防衛省の守屋元事務次官、とうとう国会にまで引きずり出されて、喚問を受けた。業者との関係がボロボロとばらされているのだが、どうしてこんな事態になったかと言うと、山田洋行なる会社の元専務という人物が、独立して新会社を旗揚げしたところにそのきっかけがあったようだ。もともと防衛省御用達の防衛商社だった山田洋行、米国GE社の日本における代理店であったのだが、独立した元専務の起こした会社にその代理権を奪われた。商社にとって商権は命より大事なものだ。それをライバル、と言うより、飼い犬に手を噛まれて奪われたとあっては、到底許せないことであろう。商権を不当に奪われたとして、この元専務の会社を裁判所に訴え、目下、係争中であると言う。
GE社の方は、防衛省への納入が可能でありさえすれば、商社なんか誰でも良い。実際に代理店を変えたところを見ると、こちらの商社の方が筋が良い、と判断したのだろう。では、そう判断した根拠は何だったのだろうか?それは、代理店に何を言われたかで決めたのではなく、顧客自身の声を聞いて、そう判断したものに相違ない。商社を変更するからには、それなりのしっかりした情報に基づいていたはず、と自分は思う。
ならば、GE社は、誰からはっきりした「顧客の」意思を聞いたのだろう。自分が売る側なら、顧客のトップに聞く。装備調達における最高の意思決定者は守屋次官であり、彼の明言があったから代理店を変更した、というのが、ビジネス的には最も納得のできる説明だろう。
一方で、商権を奪われた側は、どうするだろう。この山田洋行なる企業、土地バブルがはじけて金融危機になった時、時の住友銀行の不良債権処理を助けるために協力を惜しまず、ヤバイ不動産を取得して廻るような行動をしていたらしい。この社長、いわゆるやり手であろう。当然、巻き返しを図ったはずである。そこで、自分の敵になった者を成敗することにしたものと推測される。
事務次官の任命権者は防衛大臣である。そして、現に防衛大臣だった小池百合子氏が、守屋次官(当時)の更迭を、本人の意志に反して、突然に発表した。今にして思い当たることは、この事務次官人事を巡るゴタゴタの背後には、防衛利権を巡る商社の社長対専務の社内騒動があったということである。社長側には、恐らく久間章生氏、小池百合子氏がいる。そして、専務側に守屋元次官がいたのであろう。
そんな具合に考えると、この問題、国会議員が何人もよってたかって税金使って議論をしているのだが、ことの本質は、要するにある企業の社長と専務による遺恨試合であるに過ぎないのかも知れない。そうだとすれば、そのどっち側が正しいか、なんて、考えるだけで時間の無駄使いだ。狐と狸とではどちらがよりケダモノか、という議論には、別段正解なんてありもしないと思うからだ。そんなことより、別の種類のケダモノ同士が密室で会談した、ということの方が、よほどニュース・ヴァリューのあるテーマだろうと思う。

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