2010/12/30

1752:メトロノーム  

 このCORNER LANCASTERは、ユニットがモニター・レッドである。わが家のCHATSWORTHはモニター・ゴールドが入っている。レッドはゴールドの一世代前のユニットである。

 ビンテージ・オーディオの世界では一般に古い時代のものの方が価格が高い。希少価値があがるからであろう。TANNOYのユニットの場合も同様で、ゴールドよりもレッドのほうが価格が高い。

 しかし、価格が高いのは希少価値が高いからで、オーディオ的な性能が高いからではない。レッドはゴールドに比べると一般的に音の傾向が硬く、シャープであるといわれている。ゴールドは開放的で伸びやかな鳴りの良さが特徴で、レッドは楷書的な音の出方であり、一種の厳格な威厳のようなものを感じさせる。

 もちろん、これは一般的な傾向にすぎない。キャビネットの形状や組み合わせるアンプによって変わってくるし、使用する部屋やセッティング、その他の使いこなしによっても当然その印象は変わってくる。

 さて、その最初の音の印象であるが、思ったよりは高域にきつさはなかった。しかし、明らかにゴールドの開放的な明るさとは違った音の質感である。

 我が家のCHATSWORTHに比べると、線が細めで高域よりのバランス。しかし、音情報がしっかりと出てくる。コーナー型のキャビネットはより剛性が強くなるので、キャビネットの響きも少なめ。間接音成分よりも直接音成分の比率が高くなる。

 ユニットの状況はかなり良いようで、その響きに耳につく歪み成分が乗ってくることはない。キャビネット、ユニットも含めて、造られてから50年以上経過しているスピーカーとしては、信じられないくらいに良いコンディションと判断できる。

 しかし、私自身の音の好みからすれば、ゴールドの持つおおらかさの方により心惹かれるのは事実である。

 店のなかには他のビンテージスピーカーがいくつか置いてあり、さらにコーナー型のキャビネットであるにもかかわらず、部屋のコーナーに置かれているわけでもなかった。なので、このスピーカーの本質を見極めるにはいくつかのフィルターを通す必要がある。

 そのフィルターを通したとしても、この美しいTANNOYを我が家に導入したら、見た目的な整合性と美的満足には素晴らしいものがあるが、しばらくは音の調合作業に苦心惨憺の日々が続く可能性が垣間見れた。 

 しかも、価格がつい先日タッチの差で買い逃した同じCORNER LANCASTERのモニター・ゴールドよりも20万円も高い。この美しいスピーカーの価格はペアで78万円。

 レコードはBachのバイオリン協奏曲からブラームスの交響曲に変わった。オーケストラの弦の響きは、ふわっと広がらず、しっかりとした音として耳に届く。モニター・レッドを擁したこのCORNER LANCASTER、実に高貴で厳格である。

 けっして、ゴールドのCHATSWORTHのように優しく微笑みかけてくれない。厳格で威厳のある表情を崩そうとはしないのである。同じTANNOYであるが、性格は対照的ともいえる。

 心は、規則的にリズムを刻むメトロノームのように揺れる。「これは買いだ!あまりにも美しい・・・」に揺れたかと思うと「いや、これは苦労しそうだ・・・使いこなせない可能性が高い・・・」と思った。

 さらに「こんなに美しいTANNOYなら、苦労も厭うべきではない・・・」に振れ、「好みからすればモニター・ゴールドのはず、またCORNER LANCASTERのゴールド入りの出物がないとも限らない・・・」に戻る。そんな心の揺れのなか、レコードはジャズ・ボーカルに切り替わった。



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