2012/2/29

2176:色分け  

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 第一印象は「悪くない・・・結構モダンな感じ・・・」というものであった。メープルの色合いのクワドラスパイアと違って、1階のリスニングルームの内装とは相容れないのでは、と危惧していたが、実際にセットしてみると、それほど違和感はなかった。

 違和感がないばかりか、このラックはきりりと空間を引き締め、その中に収容したオーディオ機器を美しく縁取ってくれる。
 
 グレー色の棚板にシルバーの骨格、その色合いのコンビネーションはモダンで渋い。ノアが代理店として日本に輸入していたようであるが、数年前から輸入が途絶えている。

 骨格部分は鉄。中空構造で指でコツコツしてみると結構響く。響きをしっかりと押さえこむ作りではないようである。

 棚板はMDFであろうか、厚みはそれほどなく、アルミと思われる三つの円錐により骨格部分にセットする。なかなか精緻な構成である。

 クワドラスパイアのラックは3段ラックを二つ並べて使っていた。SOLIDSTEELは一体型であるが、6台のオーディオ機器が収納可能で、収容力は同じである。

 オーディオ機器の設置は、クワドラスパイアのときと同じ。向かって右側にはLP12本体と電源、さらにトランスを設置し、向かって左側にはCD12、QUAD22、そしてQUADUを設置した。

 いずれもコンパクトなオーディオ機器であり、このスマートなオーディオラックに十分な余裕空間を残して収納することができた。

 さて、その音の具合はどうであろうか?変更したばかりで馴染みがない状態なので、多少割り引いて評価する必要があるとは思う。

 セッティングを何かしら変えると、その状態がしっくりとなじむまでには、ある程度の時間が必要である。なじんでくるに従って、その長所も欠点も浮き彫りになってくる傾向があるから、即断は禁物である。

 それは、わかってはいるが、やはり頭の中では「クワドラスパイアと比べてどうだろう・・・見た目的にはのんびりした感じのクワドラスパイア、きっちりしているSOLIDSTEELという印象であるが・・・音の傾向は・・・」と、ついつい聴き比べモードになってしまう。

 「音の下支え感がかっちりとしている・・・クワドラスパイアはその辺が良い意味で曖昧・・・SOLIDSTEELのアイロンがかかったシャツ感覚を、気持良いととるか、堅苦しいととるか・・・」

 「やはり、モダンだ・・・でれでれしていない・・・このほうがより正確なのでは・・・きっちりとしてるのを、他の調整項目で多少間引いていくほうが本来的ではないであろうか・・・」

 「クワドラスパイは良い意味ででれっとしている。それを引き締める方向で調整する。SOLIDSTEELは良い意味できりりとしている。それを多少緩めていく。その調整過程で、好みのポイントを探る。どちらの手法でも、落とし所さえ間違えなければ、良いポイントに収まるような・・・」

 そんなことを頭に浮かべながら、何枚かのレコードを聴いていた。興味深い「ラック対決」であるが、明確な勝者、敗者に色分けされることはなかった。ただし、その音の傾向は明確に色分けされた。

2012/2/28

2175:軽量化  

 軽量化・・・これは重要なテーマである。ヒルクライムにおいて、軽量であるということは「善」である。なんせ重力に対抗して急峻な坂を上っていくわけであるから、軽ければ軽いほど有利ということになる。

 まずは人・・・その体重が重要になってくる。プロの世界でもヒルクライムを得意としている選手は、小柄で体重が軽い。

 残念ながら、私は身長が181cmと大柄である。体重は現在72kg。身長と体重のバランスは比較的取れているのであるが、体重72kgはヒルクライムにとっては致命的に重い。

 もう少し落としたい。目標体重は69kg。現在よりも3kg落とすことになる。身長とのバランスからするとやや痩せ気味となってしまう。

 大学生のころの体重は69kg。その当時の体重に戻すことになる。それ以上落とすと、かなり不健康な感じになってしまいそうであるので、目標はその辺に置いている。

 それが完了したら、ロードバイクの軽量化にも取り組みたい。今現在使っているORBEA ONIXは特に軽量なモデルではない。ホイールもごく一般的なものである。したがって、総重量はきっと8kg以上であろう。

 軽量モデルであれば、総重量が6kg台のものもある。funrideの今月号には、ヒルクライムに最適の軽量モデルが紹介されていた。

 軽量モデルは、やはり値段も高いものが多い。軽くするにはカーボンを薄くする必要がある。薄くても強度を保てるカーボンは、当然高級である。となると、価格はぐんぐんと上がる。フレームのみで50万円ほどのモデルが多い。

 それはホイールも同様、軽くするためには、素材としてはアルミよりもカーボンが有効である。カーボンホイールは値段もグンとあがる。

 カーボンだと、前後のホイールで20万円を超えるプライスタグは当たり前の世界である。ちなみに今私のONIXに装着されているホイールはセットで4万円。ざっと5倍の価格である。

 軽くはしたいが、思わず「う〜ん・・・」と唸ってしまう。しかし、ホイールを変えると走りが変わるともいう・・・チームのメンバーも口をそろえて、同じことを言っている。確かに効果はあるようである。

 人間の軽量化が完了したら、この辺にも取り組もうかと画策している。人の体重も軽量化し、ロードバイクも軽量化する・・・すると財布の中身も軽量化されてしまうのかもしれない。

 今晩は仕事終えてから、ジムに向かった。1時半ほどのトレーニングの後シャワーを浴びて、体重計に乗った。表示された数値は「71.6」・・・ほんの少し減った。 

2012/2/27

2174:ラック対決  

 2階でしばらく続いていたサブシステムは数ヶ月前から休業状態である。現在は、1階のメインシステムのみが稼働している。

 サブシステムは数年前から存在していた。まず最初のサブシステムは、スピーカーがPSD T3。これをSONY CDP-MS1とSD05で駆動していた。

 からっと晴れわたったさわやか系のサウンドであった。しかし、やがて「ビンテージの嵐」が我が家のオーディオ領域に吹き荒れ、このサブシステムは見事に解体した。

 第二世代のサブシステムは、スピーカーがQUAD ESL。これをQUAD22、QUADUで駆動するというある純正システムであった。送り出しには、LINN CD12を使っていた。

 QUAD ESLは、その見かけは多少心許ないようなところがあるが、その奏でる音は自然で堂々としていた。QUAD ESLの先進性と音楽性が心を惹きつけるシステムであった。

 その後、スピーカーはもう一台新たに取得したTANNOY CHATSWORTHに変わってしまった。結果として、スピーカーもアンプも1階のメインシステムと同じになってしまい、サブシステムとしての存在意義は、どんどん薄れていくこととなった。

 2階の部屋は元々主寝室である。そこに無理矢理オーディオシステムを入れ込んだのであるから、当然奥さんのご機嫌は斜めになる。

 さらに時折OFF会などで、その部屋に客人を招き入れるようになると、奥さんのご機嫌の斜め加減は否が応でも強まることとなった。その斜め度合いが、ピサの斜塔の斜度を遙かに超えるような角度になるにいたって、撤退を決意したのである。

 補欠組のchatsworthもQUADも引き取り手が決まって、3月中には我が家を去っていく。サブシステムの残骸として残るのはSOLIDSTEELのラックのみである。

 このSOLIDSTEELのラックを一度、メインシステムのラックであるクワドラスパイアと取り替えて、試してみようかという気がしている。

 1階のリスニングルームは、木がふんだんに使われた内装であるので、クワドラスパイアのメイプルの色合いの方が合ってはいる。しかし、SOLIDSTEELのラックの渋い色合いでも違和感はないような気がする。

 大切なのは、音である・・・クワドラは3段ラックが2つ並んでいる。SOLIDSTEELは一体型であるが、収納スペースとしては6台のオーディオ機器分ある。そういう意味では収納力は互角。

 剛性はどうであろうか・・・幾分SOLIDSTEELの方があるような感じはするが、いずれも細身の骨組みで、見るからに高剛性という感じではない。

 我が家のオーディオ機器は軽量級のものばかりなのでラック変更に要する作業時間はそれほどかからないであろう。近いうちに試してみよう。

 CHATSWORTHもQUADもレギュラーと補欠は何度か比較試聴したが、あきらかな実力差があった。ラックはどうであろうか・・・クワドラスパイア VS SOLIDSTEEL・・・その軍配はいずれに上がるのであろうか・・・

2012/2/26

2173:けったいな人々  

 昨日までの雨は朝には止んでいた。ORBEA ONIXのサドルにまたがり、サイクルシューズのクリートをビンディングペダルにかちっとはめ込んで、集合場所であるバイクルプラザに向けて走りだしたとき、真冬のような寒さを感じることはなかった。

 「冬はもう終わったのかな・・・」といった思いが自然とわいてきた。まだ2月であるので、実際には終わったわけではないのであるが、春が近いことは感じられた。

 今日の目的地は、梅乃木峠に決まった。距離はあまりなく、往復で90km弱である。峠の登り口までは比較的平坦で、8名での隊列はスムースに進んだ。

 天気は曇りであった。はじめのうちはこの時期としては暖かい方であると感じていたが、青梅市に入ると気温がぐっと下がるのが分かった。「2,3度違うのでは・・・」という気がするほど空気の感じが違う。

 梅乃木峠への上りは4Kmほど、前半に急峻な坂が続き、途中緩やかなところもあるが、またやがて急になるといった負荷の重い上りである。

 急峻な勾配のところはダンシングで、緩やかなところはシッティングで、マイペースで上ってゆく。心拍数が180になるとペースを落とし気味にして、あまり無理せず進んだ。

 それでも、後半は結構ばてた・・・さらに峠の頂上付近では雪がまだ残っていた。わずかに車が通ったわだちにはアスファルトが出現しているが、そのわだちからタイヤがそれてしまうと落車する危険性が高い。

 過酷な上りで体力を消耗しているのでバイクも多少ふらつく・・・「これは危ないな・・・」と思い、雪が残っている区間は、バイクを降りて、押して歩いた。

 雪の区間が終わってバイクにまたがってまた漕ぎだそうとするが、クリートに雪が入りこんでビンディングペダルにうまく食い込まない。かちっとした乾いた音は全くせず、あいまいな感覚で漕ぎだすと、ずるっと外れたりする。

 「くそっ・・・」と呟きながらクリートに着いた雪を落とそうと何度かアスファルトの上で足踏みするようにした。そうして、ようやくまた漕ぎ始める。

 「まったく、もの好きである・・・こんなに苦しい思いをして急な峠の上りをわざわざ自転車で上るんだから・・・実に『けったい』だ・・・」

 「けったい」・・・その言葉が自然に頭に浮かんだ・・・先日、スターバックスで会った時に「寧々ちゃん」が教えてくれた言葉である・・・

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 「だって、ずるいでしょう・・・」

 「寧々ちゃん」は、まじめなのか、多少いたずらっぽい物言いなのか、判別がつかない雰囲気でそう言った。

 「ずるいって・・・誰がですか?」

 いまひとつ、その言葉の真意が呑み込めず、私は訊き返した。

 「主人です・・・何年もあの女性と不倫してたんだから・・・私だって・・・一度くらいは・・・」

 「あっ・・・そういう意味ですか・・・ずるいって・・・」

 「変ですか・・・」

 「いえ、そうですよね・・・確かにずるいですよね・・・ずるいという言葉は関西弁で言うと『いけず』ですか、ちびまる子ちゃんがときどき使う・・・」

 「ちょっと違うような気がしますけど・・・『いけず』は・・・」

 「そうですか、うちの娘が関ジャニエイトの熱心なファンで、我が家では今『えせ関西弁』が飛び交っているんです・・・」

 「じゃあ、『けったい』っていう言葉を娘さんに教えてあげてください。滑稽なとか馬鹿馬鹿しいという意味なんですけど・・・『けったい』っていう言葉、私好きなんです。軽妙でしょう・・・悲しくもおかしい、感じがして・・・」

 「私も、主人も、taoさんも、そしてあの女性も・・・みんな『けったい』ですよね・・・本当に・・・」

 「『けったい』って良い響きですね・・・」私はその言葉の持つ、あまり深く拘泥しないような感じが気に入った。

 「けったいな人々・・・」「けったいな人生・・・」「けったいな関係・・・」意味もなく言葉を立て続けに並べた。

 それを聞きながら「寧々ちゃん」は可笑しそうにほほ笑んだ。その笑顔は確かに魅力的であった。緩やかで、はんなりとしていた。

 「じゃあ、もう一度だけ会いましょう・・・日程はメールで相談しましょう・・・」

 スターバックスを出た時には、遠くの山並みがシルエットになって見えていた。二人は目で挨拶をして、それぞれの車に向かった。気温は少し暖かかった。そして、かすかに艶やかな風が吹いていた。

2012/2/25

2172:猫の目  

 「それで、どういった話になったのですか・・・ご主人はなんて・・・」

 彼女の瞳を見つめながら、一番訊きたいことを言葉にしてみた。彼女は表情をそれほど変えなかった。その瞳の奥底にも悲しみの色合いが濃く広がることはなかった。

 その瞳を見つめながら、猫のような瞳の色合いだと感じた。喜びや悲しみと言った一言で言い表すことのできる感情ではなく、もっと複雑に入り組んで、表現しがたいものが流れているようであった。

 「主人は、しばらくして、その女性を一人で帰したんです。その店のすぐ側に住んでいるようで・・・歩いて帰れると・・・こわばった表情で頭を下げて、無言で彼女は帰りました。」

 「主人と二人きりになると・・・改めて謝ったんです。これまで惰性で続いてきてしまったその女性との関係は、今後断つと、言いました。」

 「家庭を壊す気はないと・・・相手の女性は独身で、まあ、いわゆるバツイチなんですけど、彼女も結婚を望んでいるわけではないと、彼は言います。」

 「そうですか・・・じゃあ、良い方向に向かいそうなんですね・・・」

 「ええ、彼の言葉を信じるならば・・・そうなるでしょうか・・・」

 「それにしても、私が居合わせなくて良かったですね・・・私がもしその場に居たら・・・本当に複雑怪奇で収集のつかない事態になっていた気がします。」

 「そうですね・・・そうなっていたら・・・四人が四人、目を白黒させていたでしょうね・・・本当に・・・おかしい・・・」

 彼女は少し微笑んだ。それにつられて私も微笑んだ。店内は相変わらず空いていた。コーヒーの香ばしい香りはゆっくりとその広い空間を流れていた。

 「ご主人を信じますか・・・」

 「半信半疑かも・・・」

 「でも、ご主人ももしかしたら、これが良い機会だとだと思ったのかもしれませんよ・・・不倫はそうは長く続かないものです・・・これで相手の女性にもはっきりと切り出すことができる・・・そう思ったのかもしれません・・・」

 「そうでしょうか・・・相手の女性はどうなんでしょう・・・」

 「彼女も大人の女性ですから、事の次第を飲み込むでしょう・・・相手の男性の家庭を壊してまで・・・と思うんじゃないですか・・・」

 「そうでしょうか・・・」

 「昼のメロドラマのように修羅場にはならないと思いますよ。現実は静かに淡々とことが進むことの方が多いですから・・・」

 「淡々と・・・静かに・・・」「寧々ちゃん」は私の言葉を繰り返すようにつぶやいた。その目は何かを思案しているように見えた。

 その考えを先取りする形で、「じゃあ、私たちも二人っきりでは会わない方がいいでしょうね・・・」と彼女に話した。

 そう言ってからこの場の空気が重くなるのを避けるように「少なくとも、裸で抱き合って寝ない方がいいでしょう・・・」と続けた。

 彼女はまた少し微笑んだ。そして、少しばかりいたずらっぽい表情をちらっと見せてから、一言一言を区切るかのように言葉を発した。

 「一度だけ・・・抱いて下さい・・・」

2012/2/24

2171:手袋  

 スターバックス青梅店の店内には、オレンジ色のシェードがかけられたライトが幾つか規則的に並んでいた。テラス席も用意されていたが、この時期にテラス席を利用する客はあまりいない。

 でも今日の気候であれば、テラス席でも十分に快適に過ごせるのでは、と思わせるような陽気である。「春はちかい・・・」そう思わせてくれる。もちろん、このまますんなりとはいかないはず・・・また寒い日々が戻ってくるのであろう。

 頼んだコーヒーを右手に持って店内をくるっと一周したが、「寧々ちゃん」の姿は確認できなかった。

 しょうがなく窓よりの席に着いた。開口部を大きくとっているので、明るい日差しが店内を照らしていた。オレンジ色のライトの光は、その日差しの光に寄り添うように暖かな色合いを添えていた。

 Mサイズのコーヒーを半分くらい飲み干したところで、「寧々ちゃん」が店に着いた。その姿を認め、目で合図を送った。彼女はホットではなくアイスのものを頼んだようで、ストローの着いたやや大きめのカップを左手に抱えながら、私が座っている席の前の席に座った。

 「この前はすみませんでした・・・この時期は仕事が立て込んでいて・・・いつも期限に追われながら仕事をしているもんですから・・・」

 彼女の様子をそっとうかがいながら、席に着くと同時に彼女に話しかけた。先日のことに関して、実は私がその現場に一瞬居合わせたことを、彼女が気づいていないかどうか確かめるためでもあった。

 「実は・・・taoさんが来れなくて良かったんです・・・とても・・・ちょっと信じられないようなことがあったんです・・・」

 「信じられないようなこと・・・何ですか・・・」内心「やはり・・・」とは思ったが、それは表には出さずに、彼女の次の言葉を待った。

 「実は、ゴルフスクールを終えて、待ち合わせ場所のジョナサンに入っていったら、ばったりと会ったんです。目と目が合って、はっとしました・・・お互いに・・・」

 「えっ・・・誰と会ったんですか・・・」

 「主人です・・・女性と一緒でした・・・ぱっと目が合って、あの人の驚いた表情を見て、全て一瞬に分かってしまいました。その女性が誰か・・・なぜここに居るのか・・・今朝、今日も遅くなりそうだ・・・と言っていたその言葉と、それを言った時の主人の表情が頭の中にすっと浮かんできました・・・」

 「えっ・・・ご主人と相手の女性と会ったんですか・・・」

 「ええ、図らずも・・・少しの間その場に立ち尽くしてしまいました。くるっときびすを返してその場を立ち去るべきだったのかもしれませんが、それもできずに呆然としていました。向こうも、どう対応すべきか決めかねていたようで、滑稽なくらい動揺していました。」

 「数分も経ったでしょうか・・・主人は席を移って、私を空いた席へ座るよう促したのです・・・」

 「なんだか、力が抜けてしまって、どうにも自分の体がうまくコントロールできない感覚で、言われるままに座りました。向かいには、主人と女性が座っていました。女性はちょっと青ざめた表情をしていました。俯き気味で、ほとんど話しませんでした。」

 「それで、ご主人はなんて・・・」

 「正直に話してくれました・・・うすうす気づいていたかもしれないけど、と前置きして、数年前から、ここに居る女性と不倫の関係を続けていたことを・・・すまない、という言葉を何度かその間に挟みながら・・・」

 店内に客は私たち以外は2組ほどで、思ったよりも閑散としていた。私は「寧々ちゃん」の話を聞きながら、左前方の視界の隅、店内の床に不自然な形をした茶色の小さな塊が見えるのが妙に気になっていた。

 「何だろう・・・小さく、茶色で、どことなく自然でない形をしている。まさか、雀の死骸ではないはずだが・・・」心の中にそんな思いがよぎった。

 その物体に視線のフォーカスをゆっくりと合わせていった。すると、それは婦人ものの手袋であった。片方だけ落ちていた。落ちてぐにゃっとゆがんだ形でこわばっていた。客の誰かが、片方だけ落としていったのであろう。

 その茶色の物体が手袋であることを確かめると、ちょっと安心したような心持ちになって、その視線を「寧々ちゃん」の大きな瞳に移した。移して、その中をのぞき込むようにした。その色合いを確かめるかのように・・・

2012/2/23

2170:雲行き  

 重い球体を動かすには、ある程度以上の強度の衝撃が必要である。大きな力が加わると、重い球体はゆっくりと動き出す。

 動き出しには、大きな力が必要であるが、動き出してしまうと、慣性の法則が働くので、比較的容易に球体は転がり続ける。

 そしてその球体は、設置している地面の状況に応じて、その方向を変えるので、その向かっていく先を予測するには、不確実性が多分に潜むことになる。

 「近いうちに一度お会いしたいのですが、お忙しいですよね・・・実は先日の待ち合わせをしていた日のことなんですけど、思いがけないことがありまして・・・詳しくは、お会いしたときにお話しします。返信お待ちしています。」

 「寧々ちゃん」から今日メールが来た。14日のあの出来事以来、「どうしたものか・・・」と思案していたが、こちらから連絡を取ることはなかった。向こうから何らかの連絡があるだろうと思っていたが、なかなかメールがこないので、少々不安になっていた。

 「ようやく・・・来たか・・・」という思いで、少しばかりほっとした。しかし、事の顛末がどのようになっているのか、私の推測が正しいのか、といったことに関しては、まだ全く不明である。

 どうにか時間を見つけて「寧々ちゃん」と会って、事の詳細を聞き出すしかないであろう。とにかく、何かしら動き出した感がある。この動き出したものが向かう方向がどちらなのかは全く予測不明であるが、今の地点でじっとしているわけにはいかなそうな雲行きであることは、何となく肌で感じられる。

 Coreさんは、先日のハプニングを受けて、どういう方向で事態を収束しようとしているのであろう。例の女性とは関係を精算して、良き家庭人に戻るのであろうか・・・そうなると、「寧々ちゃん」も私との不明確な関係を続けていくわけにもいかないはずである。

 あるいは、夫婦はこれ以上一緒にやっていけない状況である・・・という方向に向かうのであれば、彼女はいったいどうするのであろうか?経済的な自立は現状では難しいはずである。

 「明日は、午後青梅市の方へ行く予定があります。午後3時頃には仕事が終わりますので、カインズホームに隣接しているスターバックス青梅店で会いませんか?ご自宅からなら車で20分ほどです。時間は3時半で・・・6時には事務所に来客がありますので、5時までなら時間があります。」

 さっとメールの文章を打って送信した。全く文面だけ見ていると、何気ないものであるが、その下に隠された心情は幾分複雑なものがある。

2012/2/22

2169:漆喰  

 白い漆喰に覆われた壁と天井からは独特の清澄な空気が部屋の中に送り出されているのかもしれない。その空気をその大きな体いっぱい吸い込んでいるから、TANNOY GRFは清澄で独特の精神的な高みを感じさせるよう音を優しく放つのであろうか。

 今晩は1年ぶりくらいにA氏邸を訪問した。A氏のリスニングルームは、どことなく教会の内部を思わせる雰囲気を有している。漆喰の壁や天井がそう思わせる大きな要因と思えるが、そこに設置されたTANNOY GRFやラックに綺麗に納められた美しいオーディオ機器たちが、どことなく祭礼に用いられる調度のような高貴な造形を有していることもその要因であろう。

 送り出しは、アナログはROKSAN XERXES10、デジタルはLINN CD12。GRFを駆動するアンプはMARANTZの7と2のセット。ケーブルの取り回しや、電源環境への配慮、ライントランスを活用したノイズ対策、さらには機器のセッティングや部屋の音響に対する工夫にも、並々ならぬ慎重なる心配りが見受けられる。

 美味しいお茶をいただきながら、A氏が最近よく聴いていらっしゃるCDとレコードを聴かせていただいた。CDやレコードが切り替わるたびに口にする言葉はほぼ同じ。

 「素晴らしい演奏ですね・・・心にすっと入ってくるので、ついつい音楽に引き込まれます・・・」

 特にレーヌ・フラショーのチェロとズゲーネ・ラウテンバッハーのバイオリンの高貴で清澄な演奏には強く心惹かれた。

 派手さは全くない。過剰な演出や装飾は皆無。軽やかで音がすっとまっすぐ流れ出る。その演奏は音楽の高貴な香りをごくごく自然な形で提示してくれる。

 貪欲な欲望の虜になって日々を忙しく過ごしている私などは、心洗われる思いがしみじみとする。聴き進むうちに、徐々に薄汚れた心が軽くなっていく・・・こんなことはほとんどないことである。

 大概、オーディオを聴いていると、心のお腹が一杯になってくる。「もういいや・・・」といった感覚で電源を切ることが多い。

 かけていただいた音楽の持つ精神性の高さと、同じ目線でA氏のオーディオは存在しているようである。「聴く者をびっくりさせたい・・・」といったオーディオ的な貪欲さとは別次元での高みを感じた数時間であった。

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2012/2/21

2168:40分間  

 ジムには週に2,3回といったペースで行っている。平日は夜の11時半まで営業しているので、仕事で遅くなっても、汗を流せるのが嬉しい。

 今晩は仕事を終えてまっすぐにジムに向かった。ジムに着いたのは10時過ぎ。急いで着替えて、マシーンが並ぶジムエリアに向かう。

 途中いくつかのスタジオを通過する。スタジオではヨガやエアロビ、その他実にさまざまな教室が開催されている。こっちは会費とは別に料金を払って申し込めば、参加できる。しかし、今のところ興味をひくものはない。

 数台並んでいるバイクの一つにまたがる。最初の10分は、軽めの負荷で、準備運動的に漕ぐ。ケイデンスは70程度。斜度3,4%の坂を上る程度の負荷であるので、心拍数もそれほど上がらない。

 次の10分は負荷を上げる。ペダルの重さを調整するボタンを何回か押す。緩やかな峠の上り程度の負荷である。ケイデンスは70を下回らないようにする。徐々に心拍数は上がってくる。5分もすると汗が滴り落ちてくる。

 ポタポタと汗が落ちる。額から、顎から、腕から、指の先から汗が流れ落ちる。心拍数は170ほどまで上がってくる。

 その次は負荷をさらに数段階上げる。シッティングでは重すぎて回せない。なので腰を浮かしてダンシングで漕ぐ。

 これがきつい・・・この状態で5分間。汗は所かまわず落ちていく。体重は前のめり気味にして、右足、左足と交互に体の全体重を預けて、ペダルを押し下げる。

 心拍数は180までくる。呼吸は切迫する。ダンシングは全身の筋肉を使う。体全体が疲れる。たった5分でも相当堪える。

 その5分が経過すると、負荷を元に戻して、シッティングで漕ぐ。それでも軽めの坂を上っているくらいのペダルの重さなので、心拍数はそれほど下がらない。170ほどで推移・・・汗は依然滴り続ける。

 その状態で5分経過したところで、クールダウン・・・10分ほど平坦な道を漕いでいる程度に軽い負荷にして、心拍数を落としていく。これが10分。全部で40分間である。

 この40分間の消費カロリーは500キロカロリーほど。それなりに良い運動になる。この程度では、ヒルクライムの鍛練としては少々心もとないとは思うが、まずは無理なく続けて、週に2,3回の鍛練を習慣にしなければ・・・

 その後は20分ほど、マシーンで筋トレ・・・太ももの裏側の筋肉(ハムストリング)を中心に鍛練する。ここまでで1時間。すでに時計の針は11時を回っている。

 最後は風呂で、これでもかっといった具合に出た汗を流し去りすっきりとする。もちろん体には疲労は残るが、仕事の疲労とは全く別物である。

 しかし、ジムでバイクをダンシングで漕ぐのは少々はずかしい。「何この人・・・妙に真剣にやってるわね・・・」といった目で見られるからである。ふつうはダイエットが主目的のマシンである。軽めの負荷で長時間有酸素運動をするためのものなのであるが、ペダルを思いっきり重い設定にして、腰を浮かして、汗をだらだら流すのは、確かにお洒落ではない。

2012/2/20

2167:スピードラーニング  

 石川遼が実践して、効果があったということで、今「スピードラーニング」は大変はやっている。英語のシャワーを浴びるように聞き流すだけで、英語が話せるようになる、というふれこみである。

 「えっ、聞き流すだけ・・・辞書も引かない、文法も考えない、今までの勉強した英語に関してはすべて白紙にして、ただ浴びるように聞くだけ・・・」

 正直に言うと「ほんとかな・・・」と言うのが感想である。「もし本当なら、こんな楽なことはない・・・」

 ということで無料試聴CDを頼んだ。すると無料試聴CDだけが届くのではなく、基礎編の第一巻と第二巻も一緒に入っていた。10日以内であれば、返品可能とのこと。ただし、開封していいのは無料試聴CDのみ・・・それ以外の本編は、正式に申し込んだ後で開けることになる。

 自宅と事務所の往復は車で行っている。片道30分程度、往復で1時間・・・この1時間の間英語のシャワーを浴び続ければ、英語が喋れる・・・かもしれない。

 3日ほど前からこの無料試聴CDを聴いている。「意味を考えない・・・今まで勉強した英語はすべて白紙に・・・」と言われても、ついつい、「現在進行形か・・・」とか「今のは完了形?」とか「いま何て言ったの・・・全然聞き取れない・・・」とか、ついつい左脳が回転してしまう。

 これは右脳を活性化して取り組むべき課題のような気がするが、ついつい左脳が出しゃばる。30分聞くと、少々頭が疲れる。「これでは、いけない・・・」

 聞き取れないと、いらいらする・・・「今何て言ったんだ・・・どんな単語だ・・・」という気持ちをいかに無視するかが、重要なのであろうか・・・

 聞き取れても、聞き取れなくても、気にしない・・・ただただ浴びている・・・そういう状態がお勧めのようである。

 もしかして、諦めずに浴び続ければ、耳が英語に慣れてくるかもしれない・・・もちろん長い時間の経過が必要かもしれない。毎日1時間365日欠かさず聞けば・・・1年後には、いや2年後には・・・そんな気にはさせてくれる。

 3日間無料試聴CDを聞いてみた。「少しは聞き取り能力がアップしたようなしないような・・・」微妙である。「申し込もうか、止めとこうか・・・」なかなか決断がつかない。別に仕事上英語を話す必要性はない。でも、英語が少し話せたらいいな・・・という思いはある。

 期限の10日間にはまだ数日ある。もう少し、聞きこんでみて、判断しよう。



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