「ロバート・フリップ&オーケストラ・オブ・クラフティ・ギタリスツ3」
ギター・クラフト
2010年3月、イタリアのサソフェラートにて、ロバート・フリップ&オーケストラ・オブ・クラフティ・ギタリスツIII(以下OCG3)が開催された。
自分は昨年2月のスペインでのOCG1に続き、2回目の参加となる。昨年は50人程度のギタリストが集団即興演奏を繰り広げるというものだったのだが、今回はおよそ100人のギタリストが集まった。
コンサート自体は、約一週間の準備期間を含む「最後の」ギター・クラフト・コースの一環として行われた。経験もスキルも国籍も異なるギタリスト達が集まったわけだが、参加資格としてはある程度のギター・クラフトでの経験が問われた。プロ・ギタリストはもちろん、初心者同然のギタリストもいれば、プロ・ドラマーや、大学教授までが参加した。
準備期間中は「いかに音楽を発生させるか」に取り組む毎日だった。昨年のOCG1では、リハーサルではフリップによる「お題」に基づき、即興演奏するというものだったが、今回は一切の指示はなく、単に「準備ができたら始めてください。」と言うだけだった。
過去2回のいずれか、または両方に参加したものもかなりを占めたので、前回よりはマシなスタートだったが、それでも100人が音を出すので、すぐに飽和状態になってしまう。いかに「弾かない」かを皆が理解するかが、コンサートを成功させる鍵なのは明らかだった。
数日後、コンサート会場となる教会を視察したロバートはこう言った。「会場はパフォーマー全員が着席して演奏するには狭すぎる。そこで全員が立って、それも常に動き続けて演奏するのがよいだろう。」
ただでさえ窮屈な会場で、しかも立って動き続けたら、ギタリスト同士あちらこちらでぶつかり、最悪の場合転んだり、楽器が壊れたりするのではないだろうか。
数日のリハーサルの後、さらに提案が出された。「9人のセクション・リーダーを決め、皆はそれぞれのリーダーを中心とする9つの小グループに分かれる。各グループ・メンバーはリーダーの指示に従って即興演奏を行うが、それぞれのグループは同時に他のグループで行われていることにも注意を払い、それに反応する。」
これを実践したところ、本番でどうあるべきかが見えてきた。リハーサルで奏でられる「音楽」の質が劇的に変化したのだ。
さて、オーケストラのリハーサルと並行して、小グループの「既に書かれた音楽」の発表も毎日行われた。ギター・クラフトでは定着しているが、食事時にパフォーマンスを行うのだ。ZUMもこの機会を利用してリハーサルした曲を試してきた。今回この食事時パフォーマンスが、実はオーディションも兼ねていたのだ。そしてオーディションに合格したグループが、本番でオーケストラの合間に「既に書かれた音楽」を披露することになった。
コンサートが60分から90分とすると、全てをオーケストラの即興演奏だけでは一般のオーディエンスには厳しすぎるという配慮から、昨年はZUMがその役割を受け持ったのだが、今回は臨時編成の9人によるグループが担当することになった。自分以外はアルゼンチン人、イタリア人、アメリカ人によるThe Plumber Monks(以下TPM)である。
本番前日になり、コンサートの流れが発表された。『まずオーケストラが3、40分即興演奏し、TPMが20分程度演奏、その後オーケストラが戻り“ウィズ”を行う。最後にアンコールとしてThe Schizoid Plumbers+ロバートで「21世紀の精神異常者」を演奏する。』
そして本番当日がやってきた。
コンサートはある意味、ギター・クラフト25周年の歴史の集大成とも言えた。特に重要な点は、「いかに弾かないか」、そして「いかに反応するか」である。また心配していた転倒事故が起こらなかったのは特筆すべきことである。これもアレクザンダー・テクニークを採り入れてきたギター・クラフトだから出来たことだと思う。
さて、この10月(アルゼンチンだから春)には、ロサリオにてOCG4が開催される。参加したかったがZUMが11月に日本でレコーディング+数本のライブを行うので、残念ながら今回は見送ることにした。OCG5が開催されることに期待しよう。
(コンサート9分目から12分目までの抜粋)

(TPMのリハーサル風景)
他の映像は5/28付
「ウォーリーを探せ」で)

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