2011/11/29

2084:8番アイアン  

 空には星は見当たらなかった。真っ黒でよくは分からなかったが、夜空は分厚い雲にしっかりと覆われていたようであった。

 そのせいか、気温はあまり下がらず涼やかではあるが、寒いほどではなく、過ごしやすい気温である。風もなく穏やかな夜である。

 昭和の森ゴルフ練習場の駐車場に着いたのは、7時過ぎであった。Mercedes-Benz E350のトランクからゴルフバッグを素早く取り出し、足早にクラブハウスに入った。

 受付のカウンターの側にはクリスマスツリーが飾られていた。きらきらと点滅する電飾がその場を少しばかり華やいだものに変えていた。

 そのクリスマスツリーの電飾を目にしながら、「いよいよ年末に向けて、時間は雪崩を打ったように、収束していくのか・・・」そんな感慨をもった。

 今年はいろんなことがあった・・・大震災に原発事故、大きな台風も来た・・・二人の子供はそれぞれ一つ上の学校に上がり、私はロードバイクにはまるようになってきた・・・毎週日曜には100kmを超える距離を走るのが楽しみである。仕事は相変わらず忙しく、顧問先の経営状況はおしなべて厳しい。

 「2011年は、良い意味でも悪い意味でも、記憶に残る1年になるような気がする・・・後で振り返ってみたならば、日本人の価値観が大きく変わるきっかけとなる1年として記憶されるのかもしれない・・・」そんな根拠もないことが頭に浮かんだ。

 ゴルフスクールは2階の打席で行われる。階段を早足で駆け上がり、指定の打席へ急いだ。「こんばんわ・・・」何名かのスクール生に声をかけて、空いていた打席にゴルフバッグを置いた。

 二つ隣の打席にいた「寧々ちゃん」は、こちらをちらっと見て、軽くほほえんだ。私も目で軽く挨拶をした。仕事からの直行であったので、スーツ姿であった。スーツを脱ぎハンガーにかけた。ネクタイを外し、椅子の上に置き、ポタンダウンシャツの襟を開けた。

 この格好では寒いかと思ったが思いの外寒くなかった。ゴルフバッグからまずは8番アイアンを取り出した。「スウィングリズムをしっかりと体に覚え込ませるには、8番アイアンくらいがちょうど良いですよ・・・」先日鈴木プロにそう言われたので、時間をかけてこのやや短めのアイアンを振るようにしているのである。

 今週の金曜日にはラウンドの予定が入っている。今年のラウンドはあと2回。どうにか良いスコアでこの1年を締めくくりたいものである。

 何度か素振りをしてから、ボールを打ち始めた。トップで力を抜いて上体をリラックスさせること、一定のリズムでスウィングすること、フィニッシュをきっちりと取り、ボールの行方を確かめながら、数秒間フィニッシュの形をキープすること、この3点に気をつけながら、スウィングした。

 星のない夜空には、その代わりとなろうとしているかのように、照明に照らされ青白く光る小さな球体があちらこちらから、打ち放たれていた。



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