母の胎内に入り込む前の「私」がいる。
母の胎内で育つ「私」がいる。
母の胸に抱かれる「私」がいる。
私が私として少し母を離れた「私」がいる。
様々な体験を通して育つ「私」がいる。
他を認め、折り合いをつけながら生きる「私」がいる。
他から認められ、私が私自身を私らしく自由に生かせる「私」がいる。
終の床に横たわり、死に行く私を見守る「私」がいる。
「死」を体験することなく、この世を去ってしまっている「私」がいる。
『私』とは全ての「私」の中に営々と住み続ける者である。
住まい手であり、「私」の占有者である。
しかし、それでも「私」は『私』を見つけることは難しい。
『私』は見る者であり、「私」は見られる者であるから。

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