暑くも寒くもなく
静かすぎない夜
寝床の中に入って感覚を一つずつ消滅させていく。
味覚はすでに感覚の外
目を閉じ、視覚を消去し
聴覚も、臭覚も、感覚の外においやる。
寝床の温かさの中で、布団の重みの中で
触角すら希薄にしていく。
意識を感覚からそらせばいい。
外部からの刺激にいっさい意識を向けることなく
「我」がどこにいるのか探しだす。
腕の位置の記憶
足の位置の記憶
腹、胸の位置の記憶
そういった身体的な「我」の位置も忘れてしまう。
「我」はどこにあるかわからないけれど、少なくとも身体の「どこか」ではないことを身体の一部を失っていくことを想像しながら確認する。
どこまで、何を削っても、「我」は確かにある。
きっと最後には「探している」こと自体が「我」であることに気付く。
「探している」主体が「探している」以上、「探している」対象を見つけることはできない。
そして「我」とは「ある」ということであることに気付く。
唯一「ある」を実感できる存在としての「我」
そしてそれは、「全て」「宇宙」と「一」なのである。

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