2008/4/11

757:葉桜  

 桜は既に大半が散り、葉桜になってしまった。芽吹いたばかりの新しい桜の葉は、若干赤みがかっている。その色合いとまだ少し残っている桜の花びらとが微妙に溶け合い、おぼろげな雰囲気を醸し出している。

 満開時の桜のように華やかさはない。また、見上げてうっとりする人もあまりいない。もちろんその下で弁当を広げる家族連れもいない。が、そのどっちつかず的な微妙な色合いのバランスは、結構魅力的でもある。

 今日は金曜日、昨日の雨とうって変わって素晴らしい晴天。仕事するのがもったいないくらいにうららかな日中であった。こういった平日の昼下がりに、誰もいない葉桜の下でぼんやり過すなんて、最高に贅沢のような気がする。

 満開の桜の下で多くの人に混じっての花見も良いものではあるが、もうほとんど顧みられることのなくなった葉桜の下で、しかも平日の昼下がりに、そのぼんやりとした色合いを眺めるでもなく眺めるわずかばかりの時間は癒しの効果があるようである。

 『葉ざくらや人に知られぬ昼あそび』   永井荷風

 こんな葉桜の季節には、LINNのLP12でアナログを聴くのがピッタリである。聴くレコードはいわゆる高音質録音盤ではなく、もっと素朴な音のものがいい。チェコスロバキアのレコードレーベルSUPRAPHONなんてどうであろう。

 手元にあるのは、モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ VIOLIN:PETER MESSIEREUR PIANO:JARMILA KOZDERKOVA。このレコードのA面に入っているヘ長調 K377の第3楽章などは、葉桜の季節に凄く合う。

 バイオリンもピアノもSUPRAPHONのその音は、輝かしい華やかさとは対極的な位置にある。表面的な押し出しの強さは全くないのであるが、奥床しいたおやかさがある。「どうだっ!」的な音の良さはないが、しみじみ聴き入ってしまう魅力がこのレコードにはあるようである。

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