
『狂歌百人一首泥亀(すっぽん)の月を読むー戯劇百人一首闇夜礫への改作ー』(山本廣子著・武蔵野書院刊)という立派な本をいただいた。
著者は1943年東京生まれ。家庭裁判所調査官を退職されてから、家事調停委員として家事事件にかかわりながら、同志社大学大学院文学研究科聴講生として狂歌研究に没頭されたという。
狂歌(きょうか)とは、社会風刺や皮肉、滑稽を盛り込み、五・七・五・七・七の音で構成した短歌(和歌)のパロディ形式。雅の文学といわれる和歌に対して、俳諧・滑稽を詠んだ卑俗な和歌。いわゆる俗の文学といわれる狂歌は、元禄の頃から俳諧の一部として流行した川柳に通じるものがある。しかし、明治にかけて近代文学の発展の陰でいったんは低迷する川柳が、現代にあっても根強い人気を保っているのに比較して、川柳とおなじ人情や風俗を滑稽に捉え、機知に富み、風刺の効いたうがちを身上とする狂歌は現代では廃れてしまった。
それは切れ字や季語などの制約のない川柳と、狂歌は知的遊戯世界として、和歌にも精通し、本歌取りなど伝統的技巧を必要とし、覗きからくりを見るようにうがちや茶化しを見抜く面白さの違いだ・・と著者は言う。

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