夜になると日本のプロ野球をやっているテレビ局もないし、サッカーならドイツ語のアナウンスが分からなくても、ボールがどこにあるのかくらいは見て分かるので、ちょうどヨーロッパ時間のゴールデン・タイムを目掛けてやっているワールドカップの試合をつぶさに見る、という変な状況だ。
いくつもゲームを見ていると、やはり三役を張っているような強いチームと、しょせんは前頭の何枚目かというようなチームの違いも分かるようになる。
これが日本にいれば、どうせ深夜の生中継なんか見ないし、試合の結果だけをメディアの報道で知る、という程度なのだが、ここまで連日いろんな国の試合を見ていたら、例によってネットの日本語メディアの偏向報道(必ずしもフェイクとは思わないが)が気になる。
昨夜は、まず日本対セネガル戦を見た。個人のワザで見ると、セネガルには体も大きく、全身に躍動感があるような選手が多く、実力を感じさせる。日本チームでは、金髪が目立つということもあるが、ナガトモ選手が縦横に活躍して、ボールを奪いに行っていた。どの選手を誰が封じるか、といった個々のワザについては、自分にはとても分析能力がないから、ボールのないところの選手の動きは一切見ていない。
結局、セネガル側の選手としては、ちょこちょこ動き回る相手選手が邪魔な中、それでも2点を取ったのは実力(川島選手がセネガルのゴールをアシストしたように見えたのも、激しい攻防の一瞬であるから、要するにたまたま川島選手のはじいた球が足に当たっただけでゴールしたセネガル選手は、点の取れるだけの位置にいた、ということだ)で、彼らのサッカー能力の高さを示していた。
日本側は、それでも前頭の上位には位置する程度の技術を繰り出して、1点取ったところまでは評価できる。自分は良く名前を知らないが、若い選手たちが積極的に点を取りに行く姿勢が良かった。終盤、ホンダ選手投入となり、敵ゴール付近に背番号4がちらちらすると、何かそれだけで期待感が出るのは不思議なもので、最後、激しい攻防のこぼれ球が不思議にも(本当は、プロフェッショナルな彼の絶妙のポジショニングか何かだと思うが)彼の足元に吸い寄せられて、彼はまるで子ども相手にシュートの手本を見せるかのように軽く足を合わせて同点、というのには恐れ入った。彼はおそらくこの試合に出場した日本選手の中で最も運動量の少なかった選手だろう。
そんなことで、セネガル的には本当は勝ち点3が取れる試合だったところ、残念ながら勝ち点1で終わったのは不満ではあるだろう。日本がそれだけ健闘した、ということだ。
さて、その後のコロンビア対ポーランド戦まで見た日本ファンは少ないと思うが、自分は、時差を利用して、午後8時プレイ開始のその試合も見た。ポーランドの試合のスタイルは、自分がこれまでに見た他のチームの中では最も韓国に似ていて、要するに肉弾戦的に敵の選手に激突して、バッタバッタと倒れる、というものだ。コロンビアのゴールキーパーが球を持って走っているその場にわざわざ走り込んで接触し、もんどりうって転倒したキーパーはしばらくその場に悶絶する、という場面が試合開始間もない時間帯のことだった。あまりにも悶絶時間が長いので、テレビのカメラは、コロンビア側の控えのキーパーを映し出したりして、何だか凄惨な雰囲気になった。あのポーランド野郎、監督から敵のキーパーを「潰して来い」とか指示を受けたんじゃなかろうか、というように思えたが、何とかキーパーは立ち上がり、そこからキーパーではない別の選手がキックを繰り出して試合は継続した。
その後も、ポーランド選手の肉弾戦法は変わらないのだが、おそらくはコロンビア選手の方がうまく対応できるようになったのだろう、試合はスムーズに流れるようになり、前半1対0になって終了したところで、こりゃあもうポーランドに勝ち目はない、と思って後半戦は見なかった。結果は、3対0ということで終わったようだ。
結局、弱いチームが勝つにはどうするのか、ということになるのだろうが、韓国やポーランドのように体当たりで自分もぶっ倒れながら相手にダメージを与えて勝機を見出すか、あくまでも細かく動いて消耗しながらも偶然のチャンスに賭けるか、ということなのだろう。韓国とポーランドがその戦い方において共通点があるのは、彼らの歴史的な境遇の共通性にも関連があるのかも知れない。韓国は中国の、そしてポーランドはロシアの風下に常に立たされていた。そして、中国が弱体化すれば日本が韓半島に進駐したし、ロシアの隙を突いたドイツのナチス政権が最初に奪いに行ったのはポーランドだった。歴史的な悲運を背負ったチームは、やみくもな肉弾戦に走る、ということかも知れない。
ただ、ポーランドはこれで2敗したので、すでに勝ち点4を獲得した日本に勝っても、自分が決勝リーグに上がることはない。そうなれば、決勝リーグに上がるのは日本と、もうひとつはセネガル対コロンビアの勝者、ということになるだろう。しかし、勝負は時の運であって、必ずしも実力をそのまま示す訳ではない。
決勝リーグで関脇や大関に対戦した時、日本はどうなるのか、という頃は、もう自分は日本にいるはずなので、そんな深夜に起きてまでサッカーを見る気はないから、それはもう結構です、ということにはなるだろう。

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