小特集ー俳句のブラックユーモア
ブラック? 石原ユキオ
童貞諸君鰭酒はおまんこだよ 北大路翼
公衆の面前で「おまんこ」と言ってはいけない。書くのもよろしくない。わかりやすいタブー侵犯である。おまんこを知らない童貞諸君に向って「鰭酒はおまんこだよ」と言っているあたり意地が悪い。たとえば彼らが未成年なら当然鰭酒は知らない(はずだ)。未成年じゃなくても普通の若者は鰭酒なんて飲む機会がないだろう。知らないものを知らないものでたとえられても、童貞諸君の頭の中は憧れと妄想でいっぱいだ。
※童貞諸君でなくても、「鰭酒」の隠語としての意味を知るものはそう多くはいない。かつて20年も前にNHKテレビのクイズ番組で美人スターが「ヒレザケッ!」と答えて、おおいに周囲を慌てさせたことがある。それにしてもまだ若いとお聞きする北大路翼氏の知ったかぶりがなんとも微笑ましい。
友のみ知る中絶の過去卒業歌 北大路翼
二句目は中絶。中学校か高校の卒業式。三年間でいろいろあった。いろいろあった中には、恋、妊娠、中絶も。相手の男は彼女に妊娠中絶させてことを知らないまま講堂のどこかにいるのか。それともここにはいないのか。何となく冷酷な詠みぶりである。
※さらりと「中学校か」と言われただけでオジさんは肝を潰すが、これがまだ幼い少女たちの現実だとしても、ブラックユーモアというよりも、さらりと「ブラック?」と首をひねってみせたユキオちゃんの感覚も結構こわい。

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