中華航空の機体が火を噴いた事件について、日本での取り上げ方は、整備に重大な問題がある、という非難なのに対し、台湾での取り上げ方は、火事になったのに被害者が出なかったのはすごい、という対処の良さに対する賞賛であると言う。
そもそも航空会社が使用する機材には、二通りの種類がある。日本航空や全日空などは、ボーイング社やエアバス社に直接新品を発注する。そして、古い機材は中古市場に出す。他方では、この中古市場でしか機材を購入しない航空会社がある。中華航空もそうであるらしい。
自分もエジプト航空を使ってカイロに行った時に発見したのだが、アラビア語や英語で表示をしているのは、実はシールを貼ってあるだけで、糊のはがれたその下には、日本語の表示が書かれていた。つまり、その機体は日本で使い古された挙句、エジプト航空に安く買い取られ、国際線に就航していたのである。
そもそも一機で何十億円もする新品の飛行機などカンタンに買えるものではない。そして、機体が古ければ古いほど、メンテナンスだって大変だ。そうやってだましだまし飛ばしている飛行機なのだから、たまには火事も起ころうというものだ。乗る方だって、そんな飛行機であることは百も承知で乗っている。そして、たまたま火災に会えば、それは運が悪いということなのだが、運が悪いことが起こったのに、機長がうまいこと事態を収拾して、乗客に被害がなかった、ということは、機長がいかに偉いか、と拍手を送りたくもなるだろう。
航空会社なのだから、安全には万全を期せ、というのはもっともな正論だが、それは『食べるパンがないのだったら、お菓子を食べれば良いのに』とのマリー・アントワネットの発言(伝記作家ツヴァイクの創作らしいが)にも似る。もし「安全」にカネを掛けられるのだったら、おろし立ての飛行機を買って、部品だってどんどん交換する。そんなことができないから、火事が起こるかも知れない飛行機を運行させているのである。
安全がお望みなら、高い料金を払って、一流の航空会社を使うべきであり、冒険好きなら低料金の航空会社を使えば良い。モーテルに泊まっていながら、リッツ・カールトンほど快適でない、と文句を言っても、なかなか聞いてはもらえないだろう。

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