2012/3/30

2206:辛味大根  

 そばがきは素朴な料理である。そば切りの方が時代的には後から食されるようになったものであり、そば料理の原型はそばがきであった。しかし、今ではそばがきは日陰の存在であり、あまりポピュラーとはいえない。

 そば豆腐の後に、そばがきが出た。ここのそばがきは、本来素朴で鄙びた感のあるそばがきが、一つの立派な料理として完成されている。箸で切ると、すっと箸が通る。少し濃いめのたれがかかっていて、それになじませるようにして口に運ぶ。そばの香りが口の中に広がる。淡い雪が手のひらの熱で溶けるように、舌の上ですっと溶ける。有機的な複雑な味わいをその舌の上にしっかりと残しながら・・・

 「これ、美味しいでしょう・・・」「寧々ちゃん」の表情を盗み見するようにしながら、訊いてみた。

 「わたし、そばがきってあまり好きじゃなかったけど、ここのそばがきはぜんぜん別物って感じですね・・・とても上品で繊細・・・このたれの味も絶妙・・・」

 「そうでしょう・・・・そばも素晴らしいのですが、実はこの店の隠れたお勧めの一番は、このそばがきなんです・・・」

 一気に食べるのが惜しいように、ゆっくりといつくしみながら、そばがきを食した。もちっとした食感や、香りのよさ、なめらかな舌触りなど、ゆっくりと味わいたくなる逸品である。

 「そういえば、この前のセミナーどうでしたか?あのセミナーで教わったことを日常生活のなかで実践していますか?私は、細々ですけど続けています。」「寧々ちゃん」は先日一緒に参加した「ホ・オポノポノ」のセミナーについて訊いてきた。

 「私も、実践していますよ。四つの言葉やブルーソーラーウォーター、呼吸法なんかを・・・試しています。具体的な変化といったものを実感するまでにはいたっていませんが・・・家族の中で私は唯一の綺麗好きなんですが、その度合いが加速しました。毎朝、リビングを拭き掃除しています。おかげで、リビングは常に綺麗です。」

 「私は、気持が軽くなったような気がしています。まだ10日ほどですから確かなことは言えませんが、良い効果があるような気がしています。すぐに日常生活のざわついた空気の中に埋没してしまうかも、と思っていたのですが・・・これからも続けていこうと思っています。」

 「そうですね・・・結局継続できるか、否か・・・そこにかかっているんですね。これは何でもそうですが、継続する能力というのは、とても大事ですよね・・・私も続けてみようと思っています。日常生活の中で、具体的な変化は徐々に現れるのでしょう。ある程度の月日が経過すると、その変化のほどが実感できるようになるような気がします。1年とか2年とか、そういった時間の経過があれば、きっと大きな差が出るのでしょう・・・」

 そばがきが終わると、いよいよそばである。切れとコク、豊かな風味・・・どれをとっても一級である。見た目も素晴らしい。薬味の辛味大根も良い味を出している。そばを潔くすする「寧々ちゃん」の口元に思わず視線が集まった。



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