2011/9/30

2025:CURVE  

 Coreさんが運営されているブログ「AcousticCore」は週に1回記事が更新される。週末に記事を書かれるようである。プログレッシブロックのレコードに関する記事が多いが、今回の記事はめずらしくオーディオに関するものであった。

 「オーディオ雑誌は時折気が向いた時に購入する。昔と違って数は随分少なくなった。オーディオ市場そのものが急速に縮小したのであるからしょうがないことであろう。今日購入したのは『AUDIO BASIC』。季刊の雑誌である。」

 「その雑誌の中でとある写真に釘付けになった。別に新製品の紹介コーナーではない。とあるオーディオショップの紹介記事に添えられた店内の様子を写した写真であった。そこには、Wilson BeneschのCURVEが展示されていたのである。」

 「CURVEは私が以前使っていたスピーカーである。現在はRaidoh AcousticsのAyra C-2を使っている。切り替えたのは3年ほど前であった。CURVEはその前に4年ほど使用した。そのCURVEの写真を思いがけず目にして、昔の彼女にばったり出くわしたよな複雑な気持ちになった。」

 Coreさんは以前Wilson BeneschのCURVEを使われていたようである。残念ながらCURVEは実際に聴いたことのないスピーカーである。Wilson Beneschは今は正規には輸入されていない。なので、ショップでも見かけることは少ない。

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 遠目には普通のトールボーイであるが、よく見ると実に洗練された造形美が満載である。「クール」という表現がぴったりのスピーカーである。Coreさんが今お使いのAyra C-2と共通のテイストを感じさせるが、その温度感は、キャビネットにカーボンを使用している効果であろうか、より低めである。

 「既に手放したスピーカーであるが、その美しい肢体には思わず見とれてしまった。現行品ではないはずなので、中品であろう。思わずまた身近に置きたい衝動に駆られた。しかし、Ayra C-2との安定した生活も3年近い・・・その生活も大切にしなければ・・・少々後ろ髪を引かれる気持ちを抱きながら、そのショップに連絡することはしなかった。男とは未練がましいものである。」

 Coreさんの記事はそう結ばれている。Coreさんはスピーカーを完全に女性として捉えられているようである。CURVEもAyra C-2もスレンダーな美しい女性を思わせる姿形である。

2011/9/29

2024:移植後  

 2階に設置していたTANNOY CHATSWORTHを1階に移動した。1階のCHATSWORTHがオーディオラボ・オガワに修行の旅に出たからである。

 同じCHATSWORTHであるので、基本的な味わい感は当然同一である。しかし、この両者、製造年月日が違う。諏訪さんから譲っていただいたCHATSWORTHのほうが後期に製造されたもののようである。外見は正面から見るかぎりまったく同一である。しかし、背面に回ると若干の違いがある。

 後期型は背面にスピーカー端子がついているのである。前期型はスピーカー端子がなく、背面下端からスピーカーコードが豚の尻尾のようにひょろっと出ているのである。

 それと、12インチのモニターゴールドのエッジの素材が前期型と後期型では違うという。残念ながら見て確かめたわけではないのであるが、後期型はラバーエッジになっていると、諏訪さんからお聞きした。

 そういった若干の違いが音にどのようにあらわれるか・・・まあ、強いて言えば後期型のほうが音のつくりがほんの少ししっかりしているかな・・・と言った印象を受ける。前期型のほうが音のとろみがあるような・・・

 12インチ・モニターゴールドを搭載したCHATSWORTH(レクタングラー型キャビネット)の音の特徴は、音の甘みにある。

 TANNOYの一連の製品の中でも、その甘み成分の多さは、独特のポジションを保っているような気がする。他のTANNOYのスピーカーを全て聴いたわけではないが、VLZやLANCASTERといったCHATSWORTHに比較的近いポジションのスピーカーと比べても音の特徴ははっきりと把握できる。

 さらに、諏訪さんのお宅での他のユニットやキャビネットを纏ったCHATSWORTHと比べた際にも、その音の特徴はある一定の方向を向いていた。

 CHATSWORTHは残念ながら日本ではあまり人気がないようで、VLZよりも安い価格で、ビンテージショップでは取引されている。相場はペアで30〜35万円といったところである。

 私は、CHATSWORTHのコンパクトな形状は日本の住宅事情に合致しているし、VLZのようにスタンドを別途調達する必要性もない、さらに言うならば、この甘めの音の色合いは日本人の音の嗜好性に合っているように思うのであるが、オーナーの欲目なのであろうか・・・

 LINN CD12も1階に下りてきた。2階はオーディオルームとしての機能を完全に失い、純粋な寝室に帰化した。妻からは「もうスピーカーは置かないように・・・」との要望書を受取っているので、2階の「無理やりオーディオルーム化状態」は解消に向かうようである。

 さて、1階でのCD再生はどうか・・・2階ほどのエアボリュームがないが、わりとまとまっている。1階のほうがCHATSWORTHの特色は色濃く出るようで、その甘み成分はCDであっても充分感じられる。「これでいいか・・・」という印象である。

 CHATSWORTHとQUADは2セットあるが、レギュラーと補欠に選別し、もしもに備えるという位置づけで「補欠」は納戸で厳重に保管し、時々入れ替え戦をすることにしよう・・・今のところはそんなふうに考えている。

2011/9/28

2023:快晴  

 今日は快晴・・・風も軽やかで、この上なくゴルフに適した気候であった。この絶好のゴルフ日和のもと、美里ゴルフ倶楽部でラウンドしてきた。

 美里ゴルフ倶楽部は、とても穏やかなコースである。距離はそれほどなく、フェアウェイの広さもそれなりに広い。グリーンのスピードも中庸。比較的良いスコアが出やすいコースと思われる。

 INスタートであったので、10番ホールから・・・朝一のドライバーショットはいまひとつのできであった。どうにかアイアンショットでカバーして、立ち上がりはボギー・・・とりあえず落ち着いた立ち上がりであった。

 その後、パーを一つとったが、すぐさまスリーパットしたためのダブルボギーを叩いてしまった。結局、前半のINコースはパーが一つ、ダブルボギーが一つ、それ以外は全てボギーという結果であった。スコアは「45」。私としてはまずまずのスコア・・・

 欠点であるドライバーショットの方向性はやはり不安定なままであった。アイアンショットがそこそこ切れていたので、ボギーペースで回れた。ティーショットでフェアウェイを外しても、アイアンでグリーンの側までもっていき、どうにかこうにかボギーをひろった。

 昼食休憩後、OUTコースへ向かった。午後の出だしのティーショット。力まないようにスウィングしたドライバーショットは・・・やや右目に出た。そのままドローせず、木の根元当たりで止った。

 セカンドショットは木が邪魔になってグリーンは狙えなかった。フェアウェイに戻し、三打目でグリーンを狙う。三打目はグリーン手前、そこからアプローチで寄せて、2メートルほどのパターを決めて、どうにかこうにかボギー。

 INコース同様OUTコースもこんな感じであった。ウッド系のショットの不始末を短いクラブで取り戻し、どうにかこうにかボギーペースでこなす。

 堪えきれずダブルボギーが二つでたが、ショートホール二つを含む三つのホールでパーも出て、OUTは「44」のスコア。トータルで「89」・・・ぎりぎり80台のスコアが出た。前回2週間前のラウンドでは、あわや100叩きの「96」であったので、今日はまずまずの一日であった。

 ウッドの安定感があれば、もっと良いスコアが出たとは思われるが、粘り強く、あきらめない姿勢でラウンドできたので、まずは良しとしよう。

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2011/9/27

2022:囲まれ感  

 我が家のリスニングルームの広さは約8畳。御世辞にも広いとは言えない。さらに妻のアップライトピアノとの同居のため、オーディオ専有面積はさらに狭まり、ほぼ6畳の広さとなる。

 もともと、この部屋はもう少し広く、10畳の応接間であった。その部屋をオーディオルーム兼ピアノ練習室にリフォームしたのである。リフォームしたのは5年前の2006年のことである。

 防音仕様にするため、壁が10cm程厚みが増した。面積はその分減少した。反面床面を30cm下げることにより、天井高を標準の240cmから270cmにした。そのため、狭いわりに、それほどの圧迫感はない。

 この天井高を高くすることは、「石井式リスニングルーム」の提唱者である石井伸一郎氏が提唱する、部屋の長辺:短辺:天井高の黄金比率「1:0.845:0,725」に近づけるために行われた。

 床材タはモ、天井及び壁面はスプルースを活用している。スプルースはギターのボディーにも使われる木材である。楽器にも使われているのであれば、音に良いのではと採用した。

 ところどころ吸音用のスペースが設けられており、吸音部分にはスピーカー用のサランネットで覆われている。部屋全体の表面積に対する吸音部分の比率は17%に設定されている。主に聴くジャンルによって吸音率は変わるようで、クラシックがメインジャンルである私の場合少し低めの設定である。その後、吸音部分に板を貼り付けてさらに吸音率を下げている。

 オーディオ機器は2台のクワドラスパイアのラックに納め、リスニングポイントにはアンティークのデンマーク製ソファを置いている。

 狭いながらも、一応専用ルームである。防音もしっかりとしているので時間を気にせずオーディオを聴くことができる。

 時折「ピアノ練習したいんだけど・・・」と妻に言われ部屋を出なければならないが、概ね自分の好きなときに音楽を聴けるのは嬉しいものである。

 この広さななので必然的に「ニアフィールド・リスニング」となる。この「ニアフィールド・リスニング」の感覚はコンパクトカーの運転席の感覚に近い。

 ビッグセダンのような広々した感じはない。確かに少々窮屈感があるのである。しかし、そのタイトさが一種の心地良い囲われ感を演出する。これはこれで安心感があるのも事実である。

 最近は、Mercedes-Benz E350よりもVW POLOのハンドルを握る機会が増えたが、ちょうどPOLOの運転席の感覚に近いものを、このリスニングルームに座ると感じる。

 この囲われ感による安心感に浸りながら、音楽を聴くのも悪くはない。POLOはよくできた車である。短いホイールベースなので、時折ひょこっとすることもあるが、クラスレスなしっとりとした軽やかな乗り味を提供してくれる。このリスニングルームでも同様な乗り味を楽しみたいものである。

2011/9/26

2021:集約  

 一旦治まったかに見えた症状はやがて再発するものである。特にオーディオ機器の不具合の場合はそうなる確立が高い。

 「やはり、メンテナンスに出すしかないか・・・」そうため息をついたのは一昨日のことである。昨日オーディオラボ・オガワの佐藤さんに連絡を取った。

 わが家のオーディオ機器は古い。アンプのQUAD22・Uは半世紀前の真空管アンプである。スピーカーのTANNOY CHATSWORTHも同じく年代物。ワインやウイスキーは年代物のほうが価値が高いかもしれないが、オーディオ機器の場合も同じというわけではない。

 オーディオ機器は電気製品であるので、信頼性は大切な要素である。しかし、半世紀前の製品では、その点は少々心もとない。QUADもTANNOYも何度かメンテンスに出す必要性が生じた。

 QUADは横浜のクラシック・ガーデンに、そして、TANNOYは山形のオーディオラボ・オガワにメンテナンスに出している。オーディオラボ・オガワの佐藤さんに連絡を取ったということは、今回問題となっている機器はTANNOY CHATSWORTHである。

 やや強めの入力があるとノイズが出るようになったのである。スピーカーケーブルを左右逆にしても同じスピーカーからノイズが出る。アンプではないようである。

 オーディオラボ・オガワの佐藤さんは応対が穏やかである。スピーカー修理部門の責任者である佐藤さんは女性。きっと凄腕の技術者なのであろう。

 運搬用の箱を送ってもらって、ノイズが出るスピーカーを送る予定である。我が家にはCHATSWORTHは2セットあるので、オーディオが聴けなくなることはない。ちなみにQUADのアンプも2セットある。

 1階のリスニングルームのCHATSWORTHを修理に出すので、2階のCHATSWIORTHを1階に降ろすことにした。さらにCDプレーヤーは2階にしかないのでこれも1階に移動。これで、修理期間中であってもレコードもCDも聴ける。

 ただし問題が一つ・・・レコードを聴く時にCDプレーヤーからのRCAケーブルがQUAD22に接続されていると音が鈍ってしまう。そこでレコードを聴く時はCDプレーヤーからのRCAケーブルを外す。さらに、CDプレーヤーの電源スイッチもOFFにする。少々面倒であるが、まめにやるしかないようである。

 当面は1階のリスニングルームのみの稼動となる。2階のリスニングルームは寝室の空き空間に無理やりオーディオセットを押し込んだもので、家族からの風当たりは強い。ここは、家庭円満を前面に押し出し、2階からはオーディオセットを撤退することも選択肢に浮上してきた。

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2011/9/25

2020:山伏峠  

 朝の出かけにウィンドブレーカーを着るかどうか少し迷った。多少肌寒く感じるが、走り出せば暑くなるようにも思えた。そういったときは、着たほうがいい。暑くなれば脱げばいいだけであるから・・・

 自宅を7時に出た。バイクルプラザR.T.の集合場所までは30分ほど。今日は多少の曇り空。気温は20度あるかないか・・・ロードバイクで走るのにはちょうどいい気温である。

 往復100kmほどの距離を走るロングライドには数ケ月前から参加するようになった。それまでは多摩湖の周遊道路を2,3周する程度であったが、少々物足りなくなってきた。

 ORBEA ONIXを購入したのは半年ほど前・・・依然ロードバイク初心者であることには変りがないが、長い距離を走るようになってからは、その面白さに嵌り気味。

 体も締まってきたようである。少なくとも腹回りのダブツキとは無縁でいられるのが嬉しい。この年になってくるとどうしてもぽっこりおなかになってしまう危険性が否応なく高まってくるからである。

 今日のコースは「山伏峠」となった。往復で100kmほどの距離である。参加メンバーは10名ほど。「TRAIN」を組んで、旧青梅街道を西へ走る。10台のロードバイクが連なった「TRAIN」は壮観である。しかし、車のドライバーにとっては「TRAIN」というよりも嫌気のさす「ムカデ」といったほうが適切であろう。

 私も逆の立場で、自分の車の前を10台のロードバイクの隊列が走っているのを見かけたら「邪魔だな・・・この自転車・・・まったく・・・」と思わざる得ない。

 岩倉街道に入り岩倉温泉郷を抜けて飯能方面へ・・・着てきたウィンドブレーカーは休憩地点で脱いだ。走っているとうっすらと汗ばむ。しかし、爽やかな風を全身に受けるので快適なライディングである。

 名栗川沿いの道を走る頃になると車の通行量も少なくなる。名栗川はエメラルドグリーンの色合いの水を湛えている。普段よりも少し水量が多いかもしれない。

 川沿いの道は気温がさらに下がる感じ・・・とても涼しい。心拍計の数値は150前後、ちょうどいい負荷である。脳内麻薬が出やすい。脳内麻薬が出てくると一種の「トランス状態」に突入・・・静かな山間にロードバイクの乾いた走行音が静かに響く。

 山伏峠の上り口で再度休憩。さてこれからはハードな上りが4kmほど続く。軽いギアを選んで登り始める。最初のうちは順調に進む。しかし、2kmを越えた辺りから心拍数は180を超えた。呼吸も荒くなる。「逆トランス状態」である。

 坂の後半はややペースダウン・・・最後はどうにかこうにかという感じで峠の頂上に着いた。両足ともビンディングペダルから外し、峠の頂上で小休止。とにかく登りきれれば多少なりとも達成感が得られる。

 峠の下りは爽快である。風を切って突き進む。上りはあんなに長く感じたが、下りはあっという間である。速度は65Kmまで達する。落車すれば入院は避けられない。

 家にたどり着く頃には疲労は体の芯にまで達している。しかし、猛暑の頃のロングライドを思えば天国である。来週も天気が良ければ・・・きっと走りに出かけるであろう。

2011/9/24

2019:スプロケット  

 サイクルシューズに取り付けてあるクリートをビンディングに差し込む。カチッっと硬質な音がしてビンディングに固定される。

 まずは止まった状態で右足から、右足で漕ぎ出して、左足も固定する。一発で決まる時もあれば、もぞもぞと左足をさせてようやくはまる時もある。熟練者であれば、ほぼ常に一発でカチッと決まるが、私のような初心者の場合、時折もぞもぞする。さすがにがしっと踏み外すことはなくなったが、もぞもぞはまだ直らない。

 今朝は快晴・・・これぞ秋晴れである。毎週土曜日の朝にバイクルプラザR.T.の走行会は多摩湖の周遊道路で行われる。日曜日には100km前後のロングライドが行われる。今週は、土曜日の走行会にも日曜日のロングライドにも参加できる。明日も今日のような天候であれば、最高のロングライド体験ができるであろう。

 気温は暑くもなく寒くもない、走ると汗ばむが、止まると涼しい・・・絶好の条件である・・・風もそれほどなく、心地良くロードバイクで走れる。

 気候は最高であったが、路面状況は最高ではなかった。むしろ路面状況は好ましくない状況であった。先日の台風15号の爪あとが結構残っていたのである。

 多摩湖の周遊道路の上には木々の枝葉が散乱していた。また、まだ路面が濡れていたり、水溜りも残ってもいた。大きな倒木は片付けられたようであったが、気をつけながら走ってもあちらこちらで「バキ・・・バキ・・・」音をさせて小さな枝が飛び散る。

 1時間ほど走った。結構なハイペースであったので距離は短いが少々疲れた。ロードバイクを始めたのは、自宅のすぐそばに多摩湖の周遊道路があったことが大きな要因である。まさにホームコースと言っていいであろう。

 走り終えてシャワーですっきりした後、整体院へ車で向かった。チューバホーンさんが杉並区で経営されている「Pro.Fit」である。

 ロードバイクを始めた影響であろうか・・・背筋に張りを感じることが多い。2ヶ月に1回の割合で「Pro.Fit」で施術を受ける。施術を受けると背中の張りがすっかり消える。背中の張りが消えると、体全体の姿勢がニュートラルに戻るようである。

 これで明日のロングライドも乗り切れそうである。明日のロングライドのコースはまだ決まっていない。台風15号の影響で険しい峠は相当な悪い路面状況になっている可能性が高い。でもそれなりに辛いヒルクライムがないとすまないのが、バイクルプラザR.T.のロングライドである。メンバーはM体質なのであろうか・・・

 しかし、それなりのヒルクライムが待ち受けていようともきっと乗り切れるはず・・・先日スプロケットを標準の12-25Tから11-28Tに換えたのである。その効果のほどは・・・明日にでも。

2011/9/23

2018:片付け  

 今日はお彼岸である。お彼岸にはおはぎを食べるのが慣わしである。我が家でもスーパーで買ってきたものを食べた。私は黄粉をまぶしたものを選んだ。あまり甘すぎない味付けで美味しかった。

 我が家では「おはぎ」と呼ぶのが通例であるが、「ぼたもち」と呼ぶ人もいる。「おはぎ」と「ぼたもち」ってどう違うんだろうと・・・以前思ったことがあった。

 インターネットで調べてみると「実は、おはぎとぼたもちは基本的に同じもので、違うのは食べる時期だけなのです。ぼたもちは漢字で牡丹餅、おはぎは漢字でお萩と書きます。ぼたもちは、牡丹の季節、春のお彼岸に食べるもの。一方、おはぎは、萩の季節、秋のお彼岸に食べるもの。よって、春はぼたもち、秋はおはぎと春秋使い分けないといけないのですが、今は年中おはぎで通すお店が圧倒的に多いようです。」との説明があった。

 季節によって同じ食べ物を言い分ける・・・日本人らしい、繊細さを感じさせる話である。台風が過ぎ去って、季節的には秋がその勢力を確保したようである。今日は半袖では肌寒く感じるほどに涼やかであった。粘り腰を見せていた残暑もさすがに退散したようである。

 「寧々ちゃん」と待ち合わせたのは3時。とある食品スーパーの屋上駐車場である。5分遅れで着くと、閑散とした駐車場の一角にMitoを見つけた。Mitoと隣り合わせにPOLOを停めた。すると、「寧々ちゃん」はPOLOの助手席に移った。

 その表情はやや虚ろで精彩を欠いていた。助手席に座って「ごめんなさい・・・」と小さな声でつぶやいた。

 「誰でも季節の変わり目は体調を崩しやすいものです・・・特に今年は夏から秋への移行がスムースではなく、がくがくしてましたからね・・・乱暴な運転の車に乗っているようなものです・・・気分も悪くなりますよ。」

 「移り変わっていくのはしょうがないのです・・・いろんなことが過ぎ去ってしまう・・・変わっていってしまうんです・・・」「寧々ちゃん」は、無表情のまま言葉をしぼりだすようであった。

 「夏の終わりって、確かに無常感の様なものを感じますね・・・蝉がいっせいにいなくなり、夜は秋の虫の静かな合唱・・・私なんか思わず食い気に走ってしまいます・・・」

 しばらくはそんな取り留めのない話を続けていた。「寧々ちゃん」の表情に冴えはなく、辛そうな印象を受けた。心の中では「やはり、専門の医者に診てもらったほうがいいのかもしれない・・・」と思った。しかし、彼女は医者に行くことに対して抵抗感があるようである。

 話の中でも「夫は病院にいくことをしきりに勧めるのですが、そういう気持ちになれなくて・・・」とも言っていた。

 「すこし、気持ちが軽くなったら、一緒にロードバイクで走りましょう。走っている間は無心になれますよ・・・気持ちが落ち込むことは誰にでもあることです・・・仕事が上手くいかなかったり、職場や家庭での人間関係に疲れたり・・・世の中楽しいことばかりじゃないですからね・・・溜め込んじゃうと辛くなるんでしょう・・・きっと、捨てなきゃいけないんですよ・・・片付けですね・・・そう心の片付けです・・・いらないものは捨てる、大事にしておきたいものだけ心に残すのです・・・部屋を片付けるように心も片付けないと・・・」

 そう私が話した時であった。「寧々ちゃん」は堪えていたものを吐き出すかのように泣き始めた。口元を押さえながら、静かに嗚咽を漏らす。私は左手でやや前屈みになった彼女の背中をさすった。

 どれくらいそうしていたであろうか・・・私は彼女の嗚咽が完全に収まるまで背中をさすり続けた。時折彼女は嗚咽の合間に言葉を紡いだ。「私の涙には意味がないんです・・・」そう何度か口にした。

 かける言葉がなかなか見つからない。背中をさすり続けることしかできない。「心を片付けなさい・・・」言葉で言うのは簡単である。それをなんなく実行できるようであったら、どんなに楽であろう・・・「心の片付け」か・・・無責任に言った言葉を少々後悔した。

 恐らく1時間近くそうしていたに違いない。「寧々ちゃん」の気分が少し落ち着いてきたようである。「馬鹿みたいですね・・・」彼女はそっとそう口にした。

 「知ってますか・・・おはぎとぼたもちの違いって・・・おはぎのはぎは萩の月の萩で、ぼたもちは牡丹の餅って書くそうです。実は同じもので、季節で呼び名が違うんです。私は、てっきり小豆餡の粒が大きくて田舎っぽいのがぼたもちで、小豆餡の粒がほとんどない漉し餡を使っているのがおはぎかと思ってました・・・」

 「寧々ちゃん」の表情に少しばかり生気が戻ってきた。「そうだったんですか・・・私もその違いってよく知りませんでした・・・」

 「だから、今日食べるのはおはぎですね・・・ぼたもちではなく・・・」家から持ってきた魔法瓶に入っているコーヒーをブラスチック製のカップに注いだ。その一つを彼女に渡した。

 「軽井沢の丸山コーヒーの豆で淹れたものです。コクがあって美味しいです・・・」暖かいコーヒーが嬉しい季節になった。コーヒーを飲みながら、またしばらくいろんなことを話した。ひとしきり泣いたので、彼女の心は幾分落ち着いたようである。少しは彼女の心の片付けに役立てたのであろうか・・・そうであってくれればいいのであるが・・・

2011/9/22

2017:油そば  

 「油そば」にはスープがない。ぱっと見は、麺と具材だけが器に盛ってあるように見える。しかし、器の底には特製のタレが仕込まれていて、このタレに麺をからませるように上下によく混ぜてから食するのである。

 「油そば」という名称であるが、特に油っこいわけではない。麺は通常の麺に比べ太くもちっとしている。その太い麺に濃厚な味のタレが絡むと、ちょうど良い味わい感になるのである。

 「油そば」は武蔵境にある「珍々亭」がその元祖的な存在として有名である。私も何度か足を運んだ。とても美味であった。

 今や「油そば」は比較的ボピュラーな存在になったようで、いろんな店でそのメニューに加わっている。しかし、「珍々亭」の味にかなうような「油そば」には出会うことはなかった。

 しかし、国分寺に新たにできた「国分寺55」とやや変わった名前のラーメン店で、「珍々亭」の味に肉薄するかのような「油そば」に出会った。

 ここは、もともと太麺が売りである。そのもちっとした食感の太麺に、やや甘めの味わいの濃厚なタレが絡む。細かく刻まれたシャーシューも加わり、食べ応えがある。

 今日の昼食はこの「油そば」を食した。ほぼ食べ終えようとした頃に、メールが入ったことを示す、やや変則的なリズムでのバイクレーションが携帯電話から発せられた。

 「もしかして・・・」といった期待感を持って折りたたみ式の携帯電話を開いた。「寧々ちゃん」からの返信であった。

 昨日・一昨日とメールを送ったが返信がなかった。少々心配していたのである。Nさんからは「落ち込み期に入ったようだ・・・」という情報をもらっていた。

 「返信が遅れちゃってごめんなさい。ここ数日辛い状態なんです。季節の変わり目はいつもこうなんです。本当に嫌になってしまいます。家事のほうは娘がやってくれるので助かってます。本当に母親失格って感じです。夫は病院に行くよう勧めるのですが、薬漬けにされそうで怖いです。近いうちにお会いできますか・・・心を許して話せる人が他にいないんです。」

 そのメールを見て、「やはり、状態は悪いようだ・・・」と思った。話をするだけでも彼女の気が紛れるかもしれないと思い、すぐさま返信した。

 「もちろん、いいですよ・・・気を許して何でも話してください。私は人の話を聞くのが商売みたいなものですから、筋金入りの『聞き上手』です。明日の午後は、どうですか?」

 「送信」ボタンを押した。「送信中」の表示がしばらく画面にあらわれ、おもむろに「送信完了」の表示に切り替わった。携帯電話を閉じて、店から出た。午前中はあんなに晴れていたのに、空には急に雲が広がっていた。「降るかもしれないな・・・」そう思わせるような濃い目の灰色の雲であった。

2011/9/21

2016:台風  

 強烈な雨風が吹き荒れ、傘はその用をなさずに無残に折れ曲がった姿をさらし、街路樹はところどころで大きな亀裂を生じて、道路にその枝葉を投げかけていた。

 台風15号の直撃を受けた東京は、午後から「これは確かに直撃だ・・・」と思わせるに充分な迫力ある風景を長時間にわたって提示していた。

 交通機関にも大きな影響が出た。風雨のピークが、帰宅時間と重なったこともあり、ほぼ全線で混乱が生じた。我が家では上の娘が駅で足止めをくらい帰宅できない状態が生じた。8時以降JRや私鉄も順次運転を再開したので、9時過ぎにようやく帰宅した。

 私は今日は一日車での移動であった。3件の顧問先の会社を回ったのであるが、車内からみる外の風景はまさに「非日常」であった。

 多摩エリアの道路はところどころ冠水しており、通行止めになっている区間もあった。さらに道路には木々の枝が多数転がっていたり、どこかの家から吹き飛ばされてきたゴミ箱が転がっていたりと、結構危なかった。

 昨晩のゴルフスクール、「寧々ちゃん」は欠席であった。昨日送ったメールにも返信はない。ゴルフスクールで一緒であったNさんが言われていた一言が妙に気になった。

 「○○さん、いまかなり落ち込んでいるみたい・・・季節の変わり目は落ち込みやすいんですって・・・今日、携帯で話をしたけど、辛そうな感じだった・・・」

 「寧々ちゃん」は、軽い鬱症状がある。気分が落ち込んでしまうと、家事もまったく手をつけられないほど、辛いようである。

 はっきりと「鬱病」と診断されたわけではないようであるが、日常生活に支障をきたすほどの状態に陥ることが時折ある。季節の変わり目を迎えて、下降リズムに入ってしまったようだ。

 「寧々ちゃん」は現在43歳。数年前に大きな病気を経験し、その後ご主人との関係は微妙な状態になっているようである。一人娘は今大学生・・・徐々に親離れしていく年代である。

 頼りにされている、必要とされているという感覚が希薄になっているのかもしれない。心の拠りどころが、つかみづらくなったのであろう。心身両面において、大きな喪失感を抱いているようである。

 車から見える景色は騒然としたものである。きっと「寧々ちゃん」の心にも大きな影を落としているに違いない。妙に心がざわついた・・・再度メールを送った。

 「台風・・・凄いことになっていますね・・・そちらは大丈夫ですか?今、車で移動中です。車体の下を風が凄い音をたてて吹き抜けていきます。ちょっと不気味です。」



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