2008/8/13

880:螺旋階段  

 螺旋階段は異なる二つの空間を繋ぐ裂け目のようである。竜巻のように円を描きながら上昇する。それは、一旦登りきってしまうと元には戻れないような、あるいは登りきってしまうと別の次元にワープしてしまうような、独特の雰囲気を有している。

 今はもうなくなってしまったが、秋葉原のガード下にあったダイナミックオーディオ・アクセサリーセンターには、黒い螺旋階段があった。猥雑としか表現できないガード下の一角のどん詰まりにその店はあり、黒い螺旋階段は、1階の店舗と2階の試聴室とを繋ぐ役割をしていた。

 オーディオを「趣味」とする前から、オーディオ機器は我が家にあった。しかし、それは「大きなラジカセ」的な存在でしかなかった。応接間にあるアンティークの北欧家具の雰囲気を壊さないよう壁にピッタリと設置され、静かに佇んでいた。

 それがたまたま読んだオーディオ雑誌に載っていた「セパレート構成にすると別次元の音に・・・」といった記事に触発され、「小型のプリメインアンプをセパレートにするとどうなるのであろう?」という好奇心から、インターネットで見かけたダイナミックオーディオ・アクセサリーセンターに向かったのが、迷宮入りのきっかけであった。

 それが2年数ケ月前の話である。そしてその店の主であった島田さんに案内されて、あの黒い螺旋階段を上がってから、別次元の世界にワープしてしまい、摩訶不思議な迷宮の住民になったのである。

 小型のプリメインアンプはせパレートアンプになり、一体型のCDプレーヤーもセパレート構成となり、2ウェイのスピーカーは、身に真っ黒いカーボン製の衣装をまとった銀色のとんがり帽子になった。さらにレコードプレーヤーが導入され、メインシステム以外にサブシステムまでも導入されるという事態に発展したのである。

 すべてはあの黒い螺旋階段を、革靴の靴底と鉄製のステップがリズミカルに発する乾いた音を耳にしながら、登りきった時から始まったのである。そして、その足音は今思うと「も・う・も・ど・れ・ま・せ・ん・よ」と発せられていたような気がするのである。



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