YOKOCHO（横丁）おやじ日記

　「アメリカン航空が経営破綻」というのが、日本の記事の見出しだが、米国企業がChapter 11を申請、ということがあると、たいてい「経営破綻」ということにされてしまう。それは、現実を正しく報道するものではないが、だからと言って、必ずしも記者の勉強不足とも言い切れない。要するに、日本で会社の資金繰りがうまく行かなければ、会社は倒産して消滅し、オーナー社長は一家離散みたいな悲劇になるのがお定まりなのに対し、米国資本主義は、そういう具合にはなっていない、という資本主義のつくり方に大きな差があるからだ。
　現にFinancial Timesあたりの見出しは、「AMR files for bankruptcy protection」となっていて、AMRというアメリカン航空の親会社が（この点でも、日本の記事は不正確だが）破産による保護を申請した、という表現をしている。すなわち、企業の経営者が資金繰りに窮して、借金の返済時期にカネを返せない、という事態になる場合、そのまま企業を解散して、売却した資産でカネを返すしかなくなると、もはや企業の命運が尽きてしまう。そこで、裁判所が入って、債権者に対しては、借金の棒引きをしろ、企業に対しては、経費の削減なり、余分な資産の売却なりをしろ、という手続きを強制する。要するに、既に日本航空でも行なわれていることが、今からアメリカン航空でも行われる、ということなのだから、日本航空が経営破綻しているのと同じ意味では破綻しているのだが、今日も日航機が飛んでいるのと同様、明日もアメリカン航空機は飛ぶはずである。（自分は、来年3月頃にフロリダに行く仕事を画策しているが、現段階ではアメリカン航空が最も格安なエアラインなので、別に何のこだわりもなく、アメリカンのチケットを買う積もりだ。）
　アメリカン航空は、今は止めてしまったが、サンノゼ・成田間の路線を持っていて、自分はよく乗った。サンノゼ空港の滑走路のせいか、アメリカンの方針のせいか、機体は必ずDC-11で、塗装をしない金属色のままの機体は、現在もそのままだ。当時、塗装をしなくても錆びないのか、という疑問ももちろんあったのだが、錆止めのコーティングだけで塗装をしなくても何の問題もないことは、これまでの飛行実績で明らかになっている。そして、塗装のためのペイントの重量分だけ、アメリカンは燃料費を節約し続けている。
　もうひとつ、アメリカン航空がIT業界で有名だった理由があり、それは、彼らが座席予約・発券用のコンピュータ・システムで最先端を行っていたことだ。SABREと呼ばれたそのシステムは、彼らがIBMにつくらせたのだが、IBMのその技術のもとは、米国内外の夥しい数のレーダー・システムからの情報を一元的に集約、敵爆撃機の来襲に対して、瞬時に迎撃機を飛ばす、というものだった。
　ともかく、予約端末から入力すると、たちまち自分の欲しい座席が予約できる、というシステムは、あっと驚く人口知能で、アメリカンはこれの御蔭で、経費も下がり、サービスも向上させることができた。このアイデアを初期のうちに取り入れて、しかしIBMには発注せずに、国産技術として成功させたのが、国鉄の「みどりの窓口」である。
　かくして、アメリカン航空は、いくつかの先進的な試みによって勝ち組と言われたのだが、いつしか電子予約も当然となり、ペンキ代の差だけで優位性を保つこともできず、今回の事態に至った。デルタ航空との差には、実は従業員の意識、という問題があり、アメリカンの経営陣は、業績悪化から従業員の給与引き下げなどを提案して交渉に及んだが、長く勝ち組の立場に君臨していた労組は、徹底抗戦した模様である。
　しかし、裁判所が介入すれば、債権者の要求も強制力によって退けられるし、従業員の待遇引き下げも強制的に実行される。経営者としては、自分の力で解決しようがなければ裁判所の権力を使える訳で、社会としては、存在価値があるのに資金繰りだけの理由で企業を潰してしまうより、それなりの社会的費用をステークホールダーに支払わせつつ、企業を存続させる道をつくっておくことが、資本主義を維持するために重要なインフラだ、ということである。
　Chapter 11は、資金繰りに詰まった企業を、とりあえず非道な債権者から守る制度であり、うまく行けば、その企業は復活するのが本筋である。とりあえず、強制着陸させられて、苦痛に満ちた点検作業を受けさせられることになるが、再び、大空にその雄姿を見せることだろう。その時期が、日本航空より早いか遅いかは、ある意味で、日米の資本主義力を比較する面白い指標になるのではないか、と思う。

　「白い恋人」の石屋製菓、「面白い恋人」の吉本興行を商標権侵害で提訴、って何やねんそれ。
　「面白い恋人」は、そのパッケージの意匠が「白い恋人」に極めて類似しており、商標権の侵害が明らかだ、っちゅうんやけど、はじめっからパクろ思うてやってんねんから、類似してな、洒落になれへんがな。始めっから似さそ思てんのに、似てるからアカンて、意味分からへん。正直、これは素晴らしい商品である「白い恋人」へのオマージュ作品でっせ。
　そやけど、何やな。オマージュであるなら、きちんとホンマモンに挨拶せえ、っちゅうことやろな。「荒野の七人」撮る時も、ちゃんと「七人の侍」の脚本をカネ出して買うたんやもんなあ。そら、その値段が250ドルだったっちゅうのは、何じゃそれ言う話やけど、吉本、きちんと石屋さんとこ行って、パクリ商品出しまっさかいに、その原版として、「白い恋人」１ダースばかり買いますわ、とか言うて、買うたったらよろしねん。そんなこともせんと、勝手に商売始めたら、今回は弁護士やったから良かったけど、次は紳助の友達が街宣車乗って来よるで、ホンマ。
　そやけど何やな、面白いことが分かるかどうか、っちゅうのが、その社会の文化レベルの指標やねんなあ。北海道やったら白いだけやけど、大阪来たら、これがオモロくなんねん。ところで、「面白い恋人」てフリガナ振ってへんけど、読み方は「オモロイこいびと」やろなあ。「オモシロイこいびと」言うたら、語呂悪いし、余りにもおもろ過ぎて、洒落にもなりまへんわ。
　しかし、橋下はん、きっちり当選させたったわ、どないや。「バカ文春」「バカ新潮」ちゃんとフォローアップする記事書けよ、ホンマ。まあ、あんなん読まされたら、結局、橋下に票入れたくなるやろ。それとも何か、あれは橋下選対のやらせやったんかなあ。
　いやあ、民主主義言うんはオモロイなあ。大阪都言うんはアホや、ちゅうヒトもおるけど、歴史上、日本に都はいくつもあんねん。大津も奈良も、もちろん京都も都や。東京みたいなんは、最近、都、名乗っとるだけで、太閤はんが首都機能を持たせたんは大阪やで。「プリンセス・トヨトミ」見たか？綾瀬はるか、ええなあ。いやそこちゃうねん。今は徳川に勝たせて、やりたい放題させとるが、東京行ったら分かるけど、関東平野はすべて関東ローム層の上に出来とんねん。つまりや、富士山爆発して、火山灰であの辺りは全て埋まっとんたんじゃ。ほいでやなあ、富士山の旦那、そろそろ起き出して来んねん。ドカーンと。灰で埋まったら、クルマも電車も動けへんよ。電子機器のご使用もあかんよ、そら。完全防水のケータイでなかったら、中が灰まみれになって動作不良なるわ。
　帝は御所行かはるにしてもや、内閣どないすんじゃ。我々は用意するよ、大阪城。天守閣で閣議したらよろしわ。360度パノラマや。見晴らしええで。永田町より、ずっと見晴らしええわ。大阪は、都としての機能、いつでも回復でけんねん。そしたら、まずあれやろなあ。NHKの本社は渋谷から大阪放送局に移転や。そしたら、アナウンサーの読むニュース原稿、すべて大阪弁に変更やで。当たり前やろ、新しい標準語やさかいな。
　ええなあ。「へ、ご機嫌よろしいか？今から7時のニュース、お送りしますわ。最初は、噴火被害からやけど、いやもう、これ大変なことになっとるで。現場から中継しまっさかいな。ほな、現場行くで。東京、そっちはどないだ？」

　いとやんごとなき方面の話題につきましては、当ブログのモットーである、穏便にして中庸、決してどなた様の気にも障らぬKYで無難な執筆方針により、ほとんど触れないで参りました次第でございますけれども、ナベツネ新聞にて「女性宮家創設」問題という記事が発信されまして、これはもちろん報道などというノーマルなジャンルのものではございませんで、ナベツネ御用新聞が、しかるべき筋から、しかるべき要請を受けて、しかるべき記事を掲載したことが誰の目にも明白な、しかるべき筋による、国民全般に向けてのコミュニケーション活動でございます。
　そうであれば、いかに穏便にして無難、温厚にして役立たずな当ブログといえども、やはり自らの意見を述べませんと、あたかも当ブログまで、国家の意のままに諾々と従う、意見なきサイレント・マジョリティの一環か、と手酷い誤解と中傷とを受けることにもなりかねないので、一言、愚見を申し述べます。
　さて、女性宮家の創設というのは、何であるかと言えば、皇室典範を改正し、現在の皇族に属する女性について、婚姻後にも皇族の身分を去らせるべきではなく、婚姻後は自ら宮家を創設して、皇族の身分を継続できることにしよう、という案である。
　しかし、そもそもこの案自体、論理的整合性に欠けている。まず、女性宮家なるものが創設されれば、どんなメリットがあるかということなのだが、それは、彼女らの子孫に男性が生まれれば、天皇の候補者の数がそれだけ増える、ということだ。しかし、その男性の母親は皇族であっても、父親がそうでないのなら、男系による相続、という原則に違反してしまう。男系の原則を維持するために、自ら男系の原則を破る、という奇妙なことになってしまって、論理が破綻している。
　それならば、天皇は男、という男系の原則を廃することにすれば、女性天皇を認めることになって、それはそれでひとつの解なのだが、男系天皇という原則を廃止することは、本来の天皇制を否定することになりはしないのか、という疑問は残る。
　問題は、現在のところ、皇位継承の最も先に見えているのは、悠仁親王であるけれども、現在の皇太子および悠仁親王の父の世代が過ぎた時、彼一人のみに皇統を背負わせて良いのか、という皇統の脆弱性ということである。
　だが、皇位継承者がきちんと存在しているというのに、もし皇統が絶えたら、などという不敬な想像をすべきではなく、万が一、ということはどんな状況でも起こり得るのだから、それはその時に考えれば良い話である。
　それでも、もしそうなったらどうするのか、という過剰な心配をする向きもあろうから、過去の歴史を繙くならば、例えば、英国のスチュアート朝が断絶した時は、ドイツのハノーバー朝を導入した。日本の場合、英国王室やオランダ、モナコなどから人材を招聘する手はあるが、やはり文化の継承という点で無理もあるかも知れないので、タイ王室とか、この間来日したブータン王室あたりが良いかも知れない。ただし、彼らは、中国や日本では小乗などと失礼な呼び方をされる、仏教の本流を篤く敬う方々であるので、皇室の神式の儀式には抵抗感が生じて、うまく行かない可能性もある。
　では、戦後、皇族のリストラによって断絶された宮家を復活させては、という意見もあろうが、一旦、皇族であることを辞め、一般人になってしまわれた方々は、それはもうレッキとした一般人なのであって、それをもう一度、というのは、これもまた失礼の極みである。
　そこで、私の意見としては、もはや日本人に一般人しか残っていない状況になったら、そこから天皇を選ぶしかないだろうと思う。具体例としては、祖父、父、本人と三代にわたって日本国籍を持つ男性全員の間で「じゃんけん大会」を開催し、そこで勝ち残った男性が天皇として、日本人のセンター・ポジションを取る、というものだ。天皇は、憲法第一条に定められている通り、日本国の「象徴」なのであるから、じゃんけんに参加できる程度の能力があれば、象徴として生きることは可能だ。もちろん、はじめからそんな地位に付きたくない者もいるだろうから、辞退は自由とすべきである。
　そもそも、ここで大切なのは、じゃんけんで勝ち抜くためには、本人の努力よりもむしろ「天意」が働くと考えられることである。最初に、これが日本国の象徴を決定する重要な儀式であることを天に向かって宣言するなら、おそらく天は最も相応しい者を選ぶことだろう。そして、一度誰かに決まれば、彼は養子として皇統に入り、男系相続がそこから更に続くべきであると思う。
　もし、かかる国民的じゃんけん大会が開催される運びになれば、私は当然そこに参加するし、もし私にその責務が与えられれば、（朕は）喜んでその義務を日本国民のために果たす積もりである。

　「社会保障と税の一体改革」は、年内に取り纏めようと思ったけれども、まあやっぱり来年に先送りしようかなあ、ということだそうで、大変結構なお話であると思う。
　そもそも、この「社会保障と税の一体改革」なるものは、そういう名前を冠してみただけのものであって、中身は、要するに消費税を引き上げる、というだけの話でしかない。そして、消費税を上げようとするなら、その前に民意を問うべきだ、というのが、自民党ならびに民主党内の一部の声であって、そこを強行突破しようとすれば、民主党が割れて、もし年内であれば、今なら政党交付金がもらえるから、という理由で、民主党が分裂する危険があるので、来年に先送りするのである、というのが、評論家諸氏の見立てであり、実際、民主党のいわゆる執行部もそう考えているのだろう。
　しかし、来年になったからと言って、状況は別に変らないので、消費増税を強行しようとすれば、民主党内に反乱が起きるのは、今年でも来年でも、まったく同じことである。そもそも、消費税を上げれば、財政と年金の危機を解決できるのかと言うと、そんな話は一向に聞いたこともないし、そうなる訳がない。とりあえず、財政と年金の危機を弥縫し、その結果として、危機を益々拡大させて次世代に引き継ぐ、というのが、その「一体改革」なる名称の「不改革」なのだから、その案に対して、少なくとも私の「清き」一票が投じられることはないであろう。
　こんなに日本の第一次産業も第二次産業も衰退してしまって、儲かってるのは、モバゲーだけじゃないですか、というのは事実だが、その原因のひとつに「社会保障」の考え方があることは間違いない。そもそも、衰退している産業に共通して言える特徴は何かと言うと、補助金を受けている、ということである。その理由は、カネの稼げない業種のうち、補助金の出ない分野では、その業種がもはや消滅しているのに、補助金の出る分野では、それが延命治療となり、心肺が（強制的に）活動しているからである。こうした延命治療のために、益々社会保障費が必要であり、そのために消費税を増税する、という政策を私はまったく支持しない。今最も必要な処置は、そうした延命装置の電源を落とすことである。そうでなければ、増大する支出によって財政が益々悪化し、日本国が破綻することになるからである。いわば、もはや本人の明確な意識もないような老人を、医者の勝手な我儘で延命させ、その治療費を負担すべき家族が首をくくらざるを得ないようなのが、現在の日本の構造だと思う。
　なぜ、死ぬべき病人を死なせないのかと言うと、担当医（役人と関係議員）が失職を恐れているからだ。それで、患者の家族が、その医者に向かって、「どうもありがとうございます」などと頭を下げている姿が、どうにも理解できない。
　経済的に、寿命の尽きた企業、産業は撤退するのが筋である。そうした連中がいつまでも利権を手放さないから、イノベーション力を持った若い連中には、一向にチャンスが回って来ないのだ。
　私は、消費税が7%や10%になったら、たちどころに生活苦に陥ると自分で思っている訳ではないが、少なくとも、余計な治療行為を行っている医師に、これ以上の治療を継続させることはご免である。
　消費税問題とは、補助金漬けの死ぬべき既得権益者を、いつまでもベッドに寝かせ続けるのか、さっさと彼らを弔い、次世代が新たな産業を起こすのを助けるのか、という政策の選択である。そして、私自身の選択は、もう既にはっきりしている。

　皆さん、こんばんは。今日の「ブラおやじ」は、御岳山です。
　「御岳山って、東京にあるのに、実はスカイツリーよりも高いんですよ。」という訳で、JR青梅線「御嶽」駅で下車しまして、西東京バスで「ケーブル下」まで、そこからケーブルカーで「御岳山」駅まで登ります。って、ここまで全然ブラブラしてない訳ですが、ここから海抜929メートルの御岳山にある「武蔵御嶽神社」の前を通って、「七代の滝」、さらに岩石が織り成す渓流美の「ロックガーデン」などを鑑賞してから、海抜1,022メートルの上高岩山経由芥場峠、鍋割山（海抜1,084メートル）、そして御嶽神社の「奥ノ院」（海抜1,077メートル）を廻って、また、ケーブルカー、バス、電車の順で帰った次第です。
　各ポイントの海抜だけ見ると、高低差が大してないように見えるんですが、これがのぼったり、くだったり、のジェットコースター型登山道で、途中、クサリ場あり、ハシゴあり、のアドベンチャー・コースになっているのでした。
　相方は、幼稚園から大学まで、すべての教育機関で同窓という人物で、彼の場合は、いまだにその生地である東京低地に住んでいるので、今回は、ほぼ東京を横断する大旅行になっております。
　本日は、相方に断わりもなく、その議事録の一部を抜粋して、お届けいたします。
　【駅で】
ー　すげえヒトの数だなあ。
ー　ここは、パワースポットという触れ込みなので、今日は若い者も結構いるが、このあたりのハイカーは、最近はほとんどジジイとババアだね。
ー　こんなにヒトが入ったら、かなりの自然破壊だろう。
ー　観光っているのは、元来、自然を破壊する行為だ。
ー　それを分かってて、自分も来るっていうのは、どういう了見？
ー　まあ毒を食らわば皿まで、っていう前向きな心掛けかな。
ー　それにしても、いくら暇だからって、こんなに団塊世代に押しかけられたら、自然だってたまったもんじゃないろう。（周囲の年寄りに聞こえるように）大体この人達は、若い頃は学生運動で学校を破壊し、今じゃ自然を破壊するって、どこまで壊せば気が済むんだ。
　【尾根で一休みしつつ】
ー　ここは、やけに岩石がゴロゴロしている地形だなあ。
ーもともとは、ユーラシア・プレートと太平洋プレートが噛み合っていたところに、フィリピン・プレートが伊豆半島っていうのを引っ張って来て、ガツーンとなって、こんなになったんだ。
ー　伊豆半島は、ヨソのプレートから来たヤツだったのか？
ー　地層を見れば、本州側とは全然違う。
ー　そう言えば、たしかヒマラヤっていうのも、インドがガツーンとなって、ああなったんだよな。
ー　だから、ヒマラヤは今でも成長してる。
ー　ところで、この石には、層ができてて、本来は海底の泥が固まってできたような気がする。
ー　じゃあ、石に聞いてみよう。（と言って、石を取り上げ、しげしげ見る。）
ー　どうだ。
ー　こいつ、答えない。
　【ケーブルカー駅近くまで下りて来て】
ー　このあたりまで来たら、結構きれいな紅葉がある。
ー　ああいうはっきり紅いのは、園芸種であって、野生じゃない。
ー　本物は、実はダサいのか。
ー　桜だって、ソメイヨシノは、人工的な雑種であって、自然には育たない。繁殖能力もないから、挿し木して増やしている。
ー　つまり、誰からも愛されるような目立つヤツっていうのは、実は人工物だと。
ー　自然の良さは、人間が手入れをしないと出て来ないので、人間が歩き廻れば自然破壊だが、それ以上に手入れをすることで、自然はもっと良くなる。間伐することで、残された木が成長できる、とか。
ー　実際、ここもそうして丹念に育てているのか。
ー　いや、そうできてないから、このザマだ。
　ということで、本日もいろいろ勉強になりました。

　昨夜の「ブラタモリ」の行き先は、荒川だった。
　冒頭、タモリが荒川土手の上から、「この川、人工の川なんですよね。」と語って、道中がはじまるのだが、私が下町の小学生だった頃、そこは、一般に荒川放水路と呼ばれており、わざわざ人工であると言わなくても、そんなことは、名称から自明だった。その当時、荒川というのは、隅田川の上流にあたる部分の川のことを指し、それは長瀞あたりを流れている自然豊かな河川だったのだ。
　この荒川放水路が造られるようになった経緯は、番組でも紹介していた通り、水害対策であって、それまでの東京低地は、水害の多いこと、まるで宿命のようなものだった。一番最近あった大きな被害は、自分の兄が生まれる直前のことで、妊婦だった私の母が自宅の二階に家財道具と一緒に避難していたのだから、その姿は、おそらく今年のバンコクでたくさん見られたような光景だったと思う。もっとも、その頃、荒川放水路は既に存在していたのだが、そこからたくさん分岐している運河の水嵩が高くなって、水はそこから溢れたのである。その後、張りめぐされている運河のいたるところに水門が作られ、流水は、今ではすっかり行政の監視下に入ってしまっている。
　「オレは、子どもの時分、大川で泳いでた。」と父親が語る時の大川は、現在の隅田川で、当時、荒川放水路はまだ建設中だった。建設には、関東大震災を挟んで何十年も掛かり、ようやく完成したのは、もうすぐ戦争にでも入ろうか、というような昭和初期である。
　大体東京の地形というのは、武蔵野台地とそれ以外に分かれる。それ以外というのが、低地にあたるのだが、江戸の街がそれこそ人工的にできてからの都市開発の進み方を見ると、今では隅田川と呼ばれる大川の西側、すなわち台地に接触する側と、大川の東側、すなわち川向こうとで、異なった発展を遂げた。台地の隣接地には、浅草、銀座、高輪などが発達したのに対し、川向こうには、柴又、向島、両国などがある。
　すなわち、台地の上の住人からすると、ちょっと降りて来て、買い物したり、芝居見物したりするのは、大川までの地域で、その向こう側ともなると、よほど特殊な目的がなければ足を運ばない。
　我々がまだ高校生の頃、東京都には学区制という制度があり、荒川右岸の墨田区、江東区と、左岸の葛飾区、江戸川区が、一緒になってひとつの学区を形成していたため、そこに住む我々は、浅草や銀座というバッファーを挟んで、その向こうには、台地の人々が住んでいることを知ってはいても、そことは、一応、文化的に切断された東京低地というエリアが我々のテリトリーである、と意識していた。下町を、山の手と対峙する、ダウンタウンであると定義すると、我々のテリトリーは下町と表現されるべき地域ではない。下町とは、浅草や銀座のような繁華街を指すべきであって、その「向こう」に広がる地域は、敢えて名付ければ、東京低地なのである。それは、台地側とは別の都市と言ってもおかしくはない。
　日本列島改造論の結果として、工業製品のように画一的な風景が日本中に氾濫してしまったが、今世紀は、むしろ画一的であることによって効率的だったあらゆるものが分解され、差別化される時代だと思う。荒川をつくり、水を支配できるようになった今、東京低地には、台地側とは別の文明が起こっても差支えないはずだと思う。高校を卒業してから後、自分もすっかり台地側での生活が長くなったが、もし低地側に面白い文明社会ができるのだったら、再びそこに帰ってみたい気もする。

　そう言えば、TPPネタで話が及ばなければいけないテーマに、遺伝子組み換え技術ということがあった。TPPを始めたら、今の日本で表示が義務付けられている「遺伝子組み換え作物」表示が、自由競争を阻害する誤った規制ということにされて、ISD(Investor State Dispute)条項に基づき、訴えが起こされて、これに敗れれば、アメリカ同様、非表示の食品が出回る。すると、日本人は米国発の遺伝子組み換え食品によって殺されてしまう、という論法である。
　もちろん、この話が正しければ、日本人が死ぬ前にアメリカ人の方が先に死んでいるはずだし、せっかくの消費者を殺してしまっては、企業の側でも具合の悪いことにはなるだろう。アメリカでも食の安全という議論は、政治のテーマとして、大きな話題になっているのであって、我々としては、農協が駄目だ、ということもさることながら、遺伝子組み換えが駄目なのか、についてもきちんと検証をしておく必要があると思う。原子力の平和利用をムードで容認しておいて、またしてもムードで反原発を言うようなちゃらんぽらんな態度では、とても21世紀の市民である資格はない。
　さて、実務的には、アメリカで遺伝子組み換えを大きな事業として行なっているのは、ロックフェラーから多額の開発費を得ているセントルイスにあるモンサント社で、彼らは莫大な開発費に任せて、商用遺伝子組み換え作物の種を90％のシェアで販売していると言う。そして、それを実際に農家に売って歩いているのが、穀物商社のカーギル社である。もし、日本で遺伝子組み換えがやり放題になれば、彼らにとってはもちろん大きなビジネスチャンスであろう。（農協は、TPP反対を言い続けても、最後には寝返って、カーギル社と契約し、遺伝子組み換え種の独占販売権を得る、というビジネスプラン、いかがだろう。）
　ところで、なぜ遺伝子組み換えの表示が義務付けられているかと言うと、それは自然のままの作物とは異なるリスクがあるからだとされる。もちろん、遺伝子組み換えがされている場合、それを食べたら死ぬ、と決まっているなら、今頃アメリカ人は大勢死んでいるだろうし、そもそも禁止されるに決まっている。欧州でもこの表示が義務付けられているのだが、日本の場合でも、基本としては、カーギル社による流通支配を防ぐための、地元食品流通業界からの圧力によるのではないか、と思う。カーギル社から種を入手できなければ農業が成立しない、ということになったら、それは確かに安全保障の問題に通じる。
　遺伝子組み換え表示義務は、まさに一種の非関税障壁で、それによってモンサント社が開発し続ける作物の種がなければ農業が終わる、という最悪の事態を防ぐべきだ、と考えるのは、それもひとつの見方だろう。だが、現実問題、遺伝子組み換えが、そんなにすごい効果を発揮しているのかと言うと、そうでもないような気がする。これが非常に威力を発揮しているケースは、例えば綿花で、これはもうインドでも中国でもほとんどがこの組み換え種によるもので、それは非常に丈夫で面積当たりの収穫量も多いため、農薬量が少なくて済み、耕作面積も小さくて済むらしい。しかし、そういう具合に、素晴らしい効果を上げられる例は、実際には、あまり多くないのが、現実ではないのだろうか。
　日本ではサントリーが遺伝子組み換えで「青いバラ」を開発し、商用に成功しているが、だからと言って、一般のバラ農園が困窮するかと言うと、そんなこともない。
　遺伝子組み換え技術は、神を恐れぬ不埒な科学だ、という見方もある。そもそも現在の生物の種は神が創造されたのであるから、人間がそれに手を加えるべきではない、という律儀な見方だ。しかし、私はそれに賛同できない。神は確かに多くの生物種を創造されたが、人間には他の生物種とは異なる特殊な性質を付与されている。それは、神の創造の仕組みを科学的に理解し、それを応用できる、という能力である。そもそも人間が神を認識し、神を敬うという点から、人間はサルと大きく異なる。神としては、ヒトに自分を認識までさせてしまった以上、その創造力をパクられ、模倣やあるいは改善をされたとしても、失礼だと思うよりはむしろそれを楽しむに違いない、というのが、私の想定だからである。
　原子力はやめろ、と言うのも、遺伝子組み換えはやめろ、と言うのも、自分としては、人間らしくない過剰な自虐趣味だと思う。それのどこを利用し、どこを制限するかは、人間の倫理責任である。自分の倫理感に責任が持てないから、はじめから何もしない、とまで言うのだったら、そういう人間は、そもそも生きない方が世のためだろうと思う。

　フランスのサルコジ大統領、ドイツのメルケル首相に対して、EUの権限を拡大させようと提案したそうで、具体的には、各国の予算策定に対して、介入できるようにしたい、ということらしい。
　予想通りの動きで、EUは、まず貿易、続いて通貨、そして今度は財政と、徐々に統一の方向に動いて来ている。ギリシャ、スペイン、そしてイタリアと、続々財政破綻の声が上がれば、これを救済せざるを得ないが、その条件は極端な緊縮財政だ。しかし、これらラテン系の諸国が、自分たちだけの力で財政改善を行うことも困難だろう。と言って、EUが介入すると言っても、EU自身が持っているのは事務的な権限に過ぎず、結局それを動かすのは、経済的にはドイツ、政治的にはフランスというのが、サルコジ大統領の狙いだろう。
　しかし、そんな風に隣国の財政にまで口を突っ込むなど、ドイツ人としては、やりたくもなかろう。そもそもラテンのキリギリスが冬になったら餓えてしまう、と言ったって、そんなことも知らなかったのか、バカじゃないのか、とアリであるドイツ人は思うだろう。あるいは、そんなに言うなら、オレ達が支配してやろうか、という元気で物騒な連中もいるから、よけいに厄介だ。
　しかし、ドイツのアリのことを心配していると、そのうち、日本というアリにも難題が降りかかる可能性がある。アメリカの金融危機再び、という事態になった時、前回の（おそらくは第一次と呼ぶべき）リーマン・ショックでは、基本的にウォール街が問題を解決した。もちろん、そこに英国も登場しかかったし、三菱UFJが90億ドルの小切手をモーガン・スタンレーに切ってやったりもしたが、まだしも連邦政府の財務長官にはやりようがあった。
　ところが、次回の金融危機が来た時、連邦政府もまた破綻の危機に瀕していることは間違いない。すると、彼らはどこかにディープポケットがないか、と探し始める。中国、ロシア、いずれもその資金力は小さく、政治力学上の困難も大きい。英国が有力な候補かも知れないが、英国は、自分から喧嘩別れした米国を救済する道義的責任を持っていないし、むしろ対岸の欧州財政危機の方が、優先順位の高いアジェンダだろう。
　そうなると、だ。誰がアメリカを救うのだろうか。オバマ大統領は、突然電話を取り上げ、こう言うのではないか。「オレだよ、オレ。やばいことになっちゃってさ、カネが要るんだよ。カネ。そうだなあ、とりあえず、1000億ドルくらい、準備してくんねえ。すぐATM行ってさ。口座番号今から言うよ。・・・」
　世の中、何が起こるか、分かったものではない。こんな時、慌てて本当にATMに走ってはいけない。「あんたねえ。こんなことになる前に、どうしてきちんと相談してくれないの？まず、ウチに来て、はっきり説明してちょうだい。」ということで、ここはじっくり話を聞くべきだろう。そして、破綻しそうな金融機関のふたつやみっつ、日本の銀行に言って、買収させても良いだろうし、何かとの交換条件で、米国債を買い増しても良いだろう。
　日本国債の発行残高は天文学的に大きいが、それを消化しているのがほとんど日本の金融機関とその背後にいる日本国民なのだから、日本という国には本当に余剰な資金が唸っているのである。それで一体何をすべきか。カネに困っている人がいたら、当然助けるべきだし、そのカネの替わりに、日本としては、欲しかったものを手に入れるべきだろう。自分だったら何が欲しいかと言うと、まあハワイだろうか。

　大学生の就職決定率は、現在の時点でも約6割に留まる、ということで、大学に入るのは容易であり、卒業するのはもっと容易なのに、卒業後に就職するとなると、いろいろ面倒な事態に陥る場合があるというのが、現実なのだろう。
　たとえば、東海大学体育学部4年に在学中のスガノ君の場合、彼の希望職種はプロ野球選手というものである。しかし、残念ながら、その就活は、決してうまく行っていない。つまり、彼は、現時点で就職決定していない4割の方に属している。それは、彼に希望職種が求める能力が不足しているためかというと、そうでもないようだ。彼は日米野球でも活躍したし、首都大学リーグでも立派な成績を残している投手だ。
　問題は、プロ野球選手の採用にあたっては、独自ルールがあり、多球団から指名があった場合、ドラフトに掛けられて、入団交渉はドラフトで決定された球団との間で行うことになっているからだ。彼の場合、巨人と日本ハムから指名を受けた。そしてドラフトで交渉先と決められたのは日本ハムである。そして、多くの同期が、ドラフトで決定した球団との間で契約成立したのに、彼は日本ハムを嫌って、就職浪人を覚悟している、と言う。
　そもそも学生の間に部活で目立った活躍をすれば、球団側から指名を受けて、ドラフトに掛けられるのは、ルールである以上、彼も知っていたはずだ。ところが、どうやら彼は、以前から自分の行きたい球団は巨人であると公言しており、本当に巨人に行けると信じていた節がある。
　今は野球の解説をしている野村克也氏は、日本シリーズの解説でも何度も語っていたが、「野球は『備え』だ。」と述べている。相手のあるゲームである野球の場合、どんな展開が待っているか分からない。そのどんな場合にでも対応できる「備え」をしておくことで、打てる確率、抑える確率が高まるのであり、どうせこうだろう、というような思い込みでプレイすると、クルマの運転と同じく、とんでもない事故に会う。この「備え」の問題は、野球だけではなく、自分の経験からすると、営業でも同じだ。顧客はこうするだろう、他社はああ来るだろう、という想定までは誰でもするが、でもこうなったらどうするのか、ああだったらどうしよう、というあらゆる場合を想定して、すべての場合に備えている営業が、結局は多くの受注を獲得できる優秀な営業ということになる。
　そもそも、彼はなぜ巨人に行きたいのかと言うと、伯父さんが原辰徳だからだ、とされる。原氏は、確かに巨人の監督なのだが、投手であるスガノ君が、なぜ内野手だった伯父さんのいるチームに行きたがるのか。しかも、客観的に見て、原監督がいつまで監督でいられるかは、その実績から見て、非常に怪しいもので、彼は早晩巨人を去るはずである。
　その昔、常勝巨人という時代があって、巨人は日本のプロ野球を代表する球団だった。（私も少年マガジンの「巨人の星」を愛読していた。）しかし、巨人が絶対王者だったのは、原伯父さんが入団する遥か昔の話で、伯父さんが巨人の4番を打っていた頃には、巨人は既に普通の球団であり、伯父さんも普通の打者でしかなかった。大体、この伯父さんは、野村氏の言う「備え」がろくにない点で、野球選手として見習うべきところが少ない。選手時代からチャンスに弱い。どうでも良い場面になると良く打つ選手だった。監督になってからもそうで、「備え」がないから、場当たり的に采配するので、新橋の飲み屋でくだを巻くサラリーマンからも馬鹿にされている。実際、戦力だけはすごいのに、バタバタ負ける現在の巨人の姿は、情けないだけである。（もし原監督が優秀だったら、キヨタケ氏だって、楽しく今年の年末を過ごせるはずだった。）
　そういう巨人にどうしても入りたくて、浪人する、という方針を貫くのもどうかしている。来年、また別の球団が交渉権を得たら、さらに浪人を続けるのだろうか。ドラフト制度の本質は、球団に就職するのではなく、業界に就職する、という考え方である。業界として、日本ハムに交渉権を与えた以上、その業界に就職したければ日本ハムに入団するのがベストであり、その後、別な球団に移籍するメリットがあるとすれば、そういうことを考えれば良い。
　今年の日本シリーズでMVPを獲得した小久保裕紀選手は、巨人と、当時もっと弱小だったダイエーの2球団から指名され、当時は存在していた逆指名制度で、ダイエーを選択した。結果的に、彼はダイエーで、王貞治、秋山幸二という偉大な打者の薫陶を受け、現在のソフトバンクという日本一のチームの要として、大活躍している。巨人というブランドは過去のものである。今ですらセ・リーグ3位の巨人より格上のパ・リーグ2位日本ハムのどこが気に入らないのか、自分には分からない。日本ハムには、ダルビッシュ有という偉大な投手が居り、彼がアメリカに移籍するとしても、日本ハムには、その伝統が残る。投手として、決して悪い環境であるとは思えない。
　自分の希望が通らないからと言って、安易にチャンスを逃すのは、就活生スガノ君にとって、あまり良いこととも思えない。プロ野球の中で巨人は特別な球団だと信じ込んでいるような、アタマの悪い祖父や伯父の言うことを聞いていると、自分の人生を誤ることになりかねない、と自分は他人事ながら心配している。

　今度の日曜日は、大阪の政治決戦で、新たな府知事、市長がともに決まる。橋下市長候補者に対する個人攻撃が週刊誌にガンガン出るようなことになっても、彼は一向にめげることなく、むしろ元気百倍といった雰囲気で、選挙戦も優勢な状況だとも報道されている。
　そもそも彼の主張は非常に明快で、それは「大阪都」を実現することである。
　「東京都」の石原知事も語ったように、「都」は日本にひとつあれば十分で、あっちにもこっちにもある必要はないのだが、現在の大阪府と大阪市は二重行政で、発展のためのプランも描けない、というのは、事実だろう。東京都庁は、役人が百鬼夜行する伏魔殿であるとされるが、大阪市役所はそれ以上にひどいものであるらしく、直接霞ヶ関と対峙する必要もなく、それでいて巨大な財政を運用しているのだから、コンプライアンス面から見ても、やりたい放題になりやすいことは疑いない。
　そういうことで、大阪をいかに変えようとしても、大阪市という巨大な抵抗勢力に阻まれて何もできない、ということになれば、いっそ役所を潰そう、というのが、彼の構想である。
　東京にも、昔は東京市があったのだが、戦時中になくされてしまって、東京都に一本化された。おそらく戦争遂行のためには、帝都の行政機構も国家によって統制しやすいことが大切で、地方自治は後退させるべきだ、ということがその理由だったのだろう。
　現実問題として、「都」と「市」の二重組織が必要かどうかということになると、結論は『不要』だろう。たとえば東京オリンピックを招致しよう、というアイデアが出ても、ふたつの行政機関が、それぞれの思惑で自己主張をするなら、物事はちっとも進まないだろう。
　正直、大阪都というネーミングは誤っていると思うが、大阪府を残存させて大阪市を廃止し、その代わり、区役所機能を強化することは正しい方策であろう。現在の大阪市役所の職員は、それぞれの役割に応じて、大阪府に移籍するか、区役所に移籍するかすれば良い。東京の場合で言えば、区役所の規模は普通の市役所並みのサイズであるから、現状、ほとんど中身のない大阪市の区役所には、大勢の公務員が入り込む必要がある。区議会を数多くつくれば、議員が増え過ぎる、との意見もあるが、地元議会でもなく府議会でもない、中二階のような大阪市議会を存続するより、ずっと意味があるだろうと思う。
　もし、そうやって、大阪の行政一本化が実現すれば、同じ府政を施行している京都府の場合にも、同じ理屈が言える。調べて見れば、京都府の人口の半分は京都市民である。これまで京都という古都を守って来た人々が、今度は京都府というより大きな単位で行政を行い、霞ヶ関とも直接折衝するようになれば、京都のプレゼンスも高まり、京都という観光資源を国家的規模で活用する上でも、何かと便利になると思う。
　かくして、東京、大阪、京都、北海道が、なぜ「県」ではないか、ということもよりはっきりするので、結構なことではないのかと思う。愛知県の名古屋市、広島県の広島市、福岡県の福岡市が必要か不要かについては、何とも言えないが、その判断は大阪、京都で、やってみればどうなるか、を検証してからでも遅くはないだろうと思う。
　ともあれ、権力はあるのに責任はない、というおいしい立場にある大阪市と京都市、潰すぞ、という声には十分な理由があると思うが、それもあくまで地元の人々の意向次第なので、今回の地方選挙の結果については、関東地方の田舎者に過ぎない自分も、興味深く見守っている。