2009/12/21

1377:イカ墨パエリア  

 昨日はNaruさんとご一緒にWさんのお宅を訪問した。Wさんのお宅には現在3台のレコードプレーヤーが稼動している。LINN、SPIRAL GROOVE、Michell Engineeringという著名なメーカーの素晴らしい製品が3台並んでいる様は壮観であった。そのうち2台のレコードプレーヤを聴いた。

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 LINN LP-12である。スリットの入った古いデザインであるが新品である。限定復刻版として最近販売されたものである。電源はMAJIK。アームはEKOS。このEKOSはつい最近まで我が家で活躍していた初期型である。

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 SPIRAL GROOVE System SG2 Phantomである。見るからに高性能な精緻さが溢れている。SG1はシルバーであるが、SG2はブラック。精悍さではSG2のほうが上かも。SPIRAL GROOVEの前身はIMMEDIAである。我が家のIMMEDIA RPM Revolutionと相通じる意匠がところどころに散見される。

 LP-12にはHYPER EMINENTが、SG2にはP-1Gが装着されていた。LP-12とSG2は、ある意味対照的なレコードプレーヤーである。そして、その音も・・・

 LP-12は情感豊かで流麗である。情報量や空間表現において多少の限定はあったにせよその豊かな情感表現はとても説得力がある。

 SG-2はSN比や情報量においてLP-12をはるかに凌駕する。しかし、LP-12よりも良いのかというとそうでもないところがオーディオの奥深いところというか、良く分からないところ。

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 BARBARAの声が一番心にぐっとくるのは明らかにLP-12であった。この美しくも物憂げな視線が音からはっきりと感じ取れるのである。

 KEELも付いていない、EKOSはSEバージョンではない。電源はMAJIK、LINGOでもない。素のLP-12であるが、その良さはしっかりとある。逆にSEバージョンにより失われたものもあるのではないかと、欲をかいて一気呵成にSEバージョンに移行してしまった私は心の奥底で感じてしまった。

 SG-2も素晴らしい。PLAYBACK DESIGNも素晴らしい。しかし、LP-12でBARBARAを聴いてしまうと、それらの影はすっかり薄くなってしまった。

 その後、Wさんに連れられてスペインレストランへ行った。とても美味な料理が次から次でてきたが、とりを務めた「イカ墨パエリア」は素晴らしかった。BARBARAのレコードジャケットのように黒く、味わい深かった。

2009/12/20

1376:コンポジション  

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 モンドリアンの黒は空間をしっかりと仕切る。そして独特なリズム感をもたらし、赤や青、黄色といった原色のエネルギーをしっかりと区画する。

 その直線基調の造形美は知的であると同時にストイックな印象を受ける。その外面は冷たい。微笑み一つ無いような表情ではあるが、その実その内面は実に豊かなニュアンスを内包している。

 Wさんのお宅の黒のAnat Referenceはモンドリアンの黒のようにクールで知的である。しかし、その外観とは裏腹に実に豊かな音楽性を聴かせてくれる。

 Maria Bethaniaの最新作を最初に聴かせていただいたが、その声は1972年にでた「Drama」で聴いた声と同じように熱く憂いがちに湿っている。あれから30年以上経っているというのに、その声の質感は変わっていない。

 Anat Referenceは機能性を突き詰めたかのような姿をしているがMaria Bethaniaの褐色の声を質感豊かに再現してくれる。

 CDプレーヤーはPLAYBACK DESIGN、プリアンプはLINDEMANN、パワーアンプはHEGELというラインナップであるが、その全てに共通するのは黒が効果的に配分されているということ。

 Anat Referenceまで見事につながる黒のラインが生命感溢れる音楽を伝達しているようである。全ての機器が有機的につながりけっして音楽をやせ細らせない。その伝達効率の高さは特質ものである。太く豊かな音はやせぎすな繊細さをもたらすことはなく、リスニングルームに置かれたコルビジェのソファの沈み込み具合と連動するかのように音楽をぎゅうと心に沈みこませる。

 隣で聴いていたNaruさんも腕組みをしながら、真剣な眼差しで感じ入っているようであった。さらにその横にはWさんが飼われている猫が椅子の上でCの字になって寝転んでいたのであるが、その丸まり方が実に心地よさそうであった。

 アナログも聴かせていただいた。LINN LP-12、SPIRAL GROOVE System SG2 Phantomという蒼々たるメンバーである。そちらの印象は明日にでも・・・

2009/12/19

1375:暖機運転  

 12月ってこんなに寒かったのであろうか?という疑問がわきあがってくるようなここ数日の寒さである。もちろん12月は冬である。冬であるが1月や2月に比べたら比較的寒くはないはずであるが、今年は違うようである。またここ数年の暖冬傾向に体が慣れてしまったからであろうか、急激な寒波の到来が体にこたえる。

 オーディオにとって冬は悪い季節ではない。空気が乾燥していて凛としている。そういう空気の中でのほうが音がすがすがしい。

 しかし、今日はオーディオにとって真冬なみの寒さは良いことばかりでないということが分かる体験をすることとなった。

 今日の午前中、2階のESLルームででレコードを聴いていた時のことである。どうも音程がおかしいのである。ちょうどオルガンのレコードを聴いていたのであるが、その持続音が微妙に揺れる。

 これは明らかに回転ムラである。すぐさまストロボでチェックしてみると規定の回転スピードよりも若干遅いうえ、ムラが生じている。

 IMMEDIA RPM Revolutionは中古で購入したもの。製品自体は結構古いものである。「モーターであろうか?それともベルトが限界点に達したか・・・」と思いながら、モーター部についているスピード調整つまみを極細のマイナスドライバーで微調整。

 しかし、時間がたつにつれ回転は安定してきた。「そうか、この寒さのせいか・・・」という気がしてきた。モーターもベルトもかなり使い込まれたものであるので、十分な時間をかけて暖機運転してからでないと本来の性能を発揮できないようなのである。

 先日チューバホーンさんのお宅で、XERXES20のベルトを新品に換えると音がぐんと俊敏で広がり感のあるものに変わったのを体験した。RPM Revolutionのベルトも新品に換えるべきかもしれない。

 モーターのほうもオーバーホールした方が良いのかもしれない。スキャンテック販売は今でもIMMEDIAのサポートをしてくれるのであろうか?

 ある程度の時間が経過するとモーター部に手を当てると暖かくなっている。この状態になると回転ムラはすっかり治まって磐石感溢れる演奏が繰り広げられた。冬はレコードに針を落とす前にモーターをしっかりと暖めておく必要があるようである。

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2009/12/18

1374:Blue  

 この季節になると近所でもちらほらとイルミネーションがきらめいている。冬の風物詩的な存在となった感のあるイルミネーションであるが、派手に飾り付ける家は減ってきたようである。

 不景気の影響であろうか・・・それともエコに関する意識の高まりのせいであろうか・・・確かに派手にすると電気代が結構大変なはずである。

 我が家の子供達は「うちもやろうよ・・・」とせっつくが、頑としてイルミネーションはしない。どうもあの手のものは気に入らないのである。あまりにも子供じみている、とついつい思ってしまうのである。

 さてちらほらと目に付くイルミネーションであるが、最近その色合いは何故かブルーが多い。寒いこの時期にわざわざブルーのイルミネーションとは・・・見ている者はさらに寒くなってしまう。

 確かにブルーのイルミネーションは一種神秘的ではあるが、寒色なので多用されると寒々しい。できればオレンジにして欲しいものだと、QUADのアンプを見ていると感じるのである。

 最近巷に人気の「ブルー」であるが、ドイツではブル−は「エコ」や「環境」のイメージカラーのようである。

 Mercedes-BenzからE250 CGI BlueEFFICIENCYが発売された。直噴エンジン+ターボの活用で小排気量で十分なパワーとトルクを得る、という手法はフォルクス・ワーゲンが先行し、大きな成功を収めた。ここにきて、Mercedes-Benzもその手法を取り入れて、直噴+ターボの効果を活用してエンジンを一気にダウンサイジング。効率的でエコなモデルを出してきた。

 Eセグメントを代表するMercedes-Benz Eクラスに1800CCの4気筒エンジンを積む。このこと自体が結構画期的で、知的ですらある。

 消費者のエコ意識の高まりに対して、国産車は「ハイブリッド」一辺倒であるが、ドイツ車はより現実的な手法で対処してくるようである。

 このE250 CGI BlueEFFICIENCYは結構日本で成功するであろう。この不景気でEクラスの出足は従来モデルに比べかなりゆっくり。そのゆっくりな足取りがこの新商品の投入によりぐんと速くなるような気がする。もしかしたら日本ではこのモデルがEクラスの一番人気になるかもしれない。

2009/12/17

1373:小島屋  

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 先週の記事で「讃岐うどん」について書いた。その麺は、もっちとした弾力があり、色が白く、喉越しがつるっとして美味である。

 一方北多摩地区には「武蔵野うどん」が古くから定着している。地粉を使ったコシの強めの麺で、色は真っ白ではなくやや茶色がかっている。ゆでた麺を冷水でしめてざるにもり、醤油と鰹だしベースの暖かいつけ汁につけて食べることが多い。

 今日の昼は東村山市の「小島屋」で「肉汁うどん」を食べた。これぞ「武蔵野うどん」といった感じのうどんである。

 店は農家の広い庭先に建てられた「掘っ立て小屋」といった風情。店の内部も雑然としてとても鄙びている。「鄙びた風情」にも2種類ある。「侘び・寂び」に通じるような上品な鄙び方もあるが、素のまままったく化粧気のない鄙び方もある。

 「小島屋」の場合は明らかに後者である。店は農家のおばさんが数名で切り盛りしている。お客がいてもガチャガチャと世間話をしている。

 そして、その話題も「○○さんちの白菜漬けはとても美味しい。どうやって漬けているんだろうね・・・何か別なものを入れているはずだけど、いったいなんだろうね・・・」といった鄙びた会話を延々繰り返しているのである。そこには「風情」は無い。

 「風情」は無いが、何十年と変わっていない、そしてこれからも変わらないであろう「生活」がある。それは手垢にまみれているが、とても懐かしい感じがする「生活」である。

 それは「白菜漬け」であり、「割烹着」であり、「庭先での焚き火」であり、「古びた石油ストーブ」であるのかもしれない。そしてその象徴的な存在が「武蔵野うどん」である。

 「武蔵野うどん」は品良く食べてはいけない。ずるずると口に放り込むように食べる。そのために要する時間は短い。左脇にあった石油ストーブに体の左側だけを暖めてもらいながら食べる「武蔵野うどん」はいつもと変わらない味であった。そのうどんが胃に納まるにつれて、心持ちも穏やかになるのを感じた。

2009/12/16

1372:虎子  

 『虎穴に入らずんば虎子を得ず』・・・・「危険を冒さなければ功名は立てられないことのたとえ」(広辞苑)

 つまり、何かことをなそうと思ったらリスクを冒す覚悟が必要とのこと。確かに宝くじに当たるためにも、宝くじ売り場で数千円を払わなければならない。宝くじ以外の方法で経済的に成功するためには、それなりの努力と才覚、そして危険を冒す度量が必要なのであろう。

 しかし、この諺を耳にしてふとあたまのか片隅に浮かぶことは・・・「虎子」ってそんなに価値があるのかという疑問である。虎穴に入るには、当然危険が伴う。子育て中の母虎は相当気が立っている。不用意に近づけば襲われてしまう。そんな生命の危険を賭してまで得る価値があるのであろうか?

 食べても美味しいわけでもなく、ペットとして飼うとしても将来大きくなったらその始末に結構困るはず。虎子を得ることは周囲から賞賛される行為だったのであろうか。それとも何かしら経済的に大きなメリットが得られたのであろうか。宮廷に売りつけると大金が入ったとかそういうことがあったのかもしれない。

 月に1,2度コンサートホールに出向く。コンサートホールで音楽を聴きながら、ときどき「オーディオに相当な大金をつぎ込んだが、無駄金だったのでは・・・?」という疑問が頭をもたげるときがある。

 外国の著名なオーケストラのコンサートになるとそのチケット代は数万円。家に居ながらにして著名なオーケストラの名演をオーディオで聴けると思えば、その費用対効果は年数を重ねればある程度満足できるようになるのかもしれない。が、オーディオにかけた費用をコンサート通いにまわしたほうがよかったのでは、という思いも無いではない。

 オーディオってまるで「虎子」のうようなものかもしれない。頭を冷やして冷静に考えると、オーディオからは大きな経済的なメリットが得られるとは思われない。また虎穴に入る過程で大金を喪失する危険性もある。しかも、虎穴に入っても虎子がいるとも限らない。母虎にお尻をかじられ命からがら逃げ出す可能性も高い。

 しかし、この虎穴・・・虎穴自体が結構奥が深い。もうそろそろ行き詰まりだと思うのであるが、まだまだ序の口だったり、洞窟が二つに分かれていたりする。入り口をくぐってから4年が経過した。随分奥深くまで来た気がする。今となっては出たくても出口が分からない、というのが案外真相なのかもしれない。

2009/12/15

1371:選択肢  

 100Vから240Vに昇圧すると2.4倍。200Vから240Vに昇圧すると1.2倍。どちらが良いのか・・・それは残念ながら不明である。

 200Vから240Vに昇圧した方が無理がないような気が素人的にはする。無理がないほうが良いような気もする。しかし、実際のところ昇圧比率1.2倍の方が無理が無いのかどうかはよく分からない。

 我が家の1階のリスニングルームは、一般の家庭用電源とは別系統の電源になっている。リスニングルームにあるコンセントには、今は全て100Vが来ている。しかし、分電盤で何かしらの作業をすると200Vに変更可能な設定になっている。

 ちょこちょこと何かしらすれば対応コンセントだけは200Vに変更されるはずである。なので、1階に関しては100Vから240Vと200Vから240Vという二通りの昇圧方法が選択可能となる。

 調所電器にはとりあえず100Vから240Vへ昇圧するトランスを発注した。容量は1500VAである。現在1階で使っているものの容量の5倍である。年内には納品される予定である。

 この昇圧トランスが届いたら1階と2階と両方で試す予定である。その結果が良い感じであれば、もう一つ発注しようと考えている。

 2階は100Vから240Vしか選択肢が無い。しかし、1階には選択肢がある。2通りある選択肢のうちどちらを選ぶべきか思案しているのである。

 選択肢があるいということは、一般的には良いことである。が、悩みが増えるということからするとそうでもないのかもしれない。

 100Vから240Vの昇圧トランスは2階で使い、200Vから240Vへの昇圧トランスは1階で使う。というプランが今のところ有力である。

 確か200Vの方が電圧変動が少ないということを聞いたことがあるのである。しかも200Vから240Vパターンだと昇圧比率は1:1.2・・・なんとなく無理の無さが魅力的に映るのであるが、もしかしたら浅はかな素人考えかもしれない。

 100Vから240Vへの昇圧の方が昇圧比率が高いので「勢い」がある。したがって出てくる音にもその勢いがついて元気・・・なんて可能性もあるかもしれないのである。

 まあ、何はともあれ年内に納品されるであろう調所電器の昇圧トランスを早く試してみたいものである。

2009/12/14

1370:ブラッシュアップ  

 QUAD22とQUADUを実は3セット所有している。どのセットもビンテージショップから購入した。価格は全て35万円。もう少し前であれば30万円で購入できたはずであるが、相場が少しばかり高くなったようである。

 システムは二つあるのにどうして3セットかというと、よく壊れるからである。特にプリアンプであるQUAD22がよく壊れる。

 実際3セットあっても、そろって可動可能状況であったためしがない。特にボリュームに不具合が生じた1台のQUAD22は長期入院からなかなか戻ってこなかった。

 しかし、YKさんのところでその不具合がどうにか完治し、さらに健康体になるべくブラッシュアップされて、昨日戻ってきた。

 そこで、早速ダンボール箱からQUAD22とQUADUを取り出し、1階のセットと取り換えて聴いてみた。1階のセットのQUAD22も一度急に異音を発したため修理に出した経歴がある。しかし、その時はコンデンサーを交換しただけで、オーバーホールは行わなかった。

 LP-12のターンテーブルにシベリウスのバイオリン協奏曲のレコードを載せて針を降ろす。そして、愛用の椅子に座り音が出るのを待った。

 音が出てきて、「おっと・・・もちもち・・・」という内心のつぶやきがもれた。つきたての餅のような音触である。ふにゅーと伸びる。その表面はしっとりとしてもちっとしている。けっしてスーパーで買ってきたパック餅をレンジでチンした感じではなく、実際に臼と杵でついた餅を手早く手で丸くした餅のような食感なのである。

 ブラッシュアップの効果であろうか。同じQUAD22とQUADUであるがかなり異なった印象を受ける。ビンテージはやはり怖い面がある。そのコンディションで同じ製品であっても、型番が違うのかというくらいの差が出るのである。

 YKさんによるブラッシュアップはその機器が本来持っていたポテンシャルを上手に引き出すようである。送られてきた段ボール箱には1階のクワドラスパイアに従来納まっていたセットが梱包された。残りの2セットのQUAD22とQUADUも順次ブラッシュアップ作業のため送られる予定である。 

2009/12/13

1369:バス停  

 東京駅の八重洲口バス乗り場で「東15系」のバスを待っていた。バスを待っている人は一様に時折バスが来るであろう方向へ視線を向ける。

 自分が乗るバスがその視線に入ると、その瞳には軽い安堵感の輝きが灯る。私は乗り込んだバスが空いていると後方の窓側の席を選ぶ癖がある。そこだと落ち着いて窓の外の景色を楽しめる気がするのである。今日もそうした。

 「東15系」は東京駅を後にして「ベイエリア」と呼ばれる湾岸地域ヘ向かった。この地域はここ10年程で急激に発展した。高層のオフィスビルやマンションが密度たかく聳えている。肌寒さを感じる薄曇りの冬の午後、その灰色の景色からは近未来的な冷徹な印象を受ける。

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 目的地は「晴海トリトンスクエア」のなかにある「第一生命ホール」。今日はpontaさんとコンサートに行った。プログラムはモーツァルト「交響曲第38番」と「大ミサ」。演奏は福島章恭指揮ヴェリタス室内オーケストラ。合唱は東京ジングフェライン。

 福島さんの演奏会は東大和市民会館でヘンデルのメサイアを聴いて以来2度目である。開場15分前にコンサートホール入口に着いた。既にかなり長い列が形成されていた。一足先に来ているはずのpontaさんを探すとなんと列の先頭に並んでいらした。「早い・・・」さすが福島さんの信奉者である。

 「交響曲第38番」は「プラハ」の別名がある。その演奏は軽快である。澱みなく高回転域まで回るエンジンのように実にスムーズである。そしてその滑らかな回転に支えられてスピードの緩急が実に自在である。「駆け抜ける喜び」だけでなく「とまる喜び」にも「曲がる喜び」にも溢れている。

 休憩後の「ミサ曲ハ短調K.427」は、4名のソリストとオルガン、さらに混声合唱団が加わり編成がぐっと大きくなる。ミサ曲ではあるが、宗教的な厳粛さの一方でオペラ的な明るさも併せ持つとても美しい曲である。

 ぐっと排気量は上がりV8となったが、その軽快な吹き上がりはそのままにトルクが段違いにあがったような印象である。足回りはむやみに固められていないが、走りはきわめて安定感がある。乗り味にしっかりとした芯がある。

 「軽やか」で「しなやか」、そして「重厚さ」も感じさせる演奏はぐいぐいと聴くものをその音楽の中に取り込んでいくようであった。福島さんの核心を突いた指揮ぶりは今回も見事であった。

 演奏会が終り、会場から外に出るともう既に夕闇がせまっていた。地下鉄で帰るpontaさんと分かれて、東京駅行きのバスが来るバス停の列に並んだ。バスが来るであろう方向に数回視線を向けたが、なかなかバスは来なかった。しかし、演奏会の心地よい余韻に浸っていたため、その瞳にはせわしげな輝きは宿らなかった。

2009/12/12

1368:グランプリ  

 今日は書店に真新しい表紙のオーディオ雑誌が並んだ。「Stereo Sound」と「AUDIO BASIC」である。どちらも季刊の雑誌で、3月,6月,9月,12月に発売される。なので3ケ月に1回の割合で書店の一隅にオーディオ雑誌が幅をきかせることとなる。

 12月に出されるので、どちらの雑誌もこの1年を総括するような形での特集記事がメインを占める。「Stereo Sound」の場合「GRAND PRIX 2009」と銘打って今年でたオーディオ製品のなかから優秀なものを選定して発表している。

 そのグランプリを今年はアナログプレーヤーが四つも受賞した。オーディオ・ノートGinga、リンLP12SE 09、ブリンクマンOasis、オラクルDelphi MKYの四つである。

 そのなかでもっとも気を引いたのがブリンクマン。ドイツ製であるが、「Oasis」と命名されたレコードプレーヤーは、ごつい感じがしない。ドイツ製のレコードプレーヤーはどちらかというとごつい感じのものが多いのであるが、これは比較的スマートである。

 個人的な趣味からすれば横幅が520mmもあるのがいまひとつの要素ではあるが、洗練された意匠である。

 そして、何よりの注目点は駆動方式がダイレクトドライブである点である。ダイレクトドライブは、かって日本製品の独壇場であった。高い技術力を持った日本のメーカーが数多く製品を提供していたのであるが、それははるか昔の話である。

 その後は、かろうじて残ったアナログ製品の多くはベルトドライブの海外製品のみとなった。我が家の二つのレコードプレーヤーもベルトドライブである。

 ダイレクトドライブには、やはり優れた点があるはずである。このOasisは、一度実際に目にして、その音を聴いてみたいレコードプレーヤーである。これで幅が45cmに納まっていたら食指が動くのであるが・・・

 オラクルのDelphiシリーズもLP12やXERXES同様長年改良を続けてきたロングセラーモデルである。スケルトンでありながら、全体の造形がきわめて精緻で美しいレコードプレーヤーである。その6代目が発表された。

 実物は目にはしていないのであるが、写真を見てほんの少しガッチリしたのかな、という印象を持った。アクリルベースの色は30th Anniversaryモデルで採用された黒のほうが個人的な好みには合っている。黒のほうが全体が締まって見えるからである。

 こちらはモデルチェンジといってもDelphiXもしばらく併売されるとのことである。見た目優先であればDelphiX 30th Annversaryモデルが欲しくなってしまう。

 オーディオ・ノートのGingaは見るからに凄い音がしそうであるが、こういったオーディオ装置を我が家に置きたいとはけっして思わない。でも、一度でいいからその音は聴いたみたいものである。

 こうやって年の瀬にグランプリを受賞した四つのレコードプレーヤのプライスタグを改めて眺めてみると、デフレに沈む日本経済にあって、唯一オーディオだけはインフレ状態がまだ続いていることを認識させられるのであった。



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