何事も完成してしまうとつまらない。これは以前から感じていたことだが、数年前に友人の春本徹志君にすすめられて(借りて)読んだ、実相寺昭雄著「ウルトラマンの東京」で決定的になった。
実相寺氏はウルトラマン、ウルトラセブンなどの監督であり、TV特撮の草分け的存在である。同書を読むと、当時のスタッフがアイディアを出し合いながら、それまでに誰もやったことのない効果を次々に生み出していったことがよく分かる。まだ新しいメディアだったTVで、いかに面白くするか、不可能を可能にするか、みんな必死で考えていたのだ。時には生番組で大失敗し、CMの時間に割り込んでしまったり・・・なんていう、今となっては信じられないような裏話も楽しい。
何事もそうだが、新しいものが生み出されてそれが完成するまでの期間が最も面白い。もちろん荒削りだったり行き届いてなかったりするのだが、そこがまたいいのだ。
完成されてしまうと定型化され、マニュアル化され、またそれを教育する機関ができてしまう。何事もパターン化され、創意工夫もなくなってしまう。もちろん、完成に至るまでの道のりで、いろんなことが試されては消えて行く。
TVもつまらなくなって随分経つ。ところで、我が家にはTVはないのに(見ようと思えば見れないこともないが・・・)受信料を払ってきたが、そろそろ潮時だ。
60年代のロックが面白かったのも、マニュアルが確立されてなかったからなのだろう。変わったことをやるヤツがいれば、レコード契約もできた時代である。キャプテン・ビーフハートがメジャーから出れたなんて、今から考えれば信じられない話である(隊長をけなしているわけではありません)。
とは言え、より完成されたものを目指すのは人間の性。野生を保ちつつ、それを昇華して新しいものを作り出す人こそが、真の芸術家に値するのだろう。

0