2008/6/2

808:原体験  

 「変わることは良いことである。」・・・私が少年期を過した時代は右肩上がりの時代であった。物価も賃金も上がり、10年も経つとすっかり時代遅れになってしまうほど社会の変化が激しく、何もかもがすぐに色あせてしまうような感じであった。そしてそういう時代には「変化」は奨励された。

 しかし、バブル崩壊後の20年は右肩上がりどころか、右肩下がりの時代となった。日本も成熟社会、あるいは飽和社会となったのである。人口が減少傾向を見せ始め、急激な高齢化社会に入り、物価も賃金も下がる傾向のデフレが長らく続いたのである。

 こういう時代になると「変わることは良いことか?」という機運になる。さらに、勢いがあり夢があった高度成長期を懐かしむ風潮も出てくる。私も人生の折り返し地点を過ぎ、ふと後ろを振り返ると、少年時代をすごした60年代後半から70年代にかけての頃がとても懐かしく、そしてまぶしく思い出される。

 ちょうど1970年ぐらいであろうか、父の会社の社宅で暮らしていた頃、我が家には、小さなステレオ装置があった。レコードプレーヤー、レシーバーそしてスピーカーの全てが一体となった装置で、足が4本付いていた。パッと見はこぎれいな家具で、表面の仕上げも木目調で、全ての蓋を閉じるとお洒落なキャビネットといった感じであった。

 そういった装置なので、本格的な音がするとか、その前に胡坐を書いて腕を組んで傾聴するといったものではけしてなかった。新聞を読みながら、あるいは、ごろっと畳に横になって何気に聴くのが相応しい雰囲気の装置であった。

 その当時としては、相当高価なものだったと思われる。普通のサラリーマン家庭であった我が家にとって、そのステレオ装置は相当思い切って買ったものであったはずである。なので、相当大事にされていたものと思われる。

 今、結構オーディオにはまっているが、「オーディオ原体験は何だったのであろうか?」と思う時、もしかしたらこの遠い昔の4本足の家具調ステレオ装置がそうだったのかもしれないと思い起こされる。

 引き違いになっている扉を開けて電源スイッチを入れると、オレンジ色のランプがともり、右側上部の蓋をぐいっと持ち上げるとそこにはターンテーブルが隠れている。10年以上、我が家の片隅に置かれて活躍していたステレオ装置は昭和の香りが色濃くする代物であった。実家にはその装置はもうないが、今になってとても懐かしく思い出される。



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