2013/2/28

2541:C3  

 肉汁うどんが運ばれてきた。テーブルに置かれたそのうどんを見て、彼女は微笑んだ。

 「この色合い良いですね・・・アイボリー・・・見ているだけで美味しいと分かる色合いです。」

 ここのうどんはそれほど太くはない。多少のばらつきがあるのが手作り感があってかえっていい印象を受ける。艶やかに鈍く光るその色合いは、丁寧に造られたことをあらわしているかのようである。

 「日本家屋の土壁って、見ているだけでなんとなく心が静まるようなところがあるけど、そんな感じでしょうか・・・この真っ白ではない微妙な色合いが一種の鎮静効果をもたらすのでしょうか・・・」

 私は思いつくままに言った。

 薬味のネギ、ほうれん草をいれ、ごまをすって肉汁の上にかけた。そして、うどんを肉汁に付けいただく。熟成した味わいである。肉汁は出汁がきいていて、甘く濃いめの味付け。どんどん進む。

 「ここのうどんもちょっとゆるキャラ入ってますか・・・結構子供でも大丈夫って感じですよね・・・コシはしっかりあるんですけど堅すぎない。肉汁は甘めの味わいで子供も喜びそうです。」

 そう私が話すと彼女は、

 「向こうに小さな男の子を連れた女性がいるじゃないですか・・・なんとなくわかる気がします。子供を連れてきても大丈夫な雰囲気が店からもうどんからもします。」

 と、応じた。彼女は時折お座敷席にいる小さな男の子に目を細めていた。

 私は結構食べるのが早い。私が食べ終えた時には、彼女はまだ半分ほどを食べ終えたところであった。中年の男性二人組の客は食べ終えて出て行った。店内には私たちと子供連れの女性客だけになった。時計の針は1時半を指していた。

 「もし、Mitoを買い替えるなら、やっぱりゆるキャラ系がいいんじゃないですか・・・私のお薦めのゆるキャラ系は、断然シトロエン C3です。」

 私は割り箸を合わせてテーブルの上に置きながら言った。

 「シトロエンって、変わっているんですよね・・・デザインが・・・」
 
 彼女はうどんを一すすりしてから言った。

 「独自というか、時々ぶっ飛んでいてついていけない感がありますが、C3は微妙についていけます。フロントウィンドウの造形なんか結構ゆるキャラですよね。あと全体のラインも・・・いまどきまだ4速ATというのも、にしこくんに手がないみたいに、間が抜けていて・・・」

 そう言ってスマートフォンの画像を彼女に見せた。

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 「かわいい・・・この水色も良いですね・・・気分が緩くなります・・・」

 彼女は静かに微笑んだ。右斜めから見る彼女の笑顔は、やはり似ている、大塚寧々に・・・

2013/2/27

2540:にしこくん  

 「よしふじ」の店内は、いたって普通の内装である。テーブルや椅子もごく普通のうどん店のそれである。こだわりというか、肩に力の入った特別感は皆無である。そういったものを探そうとしても、見当たらない。

 「定番は肉汁うどんでしょうね・・・実は今日で3回目なんですが、それ以外のメニューを頼んだことがないので、よく分からないです・・・」

 その私の言葉を聞くと「寧々ちゃん」は微笑んだ。

 「じゃ、定番で・・・」彼女は見ていたメニューを元の位置に戻しながらそう言った。

 「肉汁うどん」を二つ頼んだ。ここは結構茹で時間がかかる。15分ほどは待たされる。うどんの茹で上がりを待っている間、彼女は最近車の調子がおかしいことを話し始めた。

 「もしかしたらサスペンションかもしれないです・・・カーブのときなどに金属が擦れるような音がフロアから出るようになって・・・サスペンションだと修理代高そう・・・」

 「それはサスペンションアームに不具合が出ているのかもしれませんね・・・金属疲労で亀裂が入っていると取り替えになりますね・・・」

 私はちょっと脅かした。

 「もう何年乗っているんですか?そろそろ買い換え時かも・・・」

 「もうすぐまる6年かな・・・結構気に入っているんで、もう少し乗りたいと思っているんだけど・・・これからあちこちに痛みが出始めることを考えると、そろそろかも・・・」

 「それはそうと、Mitoってちょっとゆるキャラ入っていませんか?特に正面から見ると、そう思うんです。」

 「えっ、ゆるキャラですか・・・そう言われると、あの顔立ちって憎めないというか、どことなく、かわいいというか、まあ、私としては『かわかっこいい』と思っているんですけど・・・多少ゆるキャラ系ですかね・・・」

 「絶対にゆるキャラ系ですよ・・・最近『ご当地ゆるキャラ』がはやっているじゃないですか・・・『くまもん』とか・・・ちょっとそんなゆるキャラのイメージとMitoってダブルんですよね・・・」

 私は飲み干したコップに水を足した。彼女のコップには半分以上残っていた。そのコップにも水を足した。

 「去年は『くまもん』が当たりましたが、『ご当地ゆるキャラ』のなかで、最近来ているのが『にしこくん』と『ふなっしー』なんですよ・・・知ってますか?」

 
 「なんですか、それ・・・」

 「『にしこくん』は西国分寺の、『ふなっしー』は船橋のゆるキャラなんですが、どちらも非公認なんです・・・つまり、個人が勝手に作ったキャラクターなんですが、まあ、一度目にすると、忘れられないと言うか、笑ってしまうと言うか・・・本当面白いですよ・・・」

 「じゃあ、今度ネットで検索しようかな・・・でも、船橋はまあ地名だけど、西国分寺って地名じゃなく駅名ですよね・・・おかしいくないですか・・・」

 「非公認だから、その辺はまあアバウトでいいんじゃないですか・・・そうそう、スマートフォンに『にしこくん』の画像がありますよ、見てみますか?」

 そう言ってスマートフォンの画像を彼女に見せた。

 「これって絶対変!!でも、癖になるのが分かるような気がする・・・」

 彼女は笑った。ゆるキャラに負けず劣らず、「よしふじ」の店内には緩めの空気が流れていた。時間はとてもゆっくりと流れているような気がした。

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2013/2/26

2539:のぼり  

 「場所分かるかな・・・NAVIがあるから、迷うことはないと思うけど、彼女ちょっと方向音痴だからな・・・」

 天気は比較的良かった。風もなく、穏やかな昼である。VW POLOのハンドルを握りながら東京街道を走っていた。VW POLOは車の流れに軽く乗って、スムースなエンジン音を鼻歌のように流していた。

 「手打ちうどん」と書かれたのぼりが緩やかな風に揺れているのが見えた。それを目印にして、左折した。脇道に入るとすぐにもう一度左折、駐車場に入る。

 ここの駐車場は気をつけないといけない。入ってすぐの4台分ぐらいは、来客用の駐車場ではなく、月極めで近所の人に貸している駐車場なのである。

 「○○様駐車場 駐車禁止」と小さく書かれた札が貼ってあるのであるが、小さいうえ薄汚れていてよく見えない。間違えて停めてしまうお客さんが結構いるはず。

 店用の駐車場はもっと店の傍にある。でも、そちらが埋まっていると、ついついこの手前の駐車場も店用のものと勘違いしてしまいがちである。

 「あっ・・・あそこに停めている・・・」

 駐車場スペースに車を進めて、すぐに彼女のMitoを認めた。その停めている場所は入ってすぐの月極め駐車場エリアの一つであった。

 店の入り口の傍の駐車場にPOLOを停めて、彼女の車の傍に向かった。彼女も車を降りようとしていた。

 「そこ、店の駐車場じゃないみたいですよ・・・月極めで貸しているところです。」

 そう言うと、

 「えっ・・・そうなんですか・・・勘違いしちゃった。すぐ動かさなきゃ・・・」

 「この建物の右の脇にも駐車スペースがあります。ここに停めればいいでしょう・・・」

 彼女は再びMitoに乗り込んで、エンジンをかけた。乾いた中低音が響いた。良い音である。軽々しくない。エンジンの存在感がしっかりと感じられるサウンドを響かせて、Mitoは移動した。

 時間は1時。店内はそれほど混んでいなかった。子供ずれのお母さんとスーツ姿の中年男性の二人組がいるだけであった。

 入り口そばの4人掛けのテーブルに腰かけた。テーブルの上に置かれていたメニューを彼女に見せながら、

 「何にします・・・」

 と、訊いた。

 「お薦めは?」
 
 彼女は、訊き返した。

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2013/2/25

2538:先行エントリー  

 仕事で夜遅くなってから家に帰り着いたなら、テレビの前のソファに座ってしまうといけない。子供たちは大概、録画していたバラエティー番組を観ている。一緒になって観てしまうと、お尻から根が生えてしまう。ついつい、ぐったりとしてソファに深く腰をかける。その腰の角度はどんどんリクライニング状態に寝てくる。そして、いつの間にかソファの上に横になってしまう。

 そうなることが目に見えていたので、今日は家に帰りついてコートとスーツを脱いだら、すぐにTシャツと短パンに着替えた。

 そして、1階のピアノが置いてある部屋に直行した。この部屋にはもうオーディオ機器は全く姿を消した。ピアノが置いてあり。カイ・クリステンセンのデザインしたソファとコーヒーテーブルがあり、同じ1960年代にデンマークで製作されたライディングデスク、そしてつい最近この部屋に到着したサイドボードが置かれている。

 その到着したばかりのサイドボードからは、家具の補修用に使われるオイルの香りが漂っている。

 そして空いた空間にはORBEA ONIXが固定式のローラー台に装着されている。サイクルシューズに履き替え、サドルにまたがった。
 
 「時間は短くても頻度高く、練習しないと・・・できれば週に3回ぐらい室内で練習しよう・・・」そう思っていたのである。

 来月の22日は、Mt.富士ヒルクライムの先行エントリー受付である。夜の8時からの受付となった今年は、競争も例年に増して厳しくなるはず。

 昨年は初めてのエントリーでやり方がよく分からず、失敗してしまった。今年は、昨年の轍を踏まないよう、FUNRIDEの年間購読を申し込んで先行予約権を取得し、2回のエントリーの機会を得た。

 2月はもうすぐ終わろうとしている。徐々にシーズン開幕である。エントリーできれば6月2日の大会まであと3ケ月・・・週に1回のロングライドだけでなく、室内練習で少し体を鍛えないと、90分の目標達成は相当難しいであろう。

 時間は45分だけであるが、結構汗をかいた。仕事の疲れに、練習の疲れが重なり、シャワーを浴びた後は、すぐさまベッドへ・・・そして、深い夢の中へ・・・どんな夢を観たのであろうか・・・時折脚はクランクを回すような仕草をした。

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2013/2/24

2537:喘ぎ  

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 玉川上水に沿って走り、天王橋で左折した。多摩川大橋を通って多摩川を渡り、さらに大和田橋を通って浅川を渡った。浅川を渡りきったところから、浅川沿いの遊歩道に入り、浅川に沿って北上した。

 この遊歩道はのどかである。犬を連れて散歩している人、小さな子供を連れている人、ジョギングしている人、ウォーキングしている老夫婦・・・その合間をすり抜けて走る。あまりスピードは出せないが、さんさんと降り注ぐ陽光のもと、6台のロードバイクは乾いた音をたて続けた。

 今日のロングライドの目的地は相模湖。大垂水峠を越える。峠を越えて相模湖に着いたらそこで休憩した後また同じ道を戻ってくる。復路の上りも往路同様の距離と斜度である。

 先週までは激坂シリーズであった。和田峠・顔振峠・子ノ権現と続いた。今日はそのシリーズは一旦中断。比較的おだやかな大垂水峠を越える。

 浅川の遊歩道が尽きるまで行くと甲州街道に入る。高尾山の傍を通って峠へ向かう。「上りはどのくらいの距離だったであろうか・・・4km?5Km?まあ、それくらいかな・・・」今一つどのくらいの距離であったか思い出せなかった。

 序盤はゆったりと上がる。徐々に心拍数も上がってくる。170を超えない程度の強度でコントロール。後半に入るに従ってペースも上がってくる。そのペースに合わせてクランクを回す。心拍数は180ほどに・・・

 「あとどれくらいかな・・・残り500mぐらいになったら『喘ぎ』の領域に入るか・・・」そんな風に思っていた。緩やかな左カーブを曲がった。するとすぐ先が頂上であった。

 「あれ・・・しまった。喘ぎ忘れてしまった・・・」と思った。それなりの強度で上ってはいたが、最後の一喘ぎをすることなく頂上に着いた。

 「復路では忘れないようにしよう・・・」そう思いながら下りはじめた。そして下りはじめて3kmほどのところにある落とし物をした。帰りに拾うためである。そっと「喘ぎ」を道に置いた。

 峠を越えると急に風が強くなった。下っている最中強い向かい風であった。7kmほど下ったであろうか・・・相模湖に着いた。

 湖面は風に波立っていた。その細かい波は太陽の光をきらきらと反射させていた。相模湖は暖かく穏やかなイメージが強かったが、この時期に風が吹くとやはり寒かった。

 休憩は短めの時間で切り上げ、復路の峠越えに向かった。序盤はゆったりと隊列を組んで進む。残り3kmぐらいからペースが上がるはずと見込んでいたが、残り4kmほどのところから先頭を引いていたチームリーダーがグイッとペースを上げた。

 ペダルに力を込めた。その後ろについた。斜度が緩いのでスピードが出る。しばらくついていけたが、「このペースでは終盤もたない・・・」と思い、少し緩めた。チームリーダーの背中はどんどん小さくなった。
 
 かなり速いペースで残り1kmほどのところまで来た。体が重い。乳酸が脚の機能を乱し始めた。チームリーダーの背中はかろうじて視界に入っている。

 だれそうになる。すると追い上げてきたチームメイトの気配がすぐ後ろに迫った。そのメンバーに押し上げられるように、ペースを上げた。

 喘ぎ喘ぎ、頂上に到着した。「喘ぎ」の落し物はしっかりと拾った。やはり「喘ぎ」は必要である。それを忘れると、何かしら物足りない。かなり特異な体質に変わりつつあるようである・・・

2013/2/23

2536:675  

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 LOOKのニューモデル「675」の写真が、「FUNRIDE」の最新号の表紙を飾っていた。その写真を一目見て、「675」の大胆で前衛的なデザインに強く惹き付けられた。

 目新しいというか、他ではお目にかかったことのない造形が、「675」のトップチューブからステムへのラインに見られたからである。

 そのラインは一直線につながっている。その部分以外のディテールにもLOOKらしい繊細で大胆な造形がなされているのであるが、この部分のインパクトが強く、どうしてもそこばかりに目が行ってしまう。

 確かにかっこいい良いというか斬新というか、デザイン性に優れている・・・と言わざる得ない。しかし、「性能面が犠牲になっていないのであろうか・・・」という気にもなる。

 雑誌の記事には「見た目から乗り味にも一癖ありそうに思われるが、実は意外なほど乗りやすい。フレームは695と同じモノブロック構造。ヘッドやシートチューブ、BB周辺にはインナーラグを採用し、ソリッド感のあるレーシングマシーンらしい乗り味を実現している。フレーム単体重量は1100g。軽量バイク特有の腰高感は皆無で非常にコントローラブルだ。」と書かれている。性能面でも優れた資質を有しているようである。

 赤・白・黒のカラーリングも精悍な印象で、カーボン・ディープリムのホイールを履くと猫科の猛獣を思わせるような迫力に溢れている。

 さらに、LOOKとしては比較的手頃な価格設定であり、その斬新なデザインと相まって「これは売れそう・・・」と思ってしまった。「675」をこれからの春・夏シーズンに乗っていたら、周囲からの注目度は相当に高いであろう。

 今私が乗っているORBEA ONIXは2011年モデル。乗り始めてもうすぐ丸2年を迎える。買い換える気はさらさらないのであるが、この手の雑誌を眺めていると、無意識のうちに物欲を刺激される。

 「来年になったらフレームをLOOKに替えようかな・・・その前にホイールをもっと高性能のものに替えるのが先か・・・」などなど、ついつい雑誌の煌びやかな写真や特集記事に振り回されてしまうのである。 

2013/2/22

2535:黒子  

 冴え冴えとしているかな・・・「冴え冴え」を辞書で引くと、「澄んではっきりしているさま。また、さわやかなさま。冬の寒さが透き通って身にしみるように感じるさま。」と出ていた。

 「冴えない」のは困りものである。それなら「冴え冴えしている」方が良い。しかし、「冴え冴え」が冬の季語であるように、ちょっと温度感低めであろうか・・・Solidsteelのラックにオーディオ機器を入れ換えてみて、その音の質感にそんな風に感じた。

 ということで、再び深夜の時間帯であるにも関わらず、軽い肉体労働に従事した。クワドラスパイアの黒い三段ラックを再び取り出してきて、Solidsteelのラックの横に設えた。

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 見た目的にはSolidsteelの圧勝である。しかし、真黒なクワドラスパイアはその色通り黒子に徹するような低姿勢が好印象。構造もSolidsteelに比べると極めてシンプル・・・かなり心許ない構造である。

 Solidsteelの棚板にすまし顔で納まっていたCD12、Quad22、QuadUをクワドラスパイアの棚板に移した。

 そして、グリーグ「ペールギュント」を聴いた。「冴え冴え」感は後退・・・でも決して「冴えない」わけでもない。表情は穏やかなものに・・・

 時折オーディオ機器は見た目通りの音がすると思う時がある。この二つのラックもなんだか見た目に引っ張られるのか、そういう思いがした。

 クワドラスパイアはその存在感を主張しない「黒子」であり、Solidsteelは、そのモダンでしっかりとした構造体で、その内部に収納されたオーディオ機器の音に影響を及ぼす。

 「もうワンセット、クワドラスパイアを購入しようか・・・」そんな風に思った。でも、クワドラスパイアは、Solidsteelの横にあるとその見た目はやはり冴えない・・・そうとも感じた。

2013/2/21

2534:SOLIDSTEEL  

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 自宅に帰り着いたのは10時過ぎであった。少々体は疲れていたが、今日は自宅でやるべきことがあった。それを行うため、スーツから部屋着に着替えるとすぐに1階のピアノが置いてある部屋に入った。

 そこにはほとんど空室状態となってしまったSOLIDSTEELのラックが置いてある。それを分解して、2階の寝室へ持って上がった。重量があるラックではないので、その作業はそれほど大変ではない。

 2階には現在クワドラスパイアの3段ラックが置いてある。そのなかには、CD12、Quad22、QuadUがコンパクトに納まっている。現状ではもうワンセット同じ構成のクワドラスパイアの3段ラックを購入しないとLP12は収納できない。

 SOLIDSTEELのラックであれば全ての機器を収納可能である。そこでクワドラスパイアのラックをSOLIDSTEELに切り替えて、その音の変化具合を確かめてみたかったのでである。

 その一連の作業はそれほどの時間を要さなかった。そういう作業をするには少々遅い時間ではあったが、効率良く作業を済ませた。

 SOLIDSTEELのラックはその見た目がすっきりとしていてモダンな意匠である。休眠状態であったLP12もすっきりと飾ることができた。

 クワドラスパイアのラックに比べて、その音の質感の変化はどんなものであろうか・・・CD12のトレイに聴き慣れた数枚のCDを入れてPLAYボタンを押した。

 高域と低域のバランスで言うと、高域寄りに音のバランスが移動する感じがする。空間的な広がり感はよりでる。全体的に都会的というかすっきりとした質感。

 クワドラスパイアの方がどちらかと言うとまったりめ。やはりラックによって相当な質感の差があることが分かる。まったり系を取るならもうワンセット必要・・・すっきり系を取るなら出費はなし・・・まあ、しばらく出費なしで行くか・・・でも、まったりもしたい・・・徐々に体の疲れが出てきた。風呂に入って寝ることにした。

2013/2/20

2533:Spider  

 私は蜘蛛の巣にかかったのであろうか。粘着性の糸はもがけばもがくほど手足の自由を奪うようである。その振動を感知したのか、巣の中央部分でじっとしていた蜘蛛は、そろりそろりとこちらに近づいてくる。

 その無機質に光る数多くの眼からは表情を読み取ることはできない。ただ、単調に自然の光を反射しているのみである。

 そして、例のごとくその巨大な腹にはオレンジ色の不可解な模様が描かれている。その模様をじっと見ているとその模様は四つのアルファベットであり「QUAD」と書かれていることが分かるのである。

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 昨日見つけたとある「Quad ESL57」の写真を契機にして、インターネットで画像検索をしていると、「Spider ESL」の新種を発見した。

 パネルの色が白い。これはかなり珍しい種類である。一般に動物などで白い子供が生まれるとその神秘性から貴重な存在としてあがめられることがあるが、この「Spider ESL」もその白さゆえ貴重な存在なのかもしれない。

 単に劣性遺伝により色素が足りなかっただけかもしれない。しかし、白という色は神聖なものを連想させるのであろうか・・・人間の世界では手厚く扱われることが多い。

 特に日本人は白が好きである。国旗の背景色が白である。車の色も一番人気は白である。その清潔な色合いは、見ているだけで、心を清めてくれる効果があるのであろうか・・・

 さてこの新種の「Spider ESL」であるが、パネルは白。そして木部はオークである。オークの渋い質感が白のパネルを縁取ることにより、軽くなりすぎないちょうど良いバランスを保っている。

 この白い「Spider ESL」がペアで静かにそのやわらかな表情を湛え、その前には60年代にデンマークで活躍したデザイナーがデザインしたソファーやアームチェアが置かれている。

 ソファーの前のコーヒーテーブルにはコーヒーではなくてミルクティーが入ったカップが無造作に置かれ、そのソファには初老の男が膝を組んで座っている。

 流れている音楽はヴェルディーのオペラである。音量は控えめ。空間に広がる音楽は聴く者を威圧することはなく、空間に漂い溶けていく。

 蜘蛛はその毒針を私の右胸に刺したようである。蜘蛛が吐き出す糸に絡まれていく中でわずかに残った意識に浮かぶのは、そんな穏やかな風景である。

2013/2/19

2532:蜘蛛  

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 Quad ESLのオリジナル機は1957年に発売されたので、その後継機として発売された「Quad ESL63」と区別するために「Quad ESL57」と呼ばれたりもする。

 その「Quad ESL57」のちょっと変わった写真を見つけた。見るからに日本ではないと思われる部屋にその「Quad ESL57」は綺麗にセッティングされている。

 部屋の周囲は大きなガラス窓で囲われていて、いわゆるサンルームであろうか・・・決して広くはないが雰囲気良くまとめられている。きっとイギリスの郊外にある住宅の一室なのであろう。

 スピーカーの背後におかれたグレーのオーディオラックには真空管式のアンプが鎮座していて、その他のオーディオ機器を引き連れている風情である。

 まあ、そんなことはどうでもいいのである。目を引くのは「Quad ESL57」の脚である。妙にすらっとした美脚なのである。

 すっくと立って颯爽としている。ノーマルの脚とは完全に違う。おそらく20cm以上は背の高さが違うのではないか。

 「あれ・・・この脚ってオプションなのかな・・・あるいはESLマニアが自分で自作した脚であろうか・・・」と思ってしまった。

 「それともESLマニアが知り合いの木工屋さんに頼んだのであろうか・・・腕の立つ木工屋さんに頼めば、これくらいの仕事はきちっとしてくれそうな気もする・・・」

 「これ、結構かっこいいな・・・」最初はその見慣れない姿に違和感も覚えたが、しばらく見ていると、センス良くまとまっているように見えてくる。

 「でもこれだと、ソファに座ってのリスニングの場合、ちょっと背が高すぎはしないであろうか・・・」という気にもなる。

 「まあ、座面の位置が高めの椅子であればちょうど良いのかも・・・このすらりとしたQuad ESL57を入手するルートは日本でもあるのであろうか・・・」

 興味をそそられる存在である。確定申告作業の合間にパソコンの画面で、この「Quad ESL57」の写真をしげしげと眺めていた。

 「なんだか蜘蛛に見えてきた・・・この脚は蜘蛛の脚のようである。『spider's legsタイプのESL』とでも呼ぶべきか・・・」

 「欲しいな・・・これ・・・」この時期特有の悪い癖が頭をもたげかけた。「まあ、入手ルートがないから、諦めよう・・・」×ボタンをクリックしてパソコンの画面を業容用のソフトウェアの画面に切り替えた。



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