小学校も高学年になった頃、クラスメートの優等生に誘われて校内の図書室によく通った。その頃の自分の興味はもっぱらSF、江戸川乱歩、モンスター、宇宙人だった。特にSFは何冊も借りたはずなのだが、唯一強烈な印象に残っていたのがロバート・シェクリーの「不死販売株式会社」である。
実はタイトルはすっかり忘れていたのだが、いくつかのキーワードを覚えていた。「来世」、「ゾンビ」、「自動車事故」、「未来」といったものだ。そこでネットで検索してみたところ、ずばりヒットしたのがこの「不死販売株式会社」である。
ところで、当時はあの大ヒット映画「ゾンビ」もまだなかった1970年代中盤だったので、ゾンビという言葉はこの小説で初めて知った。
1990年頃に「フリージャック」とタイトルを改め、ミック・ジャガー、アンソニー・ホプキンスらをキャストに映画化されていたらしい。もっとも、映画はかなり原作と設定が異なるようなので、見たとしても違和感があっただろう。
さて、数十年振りに読み直して改めて思ったのは、この小説が書かれたのが1958年だったとは信じられないくらい斬新だということである。小学生当時はてっきり1970年代に書かれたものだと思っていたのだ。
1958年に自動車事故で「死亡した」主人公が目覚めてみると2100年代だったり、死後の世界、幽霊、時間旅行といったSFとホラーを一緒くたにしたようなストーリー、そして最後になってやっと分かる主人公に執拗につきまとうゾンビイの正体といったあたりも全く古さを感じさせない。
もっとも今回読み返してみて、最初と最後の場面、そしてゾンビイが初めて出てくるシーンははっきり覚えていたのだが、それ以外はすっかり忘れていた。と言うより、全く初めて出会ったシーンも多かった。おそらく、小学校にあった本は子供向けに編集されていたのだろう。
25歳のある日を境に幽霊、死後の世界といったものを全く信じなくなったにもかかわらず、この小説は一気に読んでしまった。幽霊は信じられなくとも「裏付け」があればいいのか、それともシェクリィの才能によるところなのかは分からない。

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