2006/3/18

7:漆黒のディメンター  

 もう一度聞きたくなり、またサウンドハウスの2階にいってきてしまった。先週の土曜日にGERMAN PHYSIKS HRS120を聞いてから、どうしてもこのスピーカーのことが頭から離れないまま、この1週間をすごした。「なぜこうも惹かれるのか?」その答えを見つけたかった。

 2階に着くと、上遠野さんが一人でいて、「先週はどうもありがとうございました。」とはにかんだ笑顔で迎えてくれた。先週の試聴イベントに参加した際に少し言葉を交わしたので、顔を覚えていてくれたようだった。試聴のまえに、上遠野さんのGERMAN PHYSIKSのスピーカーに対する思いについていろいろ話を伺うことができた。ご自身が自宅で使用されているユニコーンとの出会いなど面白いエピソードを聞くことができた。

 30分ほど話したあと、試聴ポジションに移った。置かれていたのはHRS120 carbonだった。接続されていた機器は、CDPがMetronome Technologies CD3 Sigunature、PREがBow Technologies WARLOCK、POWERがEAR 861、電源コードは付属のもので、ラインケーブルもスピーカーケーブルも一般的なものでそれほど高いグレードのものは使用されていなかった。

 自宅でよく聞いているいわゆる「耳たこソフト」を一通りかけてみる。その間約45分程度。試聴ポジションとスピーカーの設置位置とはかなり近接していて1.5M程度、さらに展示スペースが狭いためスピーカーの間隔もあまり広くとれず2メートルもない状況。当然周囲には他のスピーカーが並んでいる。視覚的には多少圧迫感を感じるが、音が鳴り出すと、二つのスピーカーを結んだラインの後方に音場が広く展開するため、目を閉じて聞けば、圧迫感は消えてしまう。

 やはり広い、その後方展開型のサウンドステージの奥行きに、吸い込まれそうな感覚に陥る。そして、音像も密度感、潤い感を備えており、緻密な印象を受ける。広いけど薄いといった印象はまったく受けないし、乾いた感じがしない。

 試聴環境としては、それほど恵まれた条件ではないはずなのだが、十分に満足させてくれた。イベントで聞いたときとほぼ同じ印象を持つことができた。イベントでも比較的スピーカーに近いポジションで聞いたのだが、圧迫感のない広い空間提示が印象的だった。目を開けると相当近い位置にスピーカーがあるのだけれど、そこから音が出ている感じがしない、後方にもいくつかスピーカーが並んでいるのだが、そのどれかが鳴っているような錯覚に陥る。音が出るとスピーカーがさっと姿を消す一種のイリュージョンをみているような気にさせてくれる。そして、その音色が滑らかでかつ密度感がある。

 上遠野さんはユニコーンの音を始めて聞いたときに「射抜かれた感じがした」と話されていたが、その矢は私にも刺さってしまったようだ。私はHRS120 carbonの音を聞きながら、その印象を言葉で表すなら「スーピーカーのライン後方奥深くへと魂を吸い込む漆黒のディメンター(吸魂鬼)」だなと思った。そして、ディメンターに魅入られたハリー・ポッターが気を失ってしまったように、私は抵抗することもできずに、ローン契約書にサインした。
 



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