大統領一般教書演説、と中国語(?)訳してしまっては、この熱気は伝わらない。今夜は、大統領が「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」を語る晩だったのだが、ワシントンDCでは夜9時に始まるテレビの生中継が、カリフォルニアでは6時からなので、仕事をバタバタ片付けて(と言っても、パソコン上に開け散らかしたファイルをひとつづつクローズするだけなのだが)急いで帰ったのだが、既にそれは始まっていた。
CNNをはじめ、そこらのニュース番組では、全てのチャンネルでこれを中継している。大統領の語るフレーズの一言一言に拍手、それも非常にしばしばスタンディング・オベーションが入るので、聴衆は何度も立ったり座ったりすることになる。但し、どこで立ち、どこを無視するかは聴衆自身の判断なので、全員総立ちのこともあれば、明らかに共和党議員だけが立つこともあるし、またごく一部のひとかたまりだけが立つこともある。元来は上下両院の議員を相手に語るのであろうが、最高裁の裁判官の一群も来ているし、ローラ・ブッシュ夫人の隣には来賓のようなイラクの女性も座っている。
テレビを見始めた時には、まだ外交問題を語っていた。圧政からは、いかなる人類も解放されなければならない、と説く。確かに、それはアメリカがアメリカであるための根本精神だ。イランに核兵器を持たせてはならない、というような具体論を改めて明確に言う。さらに、減税は恒久化されるべき、石油依存の社会から、ゼロ・エミッションの石炭火力、風力、原子力などを用いたエネルギー源へと転換し、石油への依存度を20ないし25%にまで引き下げるべきだ、と論じる。
さらにはまた、子供たちには数学と科学を勉強させなければならない、とも言う。そうしてこそ、国際競争力のある強いアメリカであることができるのだ、と主張する。
議員たちと同じく、テレビの前の聴衆も、拍手したい時もあれば、ふざけるなと思うところもあるだろう。実際、大統領が通信傍受を合法化するパトリオット法を語った時には、議場内に白けた雰囲気も漂った。内容のひとつひとつには色んな反応があるとしても、こういう時に、アメリカのリーダーがどんな価値観を持っており、何をしたいと思っているのかを改めて知ることができるのは、民主主義にとって必要なことだ。
テレビでは、この演説の後に、民主党の反論という時間が設けられており、今回は、バージニア州知事であるティム・ケイン氏が、ブッシュ政治の各論に対して、"There is a better way." とのフレーズを繰り返し用いて、極めてソフト・タッチな反論をした。
好みの問題ではあるけれども、経済や福祉より、むしろ倫理や正義の方を多く語るブッシュ大統領のスピーチを、自分はかなり気に入っている。

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