さて、高校時代にバンドでコピーすることになったのを機に、改めて聴き直したらタッピングやらアーミングやら派手なプレイ以外に、地味だが凝った部分が多いことに気付いた。例えばLight Up The Skyのバッキングで8分単音を刻みながらトップのコードの長さを色々変えるところなどである。またリズムもいつも安定していて、歌の合間にトリッキーなオブリガートを入れても自然にバッキングに戻ってくる。当時は「ギター・オーケストレーション」という言葉が流行ったくらい、ギタリストが一人のバンドでも何重にもオーバーダブするのが当たり前だったが、彼はほとんどそれをすることもなかった。さらにファーストでは、ボーカルと同じくらいギターが大きくミックスされていたのも驚きだった。
もちろん、間にライブ・アルバムやらコンピレーション、他プロジェクトのリリースはあったが、この分では次のアルバムはでるのかという危惧さえ抱いていたが、さすがに前作「Scratch My Back」ではインターバルが縮まった。それでも8年かかったのだ。次はもうないかも知れないと思っていたところに、嬉しいことに新作が発売された。それもわずか(!)1年半という短いインターバルである。
前作「Scratch My Back」は意表を突いたアルバムだった。ゲイブリエルお気に入りの楽曲をカバー、それも電気楽器は一切使わないというものだった。コンセプトは面白かったのだが、アレンジが地味で暗い印象のアルバムだった。だから、今回のライブ・アルバムの発売が発表されても、正直それほどときめかなかったのだ。
しかしそれからオフィシャル・サイトでコンサート映像やメイキングがアップされると印象が一変した。当然コンサートでは前作「Scratch My Back」の曲に加え、彼のこれまでの楽曲をセットリストに加える必要があった。そこでこれらをオーケストラ用に再度アレンジし直したのだ。アレンジャーは前作と同じくジョン・メッカーフが担当しているのだが、印象は前作とは随分違う。