2011/1/31

1784:郵便配達夫  

 REDの入ったCHATSWORTHからは、軽やかな音が流れ出した。重々しい風合いはない。帯域は広くないが、聴感上特に不足感は感じない。

 湿度感はややからっとしている。からっ風のように乾いた質感で、拘泥するようなところがなく、達観したかのような音である。こちらの思い入れや波立つような感情をさらっと受け流し、音楽を素のまま、直に差出すかのような感じである。

 CHATSWORTHは、郵便配達夫のように黙々と自分の仕事をこなす。彼の手によってもたらされた郵便物が、それを目にする人に与える影響には無関心に、郵便物を配達し続ける。

 ヘンデルのメサイアから4曲ほど聴かせていただき、さらにハイドンの交響曲第90番の第1楽章と第2楽章を聴かせていただいた。どちらも拘泥感のないすっきりとした味わいである。

 「GOLDも聴いてみますか?」と諏訪さんは訊かれたので「是非、聴いてみたいです・・・」と答えた。

 すると、諏訪さんはCHATSWORTHを入れ替えてくれた。軽いスピーカーなのでほんの数分の作業である。CORNER CHATSWORTHの3本の足の位置にはマークが付けられていた。そのマークに合わせて、位置を決める。

 さて、見た目の変更点はほとんどない。デザインは全く同一である。色合いはGOLDの入っているキャビネットのほうが若干色が薄めである。

 「テレマンのオーボエ協奏曲でも聴いてみますか?」「良いですね・・・ハインツ・ホリガーですか・・・PHILIPSの音は好みなんです」

 レコードのジャケットの表裏を見ながら、「どうなんだろう・・・GOLDになると、色彩感はアップするのであろうか・・・」と思った。

 同一のキャビネットであるので、違いはユニットのみ。もちろん駆動するシステムはTHORENS TD-124、Marantz7、Marantz8Bと同一である。

 出てきたGOLDの音は、明らかに音の温度感が上がっている。それと同時に湿度も上がった。からっ風が春風になったかのようである。

 郵便配達夫が、宅配便の配達人になった。郵便配達夫は普通ベルを鳴らさない。ハンコも要求しない。郵便物をポストに入れるだけである。しかし、宅配便の配達人はベルを鳴らす。「ここにハンコをお願いします・・・」と要求してくる。

 どちらがいいかは人それぞれであろう。私自身の個人的な好みで言うとGOLDの温度感により惹かれるものがあるのは、事実である。

 その後、ベートーベンのチェロソナタ第3番を聴いた。しっとりとした音の手触りである。丁寧な手作業によるレース細工を思わせる。

 リビングルームには1時間半ほど居たのであろうか、「2階の洋間には、RECTANGULARのCHATSWORTHがあります。taoさんがお持ちのものと同じキャビネットです。そちらも聴いてみましょう・・・」ということになり、2階に移動した。
 
 階段は180度に折り返すタイプのもので、折り返すところには小さめの窓が取り付けてある。ルーバー窓である。オペレータハンドルが右斜め30度くらいのところで停止していた。その窓からは乾いた明るい光が漏れ入ってきていた。

2011/1/30

1783:からっ風  

 埼玉県深谷市は埼玉県の北部の、利根川と荒川に挟まれた地域に位置している。市の人口は約15万人。気候は内陸的であり、冬は寒いうえ、乾燥した北風が吹き、体感気温を一気に引き下げる。

 今日も晴天であった。冬のこの時期、朝には霜がびっしりと地面を覆う。その霜が、雲ひとつない空に浮かぶ太陽の熱により、徐々に緩んでいく。風景は郊外の地方都市特有の
のどかさに溢れていた。

 花園ICを降りて、車で15分ほど走ったところに諏訪さんのお宅はあった。築年数は40年ほどであろうか。高度成長期を支えた工業化住宅が広めに土地にゆったりと立っている。

 当初は真っ白な色合いであったであろうその建物も40年の時間の経過によりくすんだ色合いに変わっている。積み木を短時間で積み上げたようなその住宅で、諏訪さんは二人の子供を育て上げ、2年前に定年で会社を退職して、奥さんと二人っきりで暮らしている。

 諏訪さんのリスニングルームは1階のリビングルームと2階の洋間の二つ。リビングルームにはCORNER CHATSWORTHが2台置かれている。2階の洋間にはRECTANGLAR CHATSWORTHが2台置かれている。

 1階のシステムはTHORENS TD-124、Marantz 7、Marantz8Bというラインナップ。部屋のコーナーに設置されたCHATSWORTHはほっそりとしている。優雅な佇まいである。リビングルームに置かれた皮製のソファに座って聴く。

 「今はREDの入ったCHATSWORTHをセットしています。あちらに置いてあるほうにはGOLDが入っています。」どちらのキャビネットの色合いも明るめの茶色である。三本足が華奢なイメージを醸し出している。

 1階のリビングルームの広さは10畳ほどであろうか、今の住宅と違い、昔は部屋の機能ごとにそれぞれ部屋を独立させる構造となっている場合が多い。隣はダイニングルームになっているのであるがそのためには扉を開けて移動する。

 リビングルームには大きな書棚が三つ壁に並んでいる。そのうちの一つにレコードが収納されている。部屋は隅々まで几帳面に整理されていて、雑然とした要素がまったくない。

 「何を聴かれますか?」「普段は、ビバルディ、ヘンデル、ハイドンなどをよく聴いています。」「バロックが好きなんですね・・・」「ブルックナーやマーラーも聴くのですが、そういったものはCDで聴くことが多いのです。」「では、ヘンデルのメサイアから何曲か聴いてみますか・・・」

 いつくしむようにレコードをジャケットから出して、THORENS TD-124に載せる。SMEの古めのトーンアームにORTOFONのカートリッジが装着されている。ざらざらとした針音の後、ゆったりとした弦楽合奏の音が紡ぎだされた。

 「REDの入ったCHATSWORTHって、いったいどんな音がするのであろう・・・我が家のCORNER LANCASTERと比べてどうなんだろう・・・」そんなことを思いながらその音に耳を傾けた。

2011/1/29

1782:二つのアルテック  

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 私はいわゆるビンテージに属するスピーカーとアンプを使っている。しかし、ビンテージ・オーディオ全般に詳しいわけではない。ごく一部しか知らないのである。

 ビンテージ・オーディオにおいて重要な位置を占めるアルテックについては、ほとんど何も知らない。もちろん、オーディオ雑誌でその雄姿は見かけたことはあるが、型番やその製品いついては、極く一部の情報しか有していない。

 今日は、そのアルテックの二つのスピーカーを聴く経験ができた。写真に写っている外側の黒いスピーカーは3ウェイでいかにもアルテックという姿形をしている。これに真ん中の巨大なサブウーファーを加えて4ウェイ構成となっている。ユニットごとにマルチアンプ駆動される大掛かりなシステムである。こちら「黒」と呼ぶことにしよう。

 もう1セットは、内側の茶色のスピーカー。2ウェイ同軸でシンプルな構成。キャビネットの上に乗っているスーパートィーターは接続されていない。こちらは「茶」としよう。

 場所はFさんが主催するオーディオ工房。「QUADを聴く会」でご一緒するメンバーが集まって新年会を行ったのである。

 二つのアルテックは結構異なった性格の持ち主であった。外側の「黒」はゆったりとした鳴り様。低域は量感豊かでピラミッドバランス。どっしりとした安定感があり、音楽がたおやかに流れる。

 私自身のアルテックのイメージにピッタリの音である。なんだか「これぞ、アルテック」といった定番感があり、安心感がある。

 「まずは、構えやすい。そして安心感がある・・・」ゴルフのドライバーを構えた時には、その形状によって構えやすいものと少々違和感があるものがあるが、この「黒」はあきらかに前者である。

 そして、「茶」。こちらは、同軸2ウェイらしい、正確な音の出方である。ゆったりとした音の出方ではなく、きっちりとした几帳面さを感じさせる。アルテックというメーカーに対する先入観とは少しばかり食い違う音の出方である。シャープでスピーディーとすら感じられる。

 同じメーカーであっても、やはり違うものである。わが家のTANNOYも同様である。2階のCHATSWORTHと1階のCORNER LANCASTERは性格は違う。

 「黒」と「茶」・・・Fさんの二つのアルテック、どちらも高いレベルの音なのであるが、個人的な好みからすると「黒」である。ゆったりとした音の出方は、音楽を楽しめる。「茶」はモニター系。短時間に集中して聴くならこちらか・・・

2011/1/28

1781:クリスマスローズ  

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 クリスマスローズはうつむき加減に咲く。種類もたくさんあるようで、花の形や色合いも様々である。この花が大好きで、庭にいくつか植わっている。毎年その種類ごとの色合いの花を咲かせる。

 寒い時期に咲く花は貴重である。特に今年のような本格的な寒さの冬に、庭の一角で色づいているクリスマスローズは心を幾分暖かくしてくれる。そして、この花はそのうつむき加減の容姿のせいか、華麗、豪華といった雰囲気ではなく、控えめで密やかですらある。

 「クリスマスローズのような音が欲しい・・・」その花を眺めながら心に思う。真正面を向いて、「綺麗でしょう・・・」と訴えかけるような音ではないものが欲しい。うつむき加減に庭の片隅で咲いている・・・よく見ると可憐で素敵な花である・・・そんな音が・・・

 1階のCORNER LANCASTERは、それほど大きなスピーカーではない。威圧感というものはまったくない。部屋のコーナーにすっぽりと納めてしまえば、その存在感は緩やかに部屋に溶け込んでいく。そんな容姿がとても好きである。

 しかし、現状は部屋のコーナーにすっぽりと納まっているわけではない。ずりずりと側壁から離れ、本来の定位置からは異なったポジションをとっている。

 音のほうは、そのおかげで当初よりは良くなった。しかし、花がうつむき加減ではない。結構こちらを見据えてくる。その可憐な容姿とは裏腹に、内臓されているモニター・レッドの性格が前面に出てくる。

 そこで、内振り角度を強め、部屋の吸音率もさらに下げる方向での対策を進めることにしている。この1階のリスニングルームで目指しているのは、小ホールの7列目ぐらいの音。2階は大ホールの15列目であるのでかなり違う。

 小ホールであるので、かけるレコードは室内楽曲や器楽曲が中心。けっしてマーラーやブルックナーはかけない。それは2階の担当である。

 小ホールの7列目なので、それほど空間的な広がり感は要らないのである。ではあるが、現状ではまだ音が前に出すぎであり、間接音をもう少し増やしたい。そこで内振り角度を調整し、部屋の吸音部分をシナ合板で覆って、吸音率を下げることにする予定である。

 この作戦で、クリスマスローズが1階のリスニングルームでも咲いてくれると良いのであるが・・・そして、その花はしっかりとうつむいていてほしい。 

2011/1/27

1780:ジェットストリーム  

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 箸にも棒にもかからなかったCORNER LANCASTERであったが、設置位置をコーナーキャビネットという概念を逸脱したところで調整し始めたところ、可能性が垣間見えてきた。

 まあ、とりあえず箸か棒にはどうにかこうにかひっかかるようになってきた。しかし、好みの音の方向性からすると、もう少し響き成分を多めに盛りたい。直接音と間接音の比率を逆転させたい。

 そこで取り出したのが、SOUND HANTER製のカエデボードである。これはカエデの集成材のボードである。とても軽く、値段も1枚13,500円と、この手のボードとしては比較的良心的な価格である。

 これは響き成分をのっけてくれる。解像度を甘めにしてくれるのである。直接音を引っ込めて、ブレンド音にしてくれる。わが家では登場回数が多い。2階のCHATSWORTHの足元を飾っているのも、このボードであり、特注のぴったりサイズでLINN CD12を格調高く持ち上げているのもこれである。

 CORER LANCASTERをこのボードに乗っけて、さらにスピーカーとボードの間には、屋久杉製の木片をスペーサーとして挟む。この木片は本来の用途は箸置きである。その証拠に真ん中辺に丸い窪みがあり、いざとなれば、その窪みに箸を休ませることができる構造となっている。1個120円と価格も安い。阿佐ヶ谷の木工所で見つけた。

 さて、その効果の程であるが、やはり良い具合である。ふわ〜と音が広がる感がある。響きの滞空時間が延びる。城達也の「ジェット・ストリーム」を思わせるような滞空時間というほどには、さすがに伸びないが、音にストレスがなくなる感じである。

 しばらくは、これで落ち着くまで待とう。今後はチューバホーンさんから色々教わった「トントン一発」マニュアルに基づいて、微妙なセッティング作戦を実践することにしよう。さらに日曜日にはCHATSWORTH同盟会の会長宅訪問も控えている。まだまだ、紆余曲折はあるかもしれない。

2011/1/26

1779:尻尾  

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 尻尾をつかんだような気がした。いやもっと正確に言うなら尻尾らしきものに手が触れた。尻尾がどうかはまだ不明である。しかし、尻尾であってほしいし、手触りは確かに尻尾である。

 残念ながらしっかりと手で握ったわけではないので、その尻尾を手繰り寄せようとしても上手くいかない。今は、その尻尾らしき手触りを感知するだけである。

 その尻尾の主はTANNOY CORNER LANCASTER(12 RED)である。導入後1ケ月、箸にも棒にもかからない日々が続いていた。さすがに、少々めげてきた。移植手術の可能性も探ろうかと思案していたのである。

 CORNER LANCASTERはコーナーキャビネットである。それゆえ、当然部屋の両コーナーに設置した。しかし、その音は思わしくない。側面の壁から少々離した。少々良くなった。しかし、スィートスポットからはずれていた。どうもピントが合わない。

 しかし、既に側面の壁よりも20cmほど離れている。これ以上離すとコーナーキャビネットの意味がない・・・そんな風に思えた。

 「アンプを替えるべきであろうか?Marantz、LEAKといった銘品の名が頭に浮かぶ・・・いやいや、QUADはわが心の支え、これを替えるわけにはいかない。ユニットをGOLDに替えるべきか・・・いや、それよりも元のとおりCHATSWORTHにすべきか・・・」

 そうなふうに思い、CORNER LANCASTERの美しい肢体を眺めていた。マジカル・アイの画像を眺めてもまったく立体的な画像が出てこない時のようなじれったい気分であった。

 そして、「思い切ってやってみよう・・・動かしてみよう・・・」という気になった。側面の壁から大きく離した。その設置方法はもはやコーナーキャビネットのそれとは言えないほど自由気ままな感じとなった。そのとき、尻尾らしきものに手が触れた・・・

 マジカル・アイの図面に立体的な模様が見えたような気がした。音の質感に微妙な厚みと立体感がでてきたような気が・・・音の硬さにほぐれ感が・・・う〜ん、待てよ・・・これはあくまで希望的観測か・・・それともCORNER LANCASTERの尻尾なのか・・・しばらく検証の時間が必要のようである。 

2011/1/25

1778:乙  

 CHATSWORTH同盟会の会長である諏訪さんからメールが来た。諏訪さんからは、昨年の年末に、もしご要望でしたらモニターゴールドの入ったRECTANGLAR CHATSWORTHを譲っていただける、との話をいただいた。しかし、結局勢いでCORNER LANCASTERを購入し、そのお話は丁重にお断りしたのであった。

 「ブログ楽しく拝見しております。REDの入ったCORNER LANCASTERには少々ご苦労されていらっしゃるようですね。REDはどちらかというとしゃきっとしたキレの良さが身上のユニットです。ジャズを聴く方にはぴったりだと思うんですが、クラシックの場合少しばかり音が硬くなる傾向があるかもしれません。使いこなしである程度は緩和されますが、基本の性格はやはり残ります。GOLDのほうがお気に入りであれば、ユニット交換すればいかがですか?12インチのGOLDはユニットだけであればそれほど高価ではありません。REDのほうが高価です。同じ12インチであれば、ユニット交換の手間は大してかかりません。」

 ここまで読んで、「あっ・・・そうか・・・」と思った。ビンテージ・ショップにはユニットのみとかキャビネットのみが、個々に販売されていることが多い。箱とユニットを入れ替えたり、様々に組み合わせて楽しむのも、ビンテージ・スピーカーの楽しみの一つのなのである。

 REDを外して、GOLDを移植する・・・もしGOLDのほうが気に入ったならREDのユニットのみを売るという手もある。REDのほうが市場では高く取引されるので、それなりの価格で売却できる可能性もある。

 「我が家にはRECTANGLAR CHATSWORTH GOLDが二つありますので、一つのユニットをお譲りしてもいいです。もちろんキャビネットも一緒でもかまいません。12インチのGOLDをCORMER LANCASTERとCHATSWORTHという個性的な二つのキャビネットで楽しむなんて、乙だと思いますよ。季節によって、着替えるようにキャビネットを替えることもできます。」

 ここまでメールを読み進んで、ぐぐっときた。「そうか・・・そういった楽しみ方もできるのか・・・TANNOYは後ろのバッフルはネジで留められているだけである。ユニット交換はそれほど手間ではない・・・」

 諏訪さんのメールは次の一文で締めくくられていた。「もしよかったら、一度我が家へおいでになりませんか。4種類のCHATSWORTHがあるので、きっと面白い体験ができるでしょう。埼玉県の深谷市という田舎に暮らしています。taoさんのところからなら車で1時間ほどでしょう。関越道の花園ICからすぐです。」

 「これは、断る理由が見つからない・・・」すぐさま返信メールを送った。「是非お伺いさせてください・・・花園ICなら何度もゴルフの時に降りたことがあります。今月末の日曜日などいかがでしょうか?」

2011/1/24

1777:狭量な心  

 ウィークエンドが終わり、週の始まりの月曜日の朝というのは、少々気が重いものである。Boom Town Rats「I don't like mondays」ではないが、月曜日の朝というのは多くの人にとって気が滅入りがちなものである。それは私も同様である。

 しかし、月曜日の朝に唯一楽しみにしていることがる。車での通勤の途中に聞くNHK FMの「気ままにクラシック」である。これは7時20分から始まる。笑福亭笑瓶と幸田浩子とのかけあいが面白く、思わずハンドルを握りながら、ニヤニヤしてしまう。

 この番組にはいくつかの面白いコーナーがあるが、その一つが「きまくらドン!」である。これは「イントロドン!」のようなもの。クラシックの名曲の冒頭部を一瞬流して曲名を当てるというもの。これがなかなか難しい。

 笑福亭笑瓶の「きまくらドン!」という掛け声とともに、1秒ほど冒頭部の音が流れる。その音を聴いて、その後の旋律が出てくる曲もあれば、まったく思い浮かばない曲もある。幅広くクラシック音楽を聴いている方にとっては、それほど難しくはないのもかもしれない。

 私の場合クラシックを幅広く聴いているわけではない。好きな曲を繰り返し聴く癖があり、あまり横に広がらないのである。

 横に広がらないという点に関しては、オーディオに関しても同様である。せっかく二つのオーディオセットがあるのに、結局同じような機器構成となっている。入り口がLINN、増幅部がQUAD、出口がTANNOYである。

 どうせなら1階はビンテージ、2階はバリバリのハイエンド・・・なんていう構成であれば変化の幅が大きく、面白みがあるというもの・・・

 昨年の年末に1階で鳴らしていたTANNOY CHATSWORTHを2階へ移動して、1階の空席には同じTANNOYのCORNER LANCASTERを招きいれた。

 同じTANNOY、どちらもビンテージ・・・搭載されているユニットの年代が異なるが、大きな括りでは同じような音がするはず・・・であるが、そういうわけには結構いかない。

 私の狭いスウィート・スポットになかなか新しいスピーカーが納まってくれないのである。これは狭量な私の人間性そのもののあらわれなのかもしれない。

2011/1/23

1776:後悔  

 今日は我が家でのOFF会であった。hijiyanさんとたくみ@深川さんとがわざわざ来てくれたのである。しかし、不安というか、OFF会をすべきではないのではないか・・・という思いが実はあった。

 お二人はそれぞれハイエンドの高性能なスピーカーをお使いである。わが家の骨董品とはわけが違う。しかし、それはそれほど気にならない。好みや目指す音が違うのであるから、使用する機器が違うのは当然であるからである。

 問題は自分好みの音はこういうものです、と胸を張っていえる状態では、今はないことである。2階のCHATSWORTHは良いのである。しっかりとこれが自分の好みの音です、と言える。もちろん聴く人によっては「けっ・・・これで・・・」といった感想も持たれるかもしれないが、それでも自分の好きな音はこうです、と言える。

 1階のCORNER LANCASTERがいけないのである。あれやこれややっているのであるが、どうしても自分好みの音楽を奏でてくれないのである。1階でCHATSWORTHを鳴らしていたときの方がよほど自分好みであった。

 導入して1ケ月ほど・・・レイアウトの変更を含め試行錯誤は数多くトライしてみた。残念ながらオーディオの調整能力に関しては相変わらず低いレベルのままなので、ちょっと良い方向にむかったかな・・・と思うと、それは思い過ごしだったり、といったことの繰り返しに終始しているのである。

 こんなことなら、CHATSWORTH同盟会の諏訪会長のご好意に甘えて、もう1台CHATSWORTHを導入すべきであった、と後悔している。「そんな状態でOFF会をしても・・・」という思いが心の片隅にあった。

 まずは、当然2階にお二人をご案内した。CHATSWORTHでブルックナーの交響曲第5番第2楽章とベルリオーズ幻想交響曲第3楽章を聴いていただき、さらにクラシックだけでは退屈されると思い、Pedro AznarとDiane Birchをかけた。

 CHATSWORTHはいつもどおり伸び伸びとしたくったくのない表情を見せてくれた。ほっとした。「これでお終いです・・・1階は開店休業状態なのです・・・」という言葉が喉まで出かかったのである。しかし、遠路はるばるやってきていただいたのに、それもなんだかな〜という感じになる。

 ということで、1階のCORNER LANCASTERも聴いていただくことにした。やはり、自分の好みとはずいぶん違った音が出てくる。だんだん気が滅入ってくる。「やはり2階だけにすべきであった・・・」と後悔したが、時既に遅しである。お二人には申し訳ないことをした。映画「MEN IN BLACK」に出てくる記憶を消す装置を使って、お二人の1階の音の記憶を消したいと、心底思った。

2011/1/22

1775:受難  

 最初に通された待合室に私は居た。しばらくして、着替え終えた「寧々ちゃん」が、霊能者の女性にともなわれてやってきて、テーブルの席に着いた。「寧々ちゃん」の顔色は、うっすらと赤みを帯びていて、その表情からは硬さが消えていた。

 「大変な思いをされましたね・・・この4年ほどの間に苦しいことも多かったと思います・・・」霊能者は静かな口調で話しはじめた。

 「悲しみは悲しみをひきつけ、怒りは怒りをひきつけ、優しさは優しさをひきつけます。今回は○○さんが、入院中に感じられていた悲しみや絶望感が、霊をひきつけたようです。」

 その言葉を聞いて、隣に座っていた「寧々ちゃん」は、はらはらと涙を流した。その様子を霊能者は優しい眼差しで見つめながら続けた。

 「でも、この体験は必要なことだったのかもしれません。○○さんの人生、それまでは強い挫折感を味わうような経験はおそらくなかったと思います。幸せな結婚をし、子供にも恵まれ・・・そんななかでの急な病気、手術、入院・・・そういったものに強い憤りも感じられたでしょう・・・」

 「望むことのなかった体験でしょうが、そういった経験が人生に奥行を与えるような気がします。人生を魂の修養の場と捉えるなら、辛く悲しい経験も必要です。さらに今回は、自分では実際には経験しなかった、絶望のあまり自殺した女性の感情も重ね合わせて経験したのですから・・・」

 私は、そこまで聞いて「自殺した女性は病気を苦にされて自ら命を絶ったのですか?」と訊いた。

 「ええ、そうです。20代後半の女性で、未婚でした。○○さんと同じ病気です。子供が産めない体になったことに対して強い絶望感を抱いたようです。入院時に服用した薬の副作用で精神状態がさらに不安定になって、理性ではその感情を支えきれなくなったようです。でも、そういった行動をとったことを、とても悔やんでいました。」

 死を選択せざる得ないような絶望感を味わったことはない・・・もちろん多少の挫折感なら数多く経験しているが・・・死を選ぶような苦しみとは、いったいどんなものなのであろうか・・・

 「今回の経験を、単に辛いもの、嫌なもの、としてのみ記憶するのではなく、難しいことですが、今後の人生に役立ててください・・・」15分ほどの面談の最後に、霊能者の方は話された。

 その協会の入っているビルを後にして、五反田の駅に向かった。来るときと同じ道を逆に歩いた。「寧々ちゃん」の顔色は良くなり、表情は穏やかである。「今日は無理なお願いをきいていただき、ありがとうござました。」・・・彼女の言葉にもすっきりとした晴れやかさが感じられた。

 目黒川にかかる橋を渡るとき、無意識に川の表情を眺めた。黒々とした水の表面には大小のうねりが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していた。その様子を眺めていた時、ふと「受難」という言葉が脳裏に浮かんだ。「そうだ、ハイドンの交響曲第49番のタイトルは『受難』であった・・・」そう、思いついた。その瞬間何故か知らず、涙が流れた。



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