2012/2/22

2169:漆喰  

 白い漆喰に覆われた壁と天井からは独特の清澄な空気が部屋の中に送り出されているのかもしれない。その空気をその大きな体いっぱい吸い込んでいるから、TANNOY GRFは清澄で独特の精神的な高みを感じさせるよう音を優しく放つのであろうか。

 今晩は1年ぶりくらいにA氏邸を訪問した。A氏のリスニングルームは、どことなく教会の内部を思わせる雰囲気を有している。漆喰の壁や天井がそう思わせる大きな要因と思えるが、そこに設置されたTANNOY GRFやラックに綺麗に納められた美しいオーディオ機器たちが、どことなく祭礼に用いられる調度のような高貴な造形を有していることもその要因であろう。

 送り出しは、アナログはROKSAN XERXES10、デジタルはLINN CD12。GRFを駆動するアンプはMARANTZの7と2のセット。ケーブルの取り回しや、電源環境への配慮、ライントランスを活用したノイズ対策、さらには機器のセッティングや部屋の音響に対する工夫にも、並々ならぬ慎重なる心配りが見受けられる。

 美味しいお茶をいただきながら、A氏が最近よく聴いていらっしゃるCDとレコードを聴かせていただいた。CDやレコードが切り替わるたびに口にする言葉はほぼ同じ。

 「素晴らしい演奏ですね・・・心にすっと入ってくるので、ついつい音楽に引き込まれます・・・」

 特にレーヌ・フラショーのチェロとズゲーネ・ラウテンバッハーのバイオリンの高貴で清澄な演奏には強く心惹かれた。

 派手さは全くない。過剰な演出や装飾は皆無。軽やかで音がすっとまっすぐ流れ出る。その演奏は音楽の高貴な香りをごくごく自然な形で提示してくれる。

 貪欲な欲望の虜になって日々を忙しく過ごしている私などは、心洗われる思いがしみじみとする。聴き進むうちに、徐々に薄汚れた心が軽くなっていく・・・こんなことはほとんどないことである。

 大概、オーディオを聴いていると、心のお腹が一杯になってくる。「もういいや・・・」といった感覚で電源を切ることが多い。

 かけていただいた音楽の持つ精神性の高さと、同じ目線でA氏のオーディオは存在しているようである。「聴く者をびっくりさせたい・・・」といったオーディオ的な貪欲さとは別次元での高みを感じた数時間であった。

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