家を失い、土地を失い、所持金さえも失い、それでも支えてくれる妻がいた。
技術力を蓄え、経営経験も積み、傾きかけた会社でリストラされても、そういった私の歴史を買う企業がいた。
高額な生命保険に自殺という2文字が脳裏をかすめたこともあったし、睡魔に襲われた運転をそのまま続けたこともあった。
眠気はあるが眠れない夜、気付くとまだ夜中、そのまま眠れずに妻の顔を最後かもしれないと見ていた夜もあった。
ほんの一口の飯しか食べられず、みるみる体重も減った。
気付けば月に数百円しか使っていない期間が2年も続いていた。
それでも、なんとか生き続け、先の見えない期間を耐え、豊かになったとは言えないが、それでも子どもは独立し、義理の親と同居、報酬は減ったが支出も減り、精神的にはゆとりも出てきた。
辛いことのあとには幸せなこともある、そんな言葉が気休めだけではないことを感じている。
耐えた者の勝ちなのだ。

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