2012/6/21

2289:封印  

 台風4号による猛烈な雨風を避けるために、昭和の森ゴルフ練習場の休憩コーナーで過ごした時間は40分ほどであった。

 その間、先日Nさんを含め3名でロードバイクで出かけた時のことや、最近のゴルフのラウンドの話などで時間をやり過ごしていた。

 そして、少しそういった話題が途切れた時に、気になっていたことがふと私の口をついて出た。
 
 「御主人は、その後どうですか・・・変わりましたか・・・例の女性とのことはきれいさっぱりと清算したのでしょうか・・・」

 彼女はちょっと困ったように視線を窓の外の雨の様子に移してから、

 「良く分からないのです・・・変わったと言えば変わったような・・・変わらないと言えば変わらないような・・・関係は清算したと言っていますが・・・本当かどうかは確かめようがなくて・・・」

 「そうですか・・・」

 私も彼女の視線につられて、外の様子を窺うように、窓の方へ視線を移動した。風は相変わらず強いようであるが、雨は先ほどよりも弱くなってきていた。窓に打ちつけるような雨の襲来はなくなってきていた。

 「雨が少し弱くなってきたようですね・・・風はまだ強いようですが・・・これならもうそろそろ大丈夫かもしれませんね・・・」

 私はそう言って、腕時計を確認した。時計の針はもうすぐ9時を指そうとしていた。台風が運んできたと思われる、生暖かい空気が二人の周囲を覆っていた。 
 
 「封印を解きませんか?」

 私が独り言のようにそうつぶやくと、彼女は私の方に視線を移した。その視線にはじっとりとしたなにかしら形容しがたい要素が含まれていた。

 それは非難でもなく、承認でもなく、諦めでもなく、ましてや憧憬でもない。形容しがたい感情の重なりのようなものが襞をなしていた。

 「封印・・・面白いですね、その表現・・・」

 彼女は少し微笑んだ。それはアルコールに弱い女性が少量のアルコールを口にした時に見せる溶けていく緊張感のように、ゆっくりと染み出してくるような頬笑みであった。

 私は、その彼女の言葉は、肯定の意味に捉えた。

 「雨がだいぶ弱まりましたね・・・もう大丈夫そうですよ。また強くなるといけないから、そろそろ行きましょうか・・・」

 私はそう言って、アイスコーヒーが入っていた紙コップを片付けた。キャディーバッグを肩に担いで二人は足早にそれぞれの車に向かった。



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ