2013/4/11

2583:ホテル  

 郊外型の大型喫茶店の駐車場にはVW POLOとArfa Romeo Mitoが仲良く並んでいた。どちらも色は黒である。彼女はリモコンキーの小さなボタンを押した。すると、Mitoのハザートランプが2回ウィンクした。ピッピッと音が軽くして、ドアロックが解除された。

 私がMitoの運転席に座った。彼女はその隣に。彼女からキーを受け取りエンジンをかけた。Mitoはその小柄な体に似合わないような図太い音を発した。サイドブレーキを解除して、アクセルを軽く踏むと、Mitoはするすると進み出した。VW POLOをその駐車場に残したまま、私たちはMitoに乗ってホテルへ向かった。

 4月としては少し肌寒かった。雨の心配はないようであったが、空には所々灰色の雲がかかっていて、太陽の光を弱めていた。

 ホテルにはすぐに着いた。平日の午後3時半・・・そのホテルの駐車場は3分の1ほど埋まっていた。車を降りて、入口を入った。入口を入るとすぐに部屋番号と部屋の写真が飾られた大きなパネルがある。明りが付いているところが空いている部屋である。休憩料金と宿泊料金も部屋ごとに表示されている。半分以上の部屋が空いている状態であった。

 空いている部屋のうち、内装の色合いが明るめの部屋を選んで、部屋ごとに並んでいるボタンを押した。すると、その部屋の番号を記した紙がするすると下のところから出てくる。その紙を取ってエレベーターでその部屋がある階まで上がる。

 部屋に入った。清潔に清掃されている。大きなベッドがあり、有線放送によるBGMが小さめの音量でかかっている。二人掛けのソファとテーブル、薄型テレビ、クローゼットに小型の冷蔵庫、そういったものが、効率的に配置されていている。

 電気ポットもあり、お茶や珈琲も飲めるようになっている。インスタントのコーヒーを彼女が手早く入れる。私は浴室に行き、浴槽にお湯を入れる。

 浴室の手前には洗面台があり、大きな鏡が壁に置かれている。ふと自分の姿と対面する。もう若くはない。くたびれた中年の男がそこには映し出される。自分のその姿に一瞬足を止める。

 彼女も若いとは言えない。彼女は1968年6月の生まれである。もうすぐ45歳になる。その年齢の割には体のプロポーションは保ってはいるが、若い女性のそれとは当然異なっている。

 男性も女性も年齢とともにくたびれてくるもの。ホルモンの分泌は減っていくので、性欲も減退していく。しかし、性愛による快楽への欲求は、青白い炎のように執拗に灯され続けるようである。そしてそこから得られる快楽の質感もそれほど減退しないように感じられる。

 コーヒーを飲み終えると、二人して歯を磨く、洗面台の大きな鏡には二人の姿が・・・彼女とは同じゴルフスクールに通っている。知り合ってからもうどれくらいであろうか・・・確か4年以上の年月が経過したはずである。

 その間にはいろんなことがあった。彼女は数年の間軽い欝病の症状に苦しめられた。しかし、今はその症状も治まり落ち着いている。

 こういう場所に二人で来るようになってからは、まだそれほどの月日は経っていない。鏡の中で彼女と目が合った。彼女は微笑んだ。私も微笑んだ。空いている左手を彼女の左肩に置いた。彼女も空いている左手でその私の手に触れた。その薬指には銀色のリングが妖しく光っていた。



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