まだ夏なのか、もう夏は過ぎ去ったのかは分からないが、小泉進次郎大臣にとっては、なかなか刺激的な夏だっただろうと思う。
ついこの間までは、イケメン独身政治家というポジション、あるいは俳優小泉孝太郎の弟というようなポジションだったのに、結婚、閣僚就任、ということが起こったら、メディアの扱いが大きく変わった。
なぜそうなったかの理由は単純で、彼の存在は、新聞で言えば社会部のネタだったのに、今は担当が政治部に変わったから、というそれだけの理由だ。
それでこれだけ同一人物に対する評価が変わる、というのは、社会部が狙っている読者層と政治部が相手にしている読者層が別物だからである。では、それぞれが何を狙っているのかと言えば、新聞の社会面を読むのが主婦層であり、政治面を読むのがおっさん層だ、ということであろう。
主婦はイケメンで若い男が好きであり、その夫たるおっさん層はそんなヤツが大っ嫌いだ、というのは、ちょっと考えれば誰にも分かる話である。
しかし、もうちょっとこの問題を深く考えてみることもできるだろうと思う。
じゃあ、若者はどうなのか、ということなのだが、若者は新聞を読まないから関係ない。シンジロー氏は、まだネットでバズる行動を起こしていない。彼が若者層を取り込めるかどうかは、未知数と言える。
それで、政治部の主要顧客がおっさん層であるのなら、「セクシー」て何やねん、となぜかその単語に異常に興奮するのも分かるわけだが、小泉議員はその質問を受けて、「それを説明するのは野暮でしょう」と受け流した。つまり、彼はおっさん層を相手にせず、という態度を示した。
日本のおっさん層を代表する新聞政治部を相手にしない、というのは、彼がそれを意図しているのかいないのかは分からないが、非常に重要なポイントであると思う。新聞の政治面において、彼が叩かれることを厭わない、あるいはむしろ積極的に炎上を仕掛ける、という態度を貫けば、彼は新しい時代のリーダーになれるチャンスが出て来る。逆に言えば、これまでの中途半端な二世、三世議員は、おっさん層に忖度することによって、自分の政治的な生命を潰して来た。あるいは老練な議員どもに利用されて、使い捨てにされて来た。
マッカーサー支配時代に、日本のエンジンとなった機関はことごとく潰された。軍隊は解散させられたし、財閥も解体、地主も土地の所有を奪われ、貴族階級も消失した。これでもう日本から戦争遂行能力を奪い去った、とマッカーサーは考えたのかも知れなかったのだが、すべての資源を戦争遂行のために捧げる、という1940年以来の国家総動員体制は、実は滅亡を免れた。そのサバイバーたちが、霞が関の官僚と、新聞社などのマスコミ(含む電通)である。
国家は人命に優先する、という全体主義は、日本国憲法が民主主義あるいは国民主権を主張しても、なお生き残った。霞が関という組織、そして新聞の政治部は、全体主義の闇を今に伝える秘密結社のような機関であると言える。そして、日本に明るい未来がある可能性が少しでも残されているとすれば、そのためにどうしても必要なのは、これらの機関が今果たしている役割を「ぶっ壊す」ことでなければならない。
日本に経済成長が見られないのも、官僚・マスコミ連合が既得権益を守り抜き、新しい種類のビジネスを叩き潰すことを深く決意しているからである。堀江貴文氏を刑務所に送り込み、IT系で新しいビジネスを開拓しようとするのは邪道である、恥ずかしい、不道徳だ、という宣伝活動が行われているのは、おっさん層が守りたい既得権益層の声を代弁しているからだ。
日本のものづくりは世界一など、あきれたプロパガンダがいつまでも残響しているのは、こうした連中の努力の賜物だ。しかし、そんなことを言っている間に、世界はどんどん進化を遂げており、日本は後塵を拝する立場に落ち込んでいる。それでも、日本凋落、という現実に目を向けず、これでいいのだ、と思いたがるのが、おっさん層の哀れな姿である。
そんなおっさん層が支配する日本。そのツケを回収するのは、彼らの次世代、次々世代である。子孫に美田を残さず、という志は立派だが、スギだらけの山林、空き家だらけの農村、シャッターしか見えない商店街、という廃墟化した日本を残す、というのは、バブルで大儲けし、いろいろな可能性を秘めていた日本を運営していた世代のしくじり以外の何物でもない。
自民党がダメなら民主党、それでもダメだったのだから、若い世代は新たなチャレンジをして、日本を再生しなければならない。そのために必要なことは、おっさん層の撲滅なのだが、残念なことに戦争なき時代の老人たちは、延々と生き延びている。生物学的に彼らが生きたいと思うのは一応許すとしても、政界でも財界でも、老朽化した生命体が意思決定のプロセスに残存していることは、非常に危険なことだ。
緊急避難的に、国会議員の被選挙権を持つのは45歳未満とする、あるいは大企業の定年を45歳とする、など相当厳しい対策を取らないと日本の未来は見えて来ない。45歳くらいまでが働きどころであると思う。官僚、マスコミの世界で定年延長なんかが実現したら、それはもう国家が破綻したも同然であると、自分は憂国の情を禁じ得ない。

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