Peter Gabriel / New Blood
ピーター・ゲイブリエルといえば、年が経つにつれ、どんどんアルバムを出すまでの間隔が長くなってきていた。
「I」〜「II」:1年3ヶ月
「II」〜「III」:2年
「III」〜「IV」:2年4ヶ月
「IV」〜「SO」:3年8ヶ月
「SO」〜「US」:7年
「US」〜「UP」:10年
もちろん、間にライブ・アルバムやらコンピレーション、他プロジェクトのリリースはあったが、この分では次のアルバムはでるのかという危惧さえ抱いていたが、さすがに前作「Scratch My Back」ではインターバルが縮まった。それでも8年かかったのだ。次はもうないかも知れないと思っていたところに、嬉しいことに新作が発売された。それもわずか(!)1年半という短いインターバルである。
残念ながら、やはりオリジナル新作ではなかった。そう、前作発表後(そして現在も継続中の)、オーケストラをバックに行われたコンサートを経て、オリジナル曲をオーケストラをバックにアレンジし直して改めてレコーディングされたものである。
前作「Scratch My Back」は意表を突いたアルバムだった。ゲイブリエルお気に入りの楽曲をカバー、それも電気楽器は一切使わないというものだった。コンセプトは面白かったのだが、アレンジが地味で暗い印象のアルバムだった。だから、今回のライブ・アルバムの発売が発表されても、正直それほどときめかなかったのだ。
しかしそれからオフィシャル・サイトでコンサート映像やメイキングがアップされると印象が一変した。当然コンサートでは前作「Scratch My Back」の曲に加え、彼のこれまでの楽曲をセットリストに加える必要があった。そこでこれらをオーケストラ用に再度アレンジし直したのだ。アレンジャーは前作と同じくジョン・メッカーフが担当しているのだが、印象は前作とは随分違う。
ゲイブリエル自身の楽曲は、他人の楽曲ほど大胆な変更が加えられてはいなかったのだ。さらに大胆且つ躍動感漲るアレンジで聴いているこちらも高揚してくる。コンサートでは盛り上がりどころが必要なので、それも必然だったのだろう。しかしそれでも「サン・ジャシント」は例のミニマル風シークエンス・フレーズがマイナー調に変えられていて新鮮である。また「リズム・オブ・ザ・ヒート」も、エンディングでオーケストラだけになっての盛り上がり方は今作のハイライトと言える。
取り上げられた楽曲は、
「I」:1曲
「III」:1曲
「IV」:3曲
「SO」:4曲
「US」:2曲
「UP」:2曲
「OVO」:1曲
となっているが、先にも述べたように「IV」からの3曲が自分にとってのハイライトだった。ちまちま一人で作り上げたのか、「IV」は優れた楽曲が揃っているのだが、あまり好きなアルバムではなかった。だがここでは新たな命を吹き込まれて、原曲の魅力がさらに増しているのだ。
残念ながら最も好きなアルバムである「II」からは一曲もとりあげられず、そして「III」からも一曲にとどまった。そういえば以前からベスト盤でも「II」からはほとんどとりあげられることがなかったので、本人もその良さを分かっていないのだろう。
さて、今回はこのスタジオ・アルバムに加え、ロンドンのハマースミス・アポロで収録されたライブ映像も発売された。DVD、ブルーレイはもちろん、3Dブルーレイもである。さらにスタジオ・アルバムも2枚組スペシャル・エディションがあり、2枚目には「カラオケ(?)」バージョン+歌入りのCD未収録曲がボーナスとして収録されているのだ。それに加えてスタジオCD+ライブブルーレイ+ライブDVD(ブルーレイと同内容)+ライブからの抜粋音源収録CD+豪華本使用のデラックス・エディションまで出た。3Dはおろか、ブルーレイもまだ見れない自分にとっては、DVDもついているデラックス・エディションが手っ取り早くほぼ今回のプロジェクトの全貌を知ることが出来るので、これを手に入れた。英国からの送料込みで、オフィシャル・サイトのWOMADショップにて3800円で手に入れることが出来た。ハイパー円高の恩恵である。
映像版はコンサート本編に加え、特典としてインタビュー、メイキングが付属する。前作からの4曲に加え今回のスタジオ・アルバム収録曲も加えた全22曲で2時間を越える。スタジオCDでも充分楽しめたが、聴衆がいるコンサートの方がより熱いパフォーマンスが楽しめる。
しかし前作、前々作発表後のツアーでも日本にはやって来なかったが、残念ながら今回も来ないだろう。今頃は数度に亘る北米、欧州ツアー、そして南米ツアーに続きメキシコ・ツアーが行われているにもかかわらずである。昨年生でコンサートに接することの出来たドイツの友人は、いかにこのコンサートが素晴らしかったかを熱弁していた。いくらDVDやCDの出来が素晴らしいと言っても、コンサートを実際に体験することに比べれば2分の1、否、10分の1程度に過ぎないだろう。
何とか日本にやって来て欲しいものである(それでも来なければ、こっちから行くぞホトトギス・・・)。
(豪華ブックレットではスタジオ風景、そしてコンサートの一コマが)
VIDEO
(コンサートのハイライト!「リズム・オブ・ザ・ヒート」)
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(そして予告編!)
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