2007/8/14

518:オープンリールデッキ  

 「地獄の黙示録」・・・フランシス・フォード・コッポラ監督が手がけた大作で、ベトナム戦争の狂気を描いた問題作でもある。その最初の方のシーンで、ウィラード大尉が司令部からカーツ大佐の抹殺の指令を受ける場面がある。そのなかで、司令部が傍受したカーツ大佐の狂気じみた独白をテープでウィラード大尉に聞かせるところが何故か強く印象に残っている。

 「地獄の黙示録」といえば、ヘリコプターで編隊を組み、ワーグナーを大音量で流しながら、ベトナムの村を攻撃するシーンがあまりにも有名である。もちろんそのシーンは映画史に残るような名シーンではあるが、ウィラード大尉に強烈な印象を残したカーツ大佐との最初の接点である、この司令部の一室でのシーンも見ごたえのあるものである。

 「私はカタツムリを見ていた。カミソリの刃のうえを這っている。それが私の夢だ。それが私の悪夢だ。ゆっくりと這ってる。鋭い・・・まっすぐな・・・刃のうえを這っている。死にもせず・・・」

 カーツ大佐の独白は不気味で狂気を感じさせるものである。このシーンは地味であるが、その後に映画のなかで展開する世界を暗示しているかのようである。

 そして、このシーンでは物語の展開とはまったく関係ないのであるが二つのことが目を引く。まずはハリソン・フォード。若き日のハリソン・フォードが、このシーンにのみ出てくるのである。もちろんまだ大スターになる前であろう。初々しい感じである。

 もうひとつは、カーツ大佐の独白を再生していたオープンリールデッキがSONY製であったことである。この時代、既に日本製のものが幅を利かせていたようである。そのオープンリールデッキはボタン式ではなく、二つ並んだレバーをカチッカチッと回して操作する方式のものであった。

 この二つのレバーはどういう関連なのだろうか。片一方のレバーを垂直状態から右へひとつ回転させると「再生」状態になるのは、映画のシーンを見て分かったが、きっともうひとつのレバーは「早送り」や「巻き戻し」に関連するのであろう。あるいは「録音」にする時にはこの二つのレバーのどちらも使うのかもしれない。その操作感とがっちりした外観は結構いい感じであった。

 レバーを回して操作するといったらNAGRAの製品を連想してしまう。もともとは小型・高性能の録音機が有名であったようである。そのときの操作系のデザインの名残が現在の製品にも引き継がれているのであろう。

 そのレバーを多用したカチッとした操作系のデザインはやはりかっこいい。親指と折り曲げた人差し指の側面を使ってレバーを操作する・・・その独特のしっかりとした感覚は現在の一般的なオーディオ機器からは失われたものかもしれない。

 わが家のEMM Labsのボタン類などプラスチック製で、押した際の操作感というか、指に伝わる感覚は最低の部類かもしれない。オープンリールデッキのレバーの操作についついあこがれに似た感情を持ってしまう。もう今ではオープンリールデッキというものは一般には売られていないが、数十年前にはオーディオマニアのお宅には必ずといっていいほどあったアイテムであったのかもしれない。 



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ