2007/8/6

510:盛夏  

 7月は梅雨が長かったため、日照時間が記録的に少なく、「夏!」といった強い印象は受けなかった。しかし、8月に入ってからはその遅れを一気に取り戻すかのような勢いで気温が上がり「猛暑」の日々が数日続いている。

 昨日もここ数日来の猛暑であった。夜は遠雷とともに雨も一時的に降り、気温が下がったが、昼間の炎天下はすさまじいものがあった。

 そんななか飯田橋にあるトッパンホールへ行ってきた。開演は午後の2時からなので一番暑い時間帯である。コンサートホールのなかに入ってしまえば冷房が効いていて快適なのであるが、駅からコンサートホールまでの徒歩区間が結構過酷であった。

 昨日は辻井伸行さんのピアノリサイタルで、プログラムはすべてドビュッシー。「2つのアラベスク」「ベルガマスク組曲」「子供の領分」「映像 第1集」「映像 第2集」・・・ドビュッシーの複雑で繊細な音楽を端的に表示してくれる名曲たちである。

 辻井伸行さんは「全盲の天才ピアニスト」としてマスコミに取り上げられることも多く、有名な若手ピアニストである。1988年の生まれであるから19歳である。全盲というハンディをものともせず、家族の深い愛情に育まれて、その稀なる才能を花開かせた素晴らしい演奏家である。

 音を探し出すように、あるいは心の中のイメージをつむぎだすように弾くといった印象を受ける。心のなかにははっきりとした音や音楽の形があって、それを掘り出すためにノミを振るうかのように、指先はすばやくためらうことなく動いていく。

 そして音楽全体の構成においてもしっかりしたものをその根底に堅持しているので、情感に流されすぎることがない。

 全盲ということに関心が集まりがちであるが、そういったことを超越した鋭敏な感覚の持主である。また、その天真爛漫ともいえる性格も垣間見え、貴重な2時間を過ごすことができた。

 コンサートが終了し、トッパンホールからまた飯田橋駅まで約10分ほどの時間をかけて歩かなければならない。太陽は相変わらず猛烈なエネルギーで、その熱と光をアスファルトやコンクリートにたたきつけていた。しかし、心なしが帰路は足取りが軽やかであった。



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