自分もいろんなネタをいろんなソースから発見する発見力においては人後に落ちないと自負しているが、やはり万能という訳でもなく、こんなブログを綴っているからだとは思うが、これどう?とネタをくださる方々も少なくない。
Nobuさんからちょうだいしたネタは、週刊文春に掲載していたらしい橘玲という人が書いた「日本人の3分の1は日本語が読めない」という記事についてである。
これは、文章を読んだらその意味が分かる、という意味におけるリテラシーとか、数量的な課題を見たらその解答を導ける、という意味におけるニューメラシーなどを世界各国の大人について調査し、その結果を出したものである。調査報告自体は、2013年10月8日に公表されているので、橘氏が何で今頃そんなことを書いているのか、とは思うが、話の大筋はたぶん5年くらいでは大きく変わらないだろう。
それで、この橘氏は、些細なことを針小棒大に書く、というフェイク・ジャーナリスト魂に溢れた人物らしく、日本人のくせに日本語読めないってよ、とわが国民をディスるようなタイトルを付けているのだが、中身を見ると、日本人、リテラシーについてもニューメラシーについてもOECD加盟国(その範囲で調査したからだが)中、どちらも第1位に輝いている。
何だ、じゃあ問題ないじゃん、とは思わないところがこの記事の書き手の着眼点で、じゃあ例えばホテルの部屋によくある、当ホテルの使い勝手についてみたいなことが書いてあるマニュアルを読んで、その意味を理解できる人がどれくらいいるのかと言うと、第1位に輝く日本人でさえその数は全体の3分の2しかいない、ということである。それで、逆側から見ると、3分の1に当たる人は、そんなマニュアルを手にしてもそこに書かれていることが理解できないままホテルをチェック・アウトしているのだ、という驚愕(!)の事実について、橘氏はそれを問題視しているのである。
ちなみに、この人、やはり隣国のことが気になるらしく韓国がどんなレーティングになっているのかをチェックしたらしいのだが、韓国は、リテラシーでは23番までしかない順位の中で第12位、ニューメラシーでは第16位という結果になっている。やっぱりな、と思う向きもあることと思うが、橘氏は年代別の統計というところまでチェックしていて、16歳から24歳という年代限定で国際比較をすると、日本の子は途端に見劣りしはじめ、ニューメラシーでは第3位に転落してしまう。そして韓国の同じ世代では、リテラシーが第4位、ニューメラシーでは第5位だから、日本に「肉迫」していると言っても良い。
あくまでもOECD加盟国全体の中の相対的な位置付けであるが、日本人は「おじちゃん・おばちゃん世代」が優秀なのに、子ども世代はやや劣る、韓国人は「おじちゃん・おばちゃん世代」が壊滅的なのに、子ども世代は結構優秀だ、ということになっている。それ以外のジャンルとして、「ITスキル」という項目もあって、こちらは韓国の若者が第1位を取っているのに対し、日本の若者は第14位という結果である。
もちろん、日本でだっておじちゃん世代よりは若者の方がITスキルは高い。しかし、世界の若者はもっと高いスキルを持っており、特に韓国の子は高いスキルを持っているのに比べると、日本の若者はITスキルについては、世界的に見て「鈍くさい」レベルに低迷していることが分かる。
OECDのどの国に行っても世代間格差は明瞭である。日本の地下鉄の駅で見渡しても、若者たちは我々世代から比べれば手足も長いし、服装も洗練されている。しかし、世界の若者が進化している速度に比べれば、日本の若者は全然その進化のスピードが遅れている、ということが統計で裏付けられたのである。
この調査はすでに5年以上の前のものである。今日現在はどうなっているのかと言うと、おそらく日本の地位はさらに地盤沈下をしていて、韓国はさらにその地位を上げていることだろう。
日本人が韓国の国会議長発言を聞いて嗤い、韓国人が日本の五輪相の発言を聞いて呆れたとしても、それは「おじちゃん・おばちゃん世代」における比較である。そういう人たちは間もなく絶滅することは生物学的に明らかであり、もうすぐ若者世代がそれぞれの国家を担うようになって行く。
そもそも日本は若者の進化のスピードが遅い上に、若者たちが社会の中で出世するスピードが絶望的に遅い。学生時代に優秀だった者たちも、銀行や商社なんかに入ってしまうと、宴席で裸踊りして、バカを装わなければならない、という企業文化に取り込まれてしまう。能力があってもそれを発揮してはならず、そもそも能力を持っていることを知られたら出世ができなくなる、という日本社会の構造が、日本の競争力をどんどん奪っている。
日本の労働生産性が先進7か国中で万年最下位であることや、男女間の格差のなさを比較するジェンダーギャップ指数が世界110位という最下層に属していることを橘氏は指摘している。
「おじちゃん・おばちゃん世代」ががんばって世界に誇れる日本をつくったのに、その世代が若者世代を「搾取」し、その能力の芽をどんどん摘み取っていることによって、日本を弱体化させてもいる、という事実に、やっぱり我々は「驚愕」して、それを今すぐ変えなければいけないはずである。

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