2012/2/16

2163:事故  

 目の前で交通事故を目撃したり、かなり大きな地震が起きた時など、何かしら突拍子もないことに偶然出会うと、心臓の鼓動は急に早くなることがある。これは、人間の身体が本来持っている防御本能であろう。

 一昨日、ジョナサンの駐車場に車を停めて、その入口に入った途端、私の心臓の鼓動は急にそのテンポを速めた。

 入口のすぐ右側のテーブルに「寧々ちゃん」の姿を認識した。それと同時に、そのテーブルには「寧々ちゃん」以外の人間が2名座っていた。

 「えっ・・・なんで、一人じゃないの・・・」不意打ちを食らったかたちで、どぎまぎしたのである。すぐには事態が呑み込めなかった。

 その2名は、こちらに背を向ける形で座っていたので、一瞬誰かは分からなかった。何かしらその場の雰囲気の異様さが感じられ、すぐさま足を止めた。

 「寧々ちゃん」はこちら側を向いていたが、私が到着したことに気付いていないようであった。その表情は強張っているように見えた。

 私は足を止めると同時に身を隠すように別のテーブルのほうへ移動した。そこから、気付かれないようにそっと様子を窺うと、その後ろ向きの男性は、Coreさんであることが分かった。

 「では、Coreさんの横にいる女性はいったい誰なんだろう・・・」そこまで考えが及んだとき、すっと血の気が引くような感覚にとらわれた。

 「Coreさんの浮気相手の女性であろうか・・・」もしかして、ゴルフスクールを終えた「寧々ちゃん」が私との待ち合わせに、ジョナサンに着いたとき、たまたまCoreさんとその女性もこの店に食事に来ていて、鉢合わせ・・・といった、偶然が幾重にも重なって起きたハプニングであったのであろうか・・・

 もしも、そこに私が現れ、4人が顔を合わせることとなったら、事態はより一層ややこしく複雑怪奇な展開となってしまうであろう。

 幸い、私の存在はまだ、3名には気付かれていない。テーブルに一端座ったが、店員はまだ注文を聞きにきていない。

 静かに席を立ち、出口のほうへ・・・そのまま外へ出た。もちろん後ろは振り向かずに。車に乗り込み、すぐさまメールを打った。

 「すみません・・・仕事がどうしても片付かないので、9時には着けそうもありません。また別の日に会いましょう。」

 とりあえず、そうメールを打って、送信した。3名には気付かれてはいないはずである。すくなくともCoreさんは入口に背を向けていたので、気付く可能性はほとんどない。

 それにしても私の予想が当たっているとしたら・・・あの3人の今後の展開はどうなるのであろうか・・・Coreさんの浮気を知っていながら、見て見ないふりをしていた「寧々ちゃん」であったが、偶然にも目の当たりにしてしまったとしたら・・・どうするのであろうか・・・

 しばらくエンジンもかけずに車の中にいた。心臓の鼓動はなかなか通常のテンポに戻らなかった。数分間そうしていたであろうか・・・ブレーキを踏みながらエンジンのスタートボタンを押した。乾いた音がしてエンジンがその回転を始めた。サイドブレーキを解除し、ゆっくりと車を進めた。車はライトを消したまま駐車場を出た。



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