2011/10/13

2038:闇  

 闇は一様に暗いわけではない。淡くほの暗い部分もあれば、漆黒の闇のように空間が凝縮されたかのような濃い闇もある。

 心の闇も同様である。灰色と呼びたいようなほの明るい色合いの部分もあれば、全ての質量が倍増し吸い込まれていくかのような深い底無し感に満たされた闇もある。

 「寧々ちゃん」の心の具合は、ここ数年そういった闇の濃淡を微妙に描き分けていた。一時は「もしかしたら、自殺するのでは・・・」と本気で心配するような状況にまで至った。

 しかし、一昨日の様子では穏やかな傾向を取り戻し、その闇には淡い光ながら光明が差し込み始めたように感じられた。

 「先週はロードバイクで一緒に走れて楽しかったです。自転車に乗る時には『引く・引かれる』という表現を使うとNさんから教わりました。『引かれる』感覚がとても心地良かったです。

 なんだか身を委ねている安心感がありました。以前一度だけ参加した自己啓発セミナーのひとつのメニューにグループごとに数名に分かれ、順次ひとりのメンバーが後ろに倒れ、それを他のメンバーが床に着かないように手で支える、というものがありました。

 皆一様に目をつぶって後ろに倒れます。最初はやはり恐怖感があるのですが、5,6名の他のメンバーの多くの手が床に着く前に体を支えてくれた時の柔らかな安心感が印象的でした。

 ロードバイクで引かれている時にもそれに似た心境があるように感じました。また、誘ってください。」

 「寧々ちゃん」から今日の午前中に入ったメールである。「長い距離はまだ難しいかな・・・また多摩湖の周遊コースにするか・・・」そう思いながらスケジュール帳を開いた。

 「今週末、土曜日は午前中は仕事の予定がはいている。午後なら空いているな・・・日曜日はロングライドに行く予定だし、土曜日の午後にしようか・・・」そんなことを考えながら、「自己啓発セミナーにも参加したんだ。OL時代のことであろうか・・・」と「寧々ちゃん」のメールの文面のことが頭をよぎった。

 私も勤務時代に企業研修の一貫としてそういったセミナーに参加したことがあった。費用はもちろん会社持ちであり、同僚数名と一緒に参加した。

 いろんな課題をチームでクリアしていき、連帯感を育むメニューが多かった。その中でグループごとに別れ、ひとりづつ横になったメンバーを他のメンバーが手で持って肩の高さまでゆっくりを持ち上げ、またゆっくり床に降ろすというメニューあった。

 もちろん皆初めての経験である。そのときの独特な感覚はとても印象的であった。「寧々ちゃん」が体験した背中方向に目をつぶって倒れていき、それを他のメンバーが床に着く前に支えるというメニューも同様の心理効果をねらったものかもしれない。

 彼女は安心感が欲しいのであろうか・・・何もも考えず身を委ねられるような安心感が・・・心の闇をやわらげてくれるような・・・



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