過去のメールを整理していたら、こんなのが見つかり思わず笑ってしまった。2004年9月、ZUMとして初めてアルゼンチン、チリへ行くことになった時のことである。ルシアーノが南米旅行で注意すべき点を知らせてきたのだ。それによると、
一.決して空港でタクシーを拾うべからず。
一.決して空港の銀行で通貨両替をするべからず。
一.空港で両替すると近寄ってくる人間は信用するべからず。
一.荷物運ぶのを手伝おうと近寄る者は信用するべからず。
一.荷物とギターには常に注意を払うべし。それらは魔法のように、一瞬にして消え去ってしまうことしばしばである。
−中略−
ここまでは、海外旅行ではある程度共通の常識と言えるが、さらにこう続く。
一.道路を横断するときは細心の注意を払え。たとえ歩行者天国であっても車は止まらない!一方通行であろうが逆行してくることもある。左右をよく見るべし。
こうなると、まるで無法地帯である。実際はそこまでひどくはなかったのだが、それでもびっくり仰天したことがいくつかあった。
初めに訪れた街、メンドーサはワインで有名だが、都市というほど規模が大きくない。いつも車で移動していたのだが、市街地でも信号はほとんどない。交差点に差し掛かると一時停止することもあるが、左右から車が来ているにもかかわらず、そのまま通過することもある。一体どういう優先ルールがあるのか不思議だった。標識を探してみても、それらしきものは一切ないし、道路の幅もどちらも同じくらいなのだ。先着優先のような気もするが、後から来たのにそのまま一気に通過してしまうこともある。いつも交差点を通過するたびに足がすくむ思いだった。
数日経ってあることに気がついた。だがそんなはずはないと思い、ドライバーに聞いてみた。「もしや、交差点の優先ルールなどないのでは?」すると、こういう答えが返ってきた。
「優先って何だ?交差点では気配を読むだけだ。相手が来ると感じたら止まり、来ないと感じれば行きますというオーラを出して一気に通過するのだ。」
予想よりひどかった。動物的な勘だけを頼りに、みんな交差点を通過していたのだ。

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