いつもの人たちが集い、いつものような静かな熱気。
縦長の部屋で後ろの方はやや聞き取りにくかったが、女性選者の場合はマイクに噛みつくほど近づくのははばかれるようで、これは主催側で個々のマイクの高さや距離は配慮するべきだろう。
一生懸命声を大きくして頑張っている選者に、まるで参加者の権利を主張するように、何度も何度も「聞こえません・・」と催促するのも如何なものか。そうでなくても緊張している新人選者はそれだけで上がってしまう。「耳を澄ませば聞こえるだろうが」と、つい大きな声を出しそうになったがガマンした。
自分たちは楽な姿勢でおしゃべりしながら「聞こえません」もないもんだ。とこれは玉野大会だけではなくいつも思うこと。自分が演壇に立ってみたらよくわかる。それにしても、あのお淑やかな清水かおりが「私は声が小さいので」と、マイクを握っての披講は見事だった。
しかしまあ、新人選者はヤジの洗礼によって選者として成長してゆく。そのための愛のムチだと思えば、こころないヤジも、やさしい神様の声のように聞こえてくる。
入選句は発表まで待たなければならないが、とりあえず私の句(笑ってください)。
○○サーカスのどの辺からが余波ですか (余波)
○○兄さんが死んで女に居座られ
○○サーカスの家族ただよう銀河沿い (漂う)
××漂うてばかりはいられないくじら
○×越境の白いピアノを監視せよ (境)
○◎ここからは来るなと青く葱を植え
○×目立屋の月にかざしているむかし (むかし)
○ まぼろしを包むガーゼに血がにじむ (まぼろし)
○ まぼろしの街の巨大な眼の模型
出さなかった句(30句の一部)
国境をまたぎ正装する人ら
さざ波も立たないようにひっこ抜く
漂うているのはクマのぬいぐるみ
むかしとはびっしり青いひかりごけ
境界をまたぐ百合の根噛みながら
豆大福の境せんそう勃発する
立て付けの悪い雨戸の向こうが死
金魚には金魚に見合うだけの余波
できたてのセレクション柳人シリーズ「草地豊子集」もよく売れた。
座布団の際まで耕されてしまう
パン粉つけてしまえば誰か判らない
ちゅうちゅうアイス今日は八月十五日
生きているかぎりの腕を持ち上げる
スプーンの背なをうっすら光らせる
こんな目線で日常をとらえ、おかしくてせつない自分を戯画化してみせる。天根夢草と樋口由紀子が作品世界と作者をわかりやすく解説する。
BSネットショップにもなるべく早く公開します。ぜひお買い求めください。

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