4年目となる「奥の細道」を尋ねる吟行の旅。
今年は、新潟から金沢へと足を運びました。
今回の報告は、鳥閑さんの名紀行文を拝借して、全文を掲載させていただきました。
ごゆるりとお読みください。
【旅立ちの日】
7月18日(土)
11:59摩天、素頓、鳥閑の三人が長岡着。閑が北陸新幹線に乗るのは確か2回目。
長いトンネルを抜けると霧模様。
冷房の強き車中や稚児の声
トンネルを抜けてそのまま夏の霧
素頓の当初計画では、長岡から本数の少ない電車、バスで回る予定であったが、不便さを見かねた一兎が、その後の家族旅行も兼ねて車を出すことになる。紆余曲折を経て泰山が所沢で合流して同乗し、新幹線組と長岡で合流。
昼食は蕎麦の小嶋屋。
鳥閑の知人から得た情報と、素頓が市役所から紹介された店が一致。
「野菜天へぎ」とアルコールを頂く。
一兎車に5人が乗り、芭蕉の足跡を辿る旅北陸道遍が始る。
同乗はもう一人、ソニー家生れの298のナビ子。以後、運転する一兎とナビ子、助手席のナビ男こと素頓の掛け合いや言い争いが続く。
時に後部座席の3人が割って入るも役立たず。
ナビ子は旅の終わり迄主に馴染めなかったようだ。
運転に関して付記すると、素頓が日替わりで交代する案もあったが、また摩天、鳥閑も免許証を持参するも、ついに最後まで一兎がハンドルを手放さず。
鳥閑はしきりに運転希望(特に親不知あたり)を出すも、取り合って貰えず、不完全燃焼。免許証携帯も無駄になるかと思われたが、思わぬところで役に立つとは、は夢想だにせず。
先ずは出雲崎に向い、良寛記念館、良寛堂、芭蕉園、光照寺(良寛剃髪の寺)を見学。
夏に来て良寛庵の沖つ波 一兎
芭蕉碑をなぞるが如し蟻一匹
主なきのうぜんかずら光照寺
青梅のころりと良寛剃髪寺 鳥閑
時折雨模様の曇天で佐渡は見えず。鵜の浜に早めに到着。
民宿「村中屋」には温泉がない。
浜辺の人魚像を見学しつつ、「人魚館」の温泉に入る。
さざ波に夕陽かくれる夏の海 素頓
梅雨空の名残仰ぎし露天風呂
夕食は大広間に石の会一組だけ。料理は豪華だが、素頓に急かされ七月句会開始。
句会後はそのまま大広間でカラオケ大会。カラオケ時間制限があり、以後の計画もないため9時に消灯。快挙か暴挙か?
クーラーを止めて消灯未だ九時
一部屋に泰山も含め5人が雑魚寝風。泰山の寝場所は一番奥に落ち着く。
寝息、いびきなどは嘘か誠か、駆け引きか。
深夜突然、何かを叩く音が響く。
さてどうしたものか。結局誰も取り合わず穏便に済ませる。
【二日目】
7月19日(日)
頭がすっきりしないまま、朝を迎える。
観光地引網の見学に行くと、虹がかかっていた。
鶏とともに老鶯時を告げ
明け早し網引く浜の人魚像 泰山
地引網小魚跳ねし朝の虹
朝食は昨夜と同じく大部屋だが、今朝は他の組も同席。鯵の開きや鮭の塩焼き等ではなく赤魚の粕漬けが出た。予定通りの時間に出発。雨は止み、日差しもあり。
真中に胡瓜の糠づけ朝の膳
北陸道木々の合間に合歓の花
眩しさもそこそこ夏の日本海
親不知近くでナビ男が眠ってしまい、一旦通り過ぎる。下り7分、上り10分と書かれた急階段を下り、波打ち際へ。古の人が通った道を想像し恐れおののく。
ホテルの喫茶は宿泊者以外は受け付けず、展望台へ。
佐渡は見えず。佐渡と能登の方向表示がおかしいとの声もあり。
見下ろせば緑のヴェール親不知
万緑や錆びた手すりの親不知
滝音とともに下り行く親不知
夏の海東は佐渡か西は能登 摩天
親不知ピアパークと云う処まで戻り一服後、市振に向う。
桔梗屋跡には何もなく虚しい。折角だからと「遊女の句碑」を探す。
街道際の長円寺に見つける。
土用波遊女の宿はなかりけり
高速道に乗り一路新湊へ。
ナビ子の案内に従って行くと、高岡古城公園あたりに迷い込む。
主の指示間違いの可能性も否定できない。
庄川の橋まで戻って渡り、海岸縁の道をゆっくり走り、ようやく放生津八幡宮に辿り着く。時折強い雨模様。
いよいよ昼食だ。パンフレットを見ながら寿司屋横丁を探すも、影も形もなし。
尋ねようにも人影もなし。
結局、ファミレスCOCO'Sでカレーやスパゲティの昼食となる。
梅雨名残寿司屋横丁鉛色
金沢まで260キロと聞きぎょっとするも、実際は46キロほど。
この日の宿、R&Bホテルにはすんなり着く。
1時間程度の休息を取り、吟行句会開始のはずが、素頓が現れず。眠ってしまったそうだ。句会報告は別途。
素頓が途中で仕入れたマス寿司とビールで空腹感はなく、義務的に金沢市内へ繰り出す。出雲崎の妻入りの町並み、市振、新湊とどこも人影がほとんど見えなかっただけに、久し振りに街の賑わいを見て安心する。
片町や香林坊までは行かずに、駅近くの居酒屋「海ん中」に入る。気合は入らず、早々切り上げる。
【三日目】
7月20日(月、祭)
パンとコーヒー程度のホテル備え付けの朝食を取り、金沢市内散策に向う。
後部座席の鳥閑のナビ不調で港に迷い込む。お蔭で自衛艦の出港場面を見学できる。
羅や水兵手持ち無沙汰なり
自衛艦鯵釣る人も見送れり
犀川大橋際の駐車場に車を預け、願念寺、妙立寺(忍者寺)を見学後小松に向う。
小松市役所観光課推奨のうどんや「中佐中店」で「ざる会席」を賞味したところで、摩天より会費を収めた財布が見当たらないとの報あり。
落としたとしたら金沢の駐車場あたりと思われる。小松駅西口交番に届け出る。
残金もさることながらJALの株主優待券が痛い。
冒頭の免許証が役立ったのはこの時ではない。
素頓事前視察の建聖寺を訪問。芭蕉木造を手に触れながら見学。
素朴な感じの住職とおかみさんに好感を覚える。安宅の関を見て一路空港へ。
芭蕉像囲みて広し夏座敷
青蔦や神社の奥の安宅関
一兎とはここで別れる。優待券が使えず東京まで通常料金の24,200円。
お土産を探していると泰山から電話があり、カウンターへ急ぐ。
早い便への乗換えか、と思って行くと、用件は高齢者割引の適用であった。
年齢確認のため免許証を提示、免許証に感謝だ。瞬間、4,100円引きの20,100円と間違えたほどの大幅値引きで、優待券より有利な14,100引きであった。
少々遅れたが無事帰京。(素頓は帰仙)
雲の峰越へて富士山拝みけり
お疲れさまでした。
鳥閑記

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