安倍首相、今度は「最低賃金」を引き上げるように経済財政諮問会議で発言、ということのようだ。ケータイ料金下げろとか、最低賃金上げろとか、なぜ総理大臣が?と思えるような細か過ぎるご指示が横行している。一方で、政治力が求められる国会改革については、ようやく実現した、かたちばかりの衆議院議員定数の0増5減が、最高裁からやはり「イケンジョータ〜イ」と宣言されて、一体どうする積もりなのか、さっぱり分からない。
結局、安心してください、個人消費は伸びてますよ、と言いたい気持ちは分かるが、とんでもない、個人消費は冷えたままで、一向に動かない。
アベノミクスとは何だったか、と繰り返し反省してみると、まず日銀のバズーカだか何だか分からないが、円の大量投入があった。そこで円の価値が下落して、輸出企業の手取りが増えた。そこで、そうした企業に対して賃金を上げろ、と言ったので、大企業サラリーマンの賃金が増えた。
その結果、何が起こったのか?利益の増えた企業は内部留保を増やし、収入の増えたサラリーマン家庭は貯金を増やした。
要するに、起こったのはそれだけのことである。
それだけのことをやるために、日本政府は国債を大量に発行して、将来、本当に国債が償還できる確率は随分減った。未来を犠牲にした割りには、あまりにも寂しい結果しか残っていない。
もちろん、政府支出を増やす、という努力は怠っていない。震災復興事業は相変わらずあるし、地方創生という名目で地方にばらまくための資金もたくさん用意した。そうして、困っている自治体はどんどん言ってくれ!と偉そうに腕組みして見せたのだが、自治体からの援助要請は、そんなに来ないために、閑古鳥が啼いている。
何なんだよ、オマエら!と総理大臣お怒りになって、消費が増えないのは、ケータイ代払うとモノ買うカネがなくなっちゃうからだろ、とか、最低賃金安過ぎて買い物もできねえんだろ、とか、いろいろ心配をくださっているようなのだ。
あげくの果ては、年寄りは年金が足りなくてモノを買えないようだから、問答無用で3万円をあげちゃう、とか言っている。
オマエら、何で買い物しねえんだよ!とお怒りになるご様子は見ていて可哀想になるくらいであるが、庶民のひとりとして申し上げれば、別に買いたいモノも、買わなきゃいけないモノもないから買わねえだけだ、文句あんのか、あ〜?ということである。
おカネあげるから買い物してよ、と言っている政府はそんなに金持ちなのかと思いきや、国債の発行元である財務大臣には借金が1,000兆円ほどおありになる、ということは、世界の誰もが知る有名な話である。そんな財務大臣が、よくもまあそんなこと言えるもんだ、と呆れもするが、日本国の国債には、別に麻生太郎氏の個人保証も付いていないのだから、安心してそんな無責任なことが言えるのだと思う。
経済は必ず成長する、という神話をいつまでも信じ込んでいるその信心深さは見上げたものだが、現実は、世界のどこを見ても、先進国に経済成長なんか存在していない。要するに、そんな時代は終了したのである。
それなのに、金融緩和と称して、ジャブジャブ自国通貨を過剰に発行することは、いつか破綻を招くことだ、と誰しも分かっている。米国FRBも、そろそろ出口を探り始めているのだが、これは「行きは良い良い、帰りは怖い」政策の見本のようなものだから、出口戦略を間違えると経済の大破綻を来す。そこで、どこでも慎重にならざるを得ないところ、日銀は現行政策を追認し、政策変更なし、とした10月30日の会合の議事要旨を本日出している。
こんな状態で、消費税の軽減税率について、自民党と公明党の合意がいつまでも得られない、ということのようだが、そもそも2017年4月から消費税を10%に引き上げる、ということが非現実的であって、どんなにケータイ代が安くなっても、最低賃金が増えても、年寄りが3万円のキャッシュバック(?)をもらっても、そんなことと比較にならない買い控えが出て、経済は冷え込むだろう。普通に考えて、同じ買い物をするのに2%くらい余計に払っても平気ですよ、という人が国民のうちどんだけいるのだろう。自分だったら、2%以上安い代替商品を探すか、そもそも買い物自体しなくなったりするだろう。
なるべく消費しない生活は、そもそも環境に優しいエコな生き方だ。大量にモノを買っておいて、断捨離するぞ、とか言う時代はもう過ぎており、はじめからモノを買わない、見ない、使わない、みたいな方向に文明は進んでいる。
経済成長が大切なのではない。人生をエンジョイすることが大切なのである。財務大臣が国債の償還できねえぞ、ということになった時に、一番大切なことは、自分がたまたま財務大臣であったり、国債の保有者であったりしないことだ、と思う。もう少し念を入れるなら、国債を大量に抱え込んでいるゆうちょ銀行や都市銀行以下の金融機関にカネを預けたりしないことだ。そうするために必要なことは、はじめから収入を低く抑えることであり、そのために大切なことはあまり働かないことだ。
南の島でまったく働かない少年は、さんざん働いて大金持ちになり、やっと南の島で暮らせるようになった時には年寄りになっている人物よりも利口である、というエピソードは、非の打ち所なく正しいと思う。

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