2010/9/2

1633:コウテケロ  

 月が変わっても、日中の暑さは一向に変化がない。じりじりと照りつける太陽の光は人々から急速に生気を奪い取っていく。電車に乗っていても、多くの人が忘我のかなたに駆け去っているような状態である。

 もちろん人並みに夏バテしている私も、容易に忘我の淵を転がり落ちる。まさに「どんぐりころころ、どんぐりこ・・・おいたをしてはいけませぬ〜」といった感じでシータ波を盛大に発信する羽目に陥るのである・・・

 「このレコードプレーヤー」は時折私の脳内スクリーンを横切る。ワイドスクリーンにリニューアルされた脳内スクリーンの右端から進入してきて、左端へぬけていったり、右斜め上から進入して左斜め下に抜けていったりするのである。

 しかもその動きが独特である。見事なまでの足捌きにより蟹歩きを見せ付けるのである。サササ・・・という乾いた足音が軽やかに流れる。

 気にしないようにしようと思っても、その微妙な動向にはついつい視線が奪われる。ひっきりなしというわけではないのであるが、ふっと気を抜いて無防備な精神的空白を作ってしまうと、すすすっとしのびこんでくるのである。

 最初のうちは、単独行動であった「このレコードプレーヤー」は、徐々にその行動をエスカレートしていく。2足歩行ロボットとして世界一有名なASIMOを引き連れてきたのである。ASIMOを先導するような形で「このレコードプレーヤー」は蟹歩きする。

 ASIMOの幾分危なっかしい足取りを引っ張るよに「このレコードプレーヤー」はその見事なステップを披瀝する。「少々調子にのっているな・・・」と思いながらもついついその錯綜する移動ラインを目で追った。

 そして、最終的には驚くような演出をもってその示威行為をグレードアップしてきた。なんと嵐電の幻の名車「モボ501型」の屋根の上に乗っかって登場したのである。これにはさすがの私も度肝を抜かれた。

 しかも、実際の大きさの比率からすると明らかに大きなバランスで「このレコードプレーヤー」は「モボ501型」の屋根に乗っている。

 「モボ501型」の大きさを10とするならば、「このレコードプレーヤー」は2なのである。約分すると1/5ということになる。

 さらに忘我の境地にあるときにのみ機能する私の目のズームアップ機能を活用すると「このレコードプレーヤー」に備わるカーボン製のトーンアームの先端には、SHELTER 501の黒い姿が認知できた。

 「モボ501型」に「SHELTER 501」、さらに両者の大きさの比率は5:1。緻密に計算された演出に関心しきりである。

 「このレコードプレーヤ」の巧みな技には、シータ波のやや平坦な脳波状態であっても機敏に反応せざる得ない。

 最後のフィナーレでは「このレコードプレーヤー」は歌まで歌った。「カエルの歌が聞こえてくるよ・・・ケロ・ケロ・ケロ・ケロ・ケロケロケロ・コウテケロ・・・」その怒涛の展開に開いた口が塞がらなかった。



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