私に給料を支払っている会社では、給与明細を電子メールで本人に通知している。それで、6月分の給与明細が連絡されて来たので、開けてみたところ、「これはまずい」と考え、早速、その明細と先月送られて来た5月分の明細とを印刷した。
何がまずいかと言えば、6月分の給与では「住民税」が増額されていたために、手取りの金額が減る、という現象が生じていたからだ。
家に帰って、女房に、「おい、今月から給料が減るぞ。」と言うと、「何で?」「住民税が増えるからだ。日本中がそうなっている。」「そんなこと、知らないわよ。」やっぱりだ。「日本人ならたいがい知ってるよ。ほれ、これが明細だ。」「税金、いくら増えたの?」「△万△千円。」「えー?じゃあ、その分余分に稼いでよね。」「そうだな。この家の誰かが、それくらい稼いで欲しいもんだ。」
ということで、何とか責任を「この家の誰か」にすりかえて事なきを得たのであったが、うっかり「何だか、振り込まれたお給料が少ないわよ。」などと先を越されたら、面倒なことこの上ない。そういう家庭も今月の日本には何軒もあったのではないか、と心配している。
世の中の情報に詳しい向きは、6月から住民税の「減免措置」が終わることと、同時に「所得税減税」と「住民税増税」のために、住民税の増額が発生することを理解しているのであるが、情報難民である(ただし、テレビのワイドショーを除く)自分の女房などは、そんなこと露ほどにも知らない。しかし、彼女らの場合、自分が使えるカネが減れば、敏感にそれを嗅ぎつける能力だけは強力なのだ。
こんな事例ひとつ取っても、政府・マスコミ・国民の力関係がうまく機能していないことが分かる。消費税導入みたいに目立つ変化ならマスコミの話題に乗っても、国税から地方税に歳入を移転することが国民の立場ではどういうことなのか、などについては報道もろくにされず、税制調査会みたいな秘密クラブでさっさと決めてしまっている。だから、実際に給料が減ってから、「あっ」と驚くような始末だ。源泉徴収であるためにろくに税金に関心も持たなかったサラリーマン階級は、これを機会に、税金についての情報提供をもっとマスコミに要求すべきだろう。さもないと、身に覚えのない変化のために、サンドバッグにされる被害者が多数現われるのではないかと、危惧をしている。

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