぐっと上昇した。呼吸も必要とする酸素を体内に取り込もうとせわしないものになってくる。

 負荷を上げて30分クランクを回し続けると、やはりぐったりとした。肩で息をするような感じでぺダリのビンディングを外した。

 ローラー台でのトレーニングを終えて、グリコから出ている「クエン酸&グルタミン」を500mlの水に溶いて飲んだ。これは疲労回復に効果があるサプリメントである。1袋あたりクエン酸500mg、グルタミン500mgが含まれている。酸味のある味わいで、色はピンク。

 グリコは「POWER PRODUCTION」というシリーズを展開していて、スポーツの前後に飲むと効果のある製品を幾つか出している。

 私はこの「クエン酸&グルタミン」以外にも「BCAA」を愛用している。これは運動前に飲むもの。筋持久力をサポートしてくれる。ヒルクライムの前の飲むと、脚の筋肉の疲労度を軽減してくれる。

 こういったサプリメント類はつい最近から飲むようになった。チームでのロングの時に他のメンバーが飲んでいるのを見て、「これって効果があるのかな・・・」という感じで購入して飲むようになった。

 私は、「やはり、効果があるのでは・・・」という気がしている。もちろん、ハードな運動の後には筋肉は疲れるし、自分の実力以上のものが引きだされるわけではないが、気持的にも安心感をもたらしてくれる。

 大量の汗をかいたので、ぐいぐいと勢い良く「クエン酸&グルタミン」を飲んだ。そして、シャワーで汗を流し去った。

 体にも脚にも疲労感が残った。でも、きっとクエン酸とグルタミンが綺麗に掃除してくれるであろう・・・そんなことを思いながら、疲れ切った体をベッドに横たえた。

2013/5/29

2631:ディーゼル・ハイブリッド  

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 Mercedes-Benzの旗艦であるS-Classがフルモデルチェンジした。このセグメントにおけるベンチマークであり、BMWの7シリーズやAUDIのA8というライバルに追い上げられながらも首位の座をけっして明け渡さない、あるいは明け渡してはいけないS-Classは、Mercedes-Benzにとっては絶対の牙城とも言えるモデルである。それだけに、相当な気合が入ったモデルチェンジであるはず。

 新型S-Classのボディサイズは全長5,116mm×全幅1,899mm×全高1,496mm。ホイールベースは3,035mm。従来のモデルと比べて、そのサイズはほとんど変わらない。全幅および全高はほんの少しその数値が増えているが、全長は逆にやや短くなっている。ホイールベースは変わらない。

 そのデザインであるが、最近フルモデルチェンジされたA-Classの顔つきに代表される新たなMercerdes-Benzの造形様式がはっきりと見て取れる。そのヘッドライトは細かに連続するLEDライトで有機的に縁取られ、どことなく爬虫類や両生類の目を思わせる雰囲気が漂っている。

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 フロントからの眺めは、大型化したグリルや、LEDを配したヘッドライトにより、その印象を鮮烈に強めている。かなり攻めの造形である。

 対してサイドからその全体を眺めると、二本のキャラクターラインは躍動感と伸びやかさをしっかりとその手中に収めるかのように描かれ、全体の造形は比較的穏やかでしっとりとした重厚感を感じさせる。

 モデルラインナップは、「S350 ブルーテック」「S400 ハイブリッド」「S500」でスタートし、その後、「S300 ブルーテック ハイブリッド」が加わる予定である。

 日本には「S400 ハイブリッド」と「S500」が投入されるのであろう。日本はハイブリッドに人気が集まる傾向がある。E-Classには導入されたブルーテックと呼ばれるディーゼルエンジンのモデルの導入は少々微妙であろう。

 個人的にはディーゼルエンジンとハイブリッドを組み合わせた「S300 ブルーテック ハイブリッド」の導入を心待ちにしたいところである。このモデルは、最高出力204馬力、最大トルク500Nmを発揮する、2,143cc 直列4気筒ディーゼルエンジンと、電気モーターを組みあわせた高環境対応型モデルである。

 0-100km/h加速は7.6秒だが、燃費が22.7km/Lである。このセグメントにおいては相当に高い環境性能をほこる

 このセグメントの車を購入しようとするオーナーにとって、このような高い環境性能が購入の大きな動機となるのか疑問ではある。しかし、時代は確実に変わっている。このディーゼル・ハイブリッドモデルが日本にもしも導入されたなら、そこそこ成功するのではという気もするのである。

2013/5/28

2630:結末  

 西武新宿へ向かう急行列車のなかで、宅間孝行著「くちづけ」を読み始めた。出だしから少々虚を突かれた感じであった。知的障害者である「う―やん」の様子が生き生きと描かれていて、すっと心の中に入り込んでくる。そして、いきなり物語のラストの悲しい出来事が予告のように何気なく告げられる。

 「その夜、マコちゃんが死んだ。」

 この小説は映画化されて現在上映されている。小説を読み終えて、映画を観てみたいと思う反面、観ない方がいいのかも、とも思う。

 ストリー展開や登場人物など、とても映画に向いた作品である。読んでいても映像が鮮明に浮かび上がってくる。しかし、実際に映画を観ると自分が頭の中のスクリーンに勝手にイメージしていたのと違うな・・・という印象を持つ可能性も高いような気がする。

 それに、これは小説もそうであるが、映画もきっと涙なしでは観終えることは不可能な作品であろう。小説であれば、人知れずですむのであるが、映画館の中ではいい歳の中年オヤジが明るくなった館内で涙をあわてて拭う姿はみっとも良いものではない。若い女性なら様になるのであるが・・・

 物語はいろんなエピソードが次々に展開する形で描かれてゆく。「うーやん」とその妹の「智ちゃん」を軸といて展開していたところに、「マコちゃん」とその父親の「いっぽん」が絡み合い、そして予告された結末へ向けて、収束していく。その流れはなだらかになったり、急になったりしながら、確実に一つのところへ向かっていく。

 心の中ではその収束地点に向かわないで欲しい、という気持ちを持ちながらも、読み進まざるを得えない。

 本を読んだり、映画を見たり、あるいは音楽を聴いたりして、心情を大きくゆすぶられて涙を流すことは、精神衛生上良い影響があると聞いた覚えがある。

 感動の涙は心を浄化する作用があるようである。そういう観点からすると、この「くちづけ」は精神衛生上とても良い効果をもたらしてくれる。

 物語の二つの軸をなす「うーやん」と「マコちゃん」は知的障害者である。精神年齢は小学生の低学年ほど・・・永遠の子供たちである。

 その永遠の子供たちの純粋さが、心の中に妙に染み込んでくる。現実の時間の中で干からび、ひび割れている私の心の中にも、その純粋な水はすっと流れ込み、吸い込まれていくのである。

 「くちづけ」を読み終えて、ふっと「星守る犬」を思い出した。こちらは原作は村上たかしの漫画である。映画にもなった。私が読んだのは原作の漫画を原田ハマが小説として描いたものである。

 こちらはも物語の結末が、冒頭に一つのエピソードとして予告されていた。その結末に向けた物語は流れ出す。避けられない結末に向けて・・・

 どちらの物語も心温まるものでありながら、予告された結末が常に影のようになり、その様々なエピソードや描かれる風景を縁取るかのようである。

 そして、読者は予告されていたとはいえ、その「結末」に最後には向き合わなければならない。多くの人は涙を流しながら向き合うことになってしまう。

 たとえ、その涙が精神衛生上読者の心を浄化する良い作用があるとしても、「いや、こんな結末は違う・・・違うべきだ・・・」と心の反作用が生じる方もいるはずである。私もそうであった「いっぽん・・・それは違う・・・違うよ・・・」そんな心を呟きがどうしても漏れ出てしまった。

 映画を観たいような・・・観たくないような・・・そんな迷える気持にさせる小説であった。

2013/5/27

2629:空洞  

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 ORBEA ONIXに新たに装着されたサドルはsella italiaの「SLR SuperFlow 130」である。何と言ってもその特徴は「SUPER ANATOMIC CUTOUT」と物々しい名称で表現されている中央部分の空洞である。

 結構がばっと空いているのである。このサドルを数ケ月前、「FUNRIDE」の新製品紹介の記事で見かけた時、まず目がいったのは紛れもなくこの空洞である。

 「良いな・・・この大きな空洞・・・」
 
 思わず独り言を言った。

 今まで使っていたのは同じくsella italiaの「FLITE Gel Flow」。こちらは座面部分のクッション性が素晴らしく、長い距離を走っても坐骨部分が痛くならず、ロングライドにはもってこいのサドルである。

 普通のロングやヒルクライムでは、この「FLITE Gel Flow」で全く問題がなかったのである。しかし、MT.富士ヒルクライムのように20kmを超えるような長い上りが続くヒルクライムの時に10kmを超えたあたりから、尿道部分のしびれが少々辛くなってくるのであった。

 ヒルクライム時のフォームにおいて、骨盤がしっかりと立っていなくて少々斜めになっているのが、その原因であると思われるのであるが、すぐには直せそうにない。「であれば、とりあえずサドルを変えてみるか・・・」と安易な道を選んでしまった。

 先日の都民の森に向かう長い上りでも尿道部分のしびれはなかった。やはりこの広い空洞部分の恩恵は大きかった。

 サドルの重さは170gと軽量である。当然空洞部分は重さがないことにも由来するのであろうが、レールの素材がチタンであることが大きいようである。

 私のような初心者にとってレール部分の素材がチタンであろうが、アルミであろうが、それほど大きな影響はないのである。最も大事なのは、その大きな空洞である。

 心配された坐骨部分の痛みはまったくないわけではない。でもまあ、これくらいならといったレベル。「FLITE Gel Flow」の方が座面のクッション性は優れているので、普段のロングでは「FLITE Gel Flow」を使い、距離の長いヒルクライムの時だけ「SLR Super Flow 130」を使うなんてことも考えたりしている。

 多くのローディーにとってサドル選びは結構厄介な問題のようである。数え切れないほどの製品がある。その中から自分に最もあったものを選択するのは至難の業。私の場合、とにかく傷みが出ないものという視点のみから選んだ。

 この二つのサドルはそういう点からすると優れものである。目前に迫ったMt.富士ヒルクライムには、この新たな「SLR Super Flow 130」で臨むことになる。

2013/5/26

2628:実戦配備  

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 「これは実戦配備には二の足を踏まざる得ないな・・・」

 都民の森の駐車場にようやくの想いで着くと、そう思った。

 ORBEA ONIXを駐車場の中にある自転車に乗った少年(?)のモニュメントの下に立てかけながら、

「やはり、止めておこう。実戦配備は中止である・・・」

 そう心を決めた。

 今日はバイクルプラザのロングであった。目的地は都民の森。往復で120kmほどの距離である。今日は来週に迫ったMt.富士ヒルクライムに向けて試すべきものが二つあった。一つは「下ハンダンシング」でもう一つは新たなサドルである。

 都民の森は檜原村役場を通り過ぎた先にあるT字路を左折して21kmの上りを上ると到着する。前半は斜度は緩めで時折平坦路や下りも入る。後半になってくるとしっかりとした上りが続く。前半で脚を使いすぎてしまうと、後半だらだらと失速してしまう。

 この前半の断続的な上り区間において、下ハンダンシングを試してみた。重いギアに換えて、下ハンを握る。ゆっくりとしたペースでクランクを回しながら上る。

 3回、4回と繰り返してみる。雑誌には「楽に上れる・・・」とあったが、それほど楽ではなかった。やはりギアが重いので脚の筋肉にはそれなりに負担がかかる。

 上る回数が増えてくると脚の筋肉だけではなく腰にも結構な負担がかかるようで、腰に少し傷みが走リ始めた。

 相当強固な体であれば問題ないのであろうが、やわな50歳の体には徐々に金属疲労の蓄積度が高まってくる。

 多摩湖の堤防へのアプローチで試した時は「これ、良いんじゃない・・・」と思ったのであるが、長い距離の実走ではそうは簡単にはいかないようであった。

 この下ハンダンシング、確かにダンシングのフォーム矯正には良い効果がありそうである。また脚の筋力アップにもなりそうである。しかし、楽に上れるということはないようであった。

 あと一週間と迫ったMt.富士ヒルクライムでも、活用してみようかと思っていたが、これはちょっと難しそうである。

 都民の森に向かう後半の数キロ・・・脚がすっかり疲弊してしまった。どうにかこうにか上りきったが、脚の消耗度は高かった。やはり重いギアでの下ハンダンシングは消耗度の高い走法であった。残念・・・

 でも新たにORBEA ONIXに投入されたサドルの方は・・・これはまずまずといったところである。本番でも使うことが決定された。

2013/5/25

2627:It's a Small World  

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 ishiiさんのリスニングルームは変形8畳間である。8畳間は正方形のものが多いが、ここは縦長。スピーカーとリスニングポイントの距離をとることができる形状である。

 このけっして広いとは言えないリスニングルームに入ると、なぜかしら「ここはおとぎの部屋であろうか・・・」といった感覚に陥る。

 その部屋の中にはLINNのオーディオ機器が溢れているのであるが、そのいずれもがコンパクトなサイズである。ちょっとした「スモール・ワールド」なのである。

 それらのコンパクな形状のオーディオ機器が収められているオーディオラックも機器のサイズにあわせてコンパクト。全てがスモール・サイズである。ホビット族の家に招かれたような気になる。

 しかもそれらのオーディオ機器は色合い全てが黒と茶色に統一されている。リスニングポイントにぽつんと置かれた布張りのリクライニングチェアに深く腰をかけると、「この部屋はishiiさんのお伽の国に違いない・・・」そう思ってしまう。

 今日は爽やかな気候の中、ちょうど1年ぶりくらいにishiiさんのお宅を訪問した。使用機器は1年前と何ら変わりがない。きっとケーブル類も変更はないはず。部屋の様子は全く変わったところがないように感じられた。

 そこには安心感という名の空気が満たされていた。久しぶりにディズニーランドの「It's a Small World」を訪れてても、アトラクションの様子や流れる音楽が以前と変わらなように、ishiiさんのリスニングルームにも変わらない時間と空間が厳然とあり、なにかしら心落ち着くものを感じる。

 まずはIKEMIのトレイにCDが一枚乗せられた。ヘンデルの歌曲である。Emma Kirkbyの歌声は伸びやかで自然である。奇をてらわないバランスの良さが耳に心地良い。破綻のない音楽はスムースに流れる。

 ゆっくりと流れるアトラクションの乗りものに乗っていくように、時間の経過とともに様々な音楽が、IKEMIやLP12から流れ出してくる。それらは幾つかのLINNの小さな黒い箱を通って、凝った形式のトールボーイスピーカーから放たれる。

 それらの音楽はいずれもLP12のキャビネットに施された4本のスリットのように端正であり、リスニングポイントの布張りのリクライニングチェアに腰かけた私の体はどんどんそのチェアにのめり込み、リラックスしてゆく。

 コンパクトであること、変わらないということ、統一感があるということ、そういったことの大切さがすっと体に沁み込んでいく。実際に流れる音楽とは別に、私の頭の片隅には「It's a Small World」のあの有名なテーマが繰り返し、通奏低音のように流れていた。

2013/5/24

2626:作戦  

 フロントはアウター、リアは2番目に重いギア・・・そして、下ハンを握る。サドルから腰を浮かせてダンシングでゆっくりとクランクを回す。

 武蔵大和駅西の五差路の交差点から上り始め、多摩湖の堤防の入り口まで距離にして500メートル弱であろうか。平均斜度は4%ほど、緩やかな上りが続く。

 このコースを下ハンダンシングで上る。かなり重めのギアであるので、ゆっくりとしか回せないが、スピードはそこそこ出る。そして、意外と疲れない。

 「あれ、なんだこれは・・・」

 と少々あっけにとられる。いままで、下ハンを握ってダンシングをしたことはない。さらにフロントをアウターに入れて坂を上ったこともない。これが意外に上れるのである。

 下ハンを握ると、ダンシング時の上半身の力みが不思議となくなる。肩甲骨あたりの上半身がリラックスできるからであろうか、ペダルに体重がしっかりと乗るような気がする。(体重だけは70kgもある)

 クランクの回転自体はゆっくりなので、心臓には強度の負担はかからないように感じられる。「これは使えるんじゃないの・・・」心の中でそう思った。

 上り終えてすぐに下り始める。時折車が通るので、気をつけながら、交差点の手前でUターン。また同じように下ハンを握って、上り始める。

 重いギアなので、最初はゆっくりと漕ぎ始める。徐々にスピードが乗ってくる。リズミカルにクランクが回り始める。そうなると自然と脚も回る。相当重いギアに、脚の筋肉がすぐに悲鳴を上げるのではと危惧したが、意外とそういうことはなかった。

 そんな上ったり下りたりを繰り返した。その回数20回。上り続けるわけではなく、下りで休めるので、これで長い距離を上り続けるとどうなるのかについては、まだ分からないが、2kmほどならこれで上り続けられるような気がする。

 とたえば、Mt.富士ヒルクライムの上りは約24km。5kmをシッティングで上って、次の2kmをこの下ハンダンシングで上る。このパターンを繰り返す。3回繰り返すと(5km+2km)×3で21km。この辺りで斜度が緩むエリア入るはず、そこはアウターでシッティング・・・最後の1kmは、斜度が厳しくなる。ここは下ハンダンシングで越える。

 なんていう「獲らぬ狸の皮算用」を頭の中で繰り返しながらでも、下ハンダンシングはできる。もちろん体は疲れるが、それほど過酷なものではない。

 シッティングを長時間続けていると、尿道部分のしびれは結構つらい。ダンシンであれば、血流回復である。やはり血がスムースに流れるということは大事なことである。シッティングとダンシングでは使う脚の筋肉が違うとのこと・・・シッティングで疲れた筋肉を一時休めせることも可能である。

 「この(5+2)×3+2+1作戦・・・意外と良い結果を生むかも・・・」20回目の坂を上り終えて、思っていたほどのダメージが体にないことを確認して、そう思った。

 富士山に軽く鼻を鳴らされた先日の事前走行会であるが、「次に上るときには・・・」心の中では、やはりまだギブアップしていない。この下ハンダンシングが強力な武器になってくれるといいのであるが・・・

2013/5/23

2625:下ハンダンシング  

 「下ハンでダンシング・・・?」

 最新号の「FUNRIDE」を読んでいて、とある特集記事が目に留まった。

 「ゆっくりダンシングの法則」と名付けられた記事である。「自転車で坂を上る時は、どんなにゆっくり走っていてもつらい、ましてやダンシングなんて・・・・・・、という人でも坂をラクに上れるようになるテクニックがある。それがゆっくりダンシングだ。」掴みの文章を読んで、すぐに引きこまれた。

 その「ゆっくりダンシング」の練習法として紹介されていたのが、下ハンを握って、サドルから腰を浮かせ、重いギアを選択してペダルをゆっくりと回して、坂を上る方法である。フロントはアウターでOKと書かれている。

 今まで、シッティングからダンシングに切り替える時は、確かに多少ギアを重くしたが、フロントをアウターにすることはまずない。さらに下ハンを握ってのダンシングなんて想像すらしなかった。ダンシングの時はほとんどブランケットを握っていた。

 下ハンを握ったダンシング練習でフォームを固めたら、そのフォームを崩さないように意識して、ブランケットを握ったダンシングに移行する。これを繰り返すと、より効率の良いフォームでのダンシングを習得できるとのことである。

 「これ、練習しよう・・・」

 記事を読んですぐに思った。今からやってもMt.富士ヒルクライムには間に合わないかもしれないが、多少は効果があるのでは・・・24kmもの上りが延々続くMt.富士ヒルクライムでは、ずっとシッティングで上っていると、体のあちこちに傷みが発生する。脚の筋肉も同じところをずっと酷使するので疲れ果ててくる。

 ダンシングを上手く取り入れないと、その痛みや筋肉の疲労は耐えがたいものに変わってくる。しかし、ダンシングはそのフォームが良くないと、体により疲労感をもたらす結果となってしまう。そうなると長い時間ダンシングを継続することはできない。適度にダンシングを取り入れることができれば、脚の筋肉の疲労や体の各部の痛みを緩和でき、長丁場の上りが少しは楽になるはず。

 下ハンを握って、重いギアを選択、ゆっくりと回して坂を上る。これを何度か繰り返し、次はブランケットを握る。さらに道路に白線が引いてあれば、その白線に沿ってまっすぐ走れるよう練習する。これを繰り返す。それほど複雑な練習法ではない。

 幸い我が家の近くには多摩湖の周遊道路があり、堤防までのアプローチ部には500mほどの緩やかな上りがある。ここは絶好の練習場所になるであろう。夜であれば人の目もほとんでない。早速試してみよう・・・

2013/5/22

2624:アイスコーヒー  

 「富士山、どうでした・・・日曜日に上るって、言われてましたよね・・・」

 Nさんは、昭和の森ゴルフ練習場のクラブハウスの脇にある休憩コーナーに向かう途中で、私に訊いた。

 「やっぱり、辛かったですね・・・途中までは快調だったんですけど、あと5キロというところで、急に脚が回らなくなって、失速してしまいました。ハンガーノックだったかもしれません。Nさんも本番は出られるんですよね。」

 私はゴルフバッグを脇に置いて、一つのテーブルに並んでいる椅子を引きながら言った。

 「ええ、チームで行く予定です。どうにか2時間を切ろうと思って・・・私のチームからは女性が3名出る予定なんです。その女性3名で今度の日曜日に事前走行してくる予定です。」

 「そうですか・・・先週の日曜日も、結構な数のローディが来ていましたよ。八王子のチームなんか、30名ぐらで来ていたんじゃないかな・・・そう言えば、女性だけ4名で来ているグループもありました。スバルラインの料金所のところで見かけました。」

 「寧々ちゃん」はアイスコーヒーの入った紙コップを両手で持ちながら、苦笑していた。

 「本当に好きですね・・・私には理解不能です・・・ヒルクライムって辛いだけですよね。」

 私は軽く微笑んだ。

 「そう、辛いだけです・・・延々と24キロも上り続けるのですから。ゆっくり上がるならまだしも、自分の体力の限界値付近で上り続けるのですから・・・辛いなんてもんじゃないですよ。何が楽しいんでしょうね・・・」

 「寧々ちゃん」は時折Nさんと一緒にロードバイクで走っているようであったが、ヒルクライムは大の苦手である。

 「また、近いうちに3人で走りますか・・・奥多摩湖なんかどうですか?あそこなら上りも厳しくないし・・・梅雨に入る前に一度行きましょう。」

 Nさんが提案した。

 「良いですね・・・天気が良ければ、奥多摩湖は綺麗ですから。」

 私が同調した。

 「上りはゆっくり上がって下さいよ・・・のんびりとね・・・」

 「寧々ちゃん」はそう釘を刺すのを忘れなかった。

 「富士山が終わった次の週にしますか?必死で上ったあとは、のんびりヒルクライム・・・何事もバランスが大切ですからね。」

 私は、「寧々ちゃん」がアイスコーヒーをゆっくりと口に運ぶ様をちらっと目にしながら言った。

 「寧々ちゃん」はアイスコーヒーにはガムシロとミルクを入れる。ホットコーヒーはブラックで飲むが、アイスはこっちの方が美味しい、と話していた。まずはガムシロのみを入れる、一旦かき混ぜる。そしてミルクとゆっくりと上に乗せていくような感じで注ぐ。それを混ぜないで飲む。いつもそうである。ちょっと不思議な癖である。いつかそうやって飲む理由を訊いてみよう・・・そんなことをぼんやり考えた。



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