作品評を振り返る・・浪越靖政
前号に続いて、外部に依頼した作品評を振り返っている。今回は11号〜19号まで、8人がそれぞれの個性的批評を展開しているのだが、やはりその中で第19号(08年8月)の須田尚美氏の批評がひときわ光っているように思った。摂津幸彦の「路地裏を夜汽車と思う金魚かな」を例に引きながらの独特の視点。
陽炎を跨ぐいつもの昼ごはん 比呂子
陽炎を跨ぐという仕草に注目させられる。そして結句は「昼ごはん」である。「陽炎」と「昼ごはん」というまったく関係のない事柄を衝撃させることによって、非日常へと誘ってくれるのだ。さりげなく書かれているが月並みを抜けた作品である。
雨漏りのする輪で一人ずつ消えた 百合子
「雨漏りのする輪」とはもちろん喩であろう。そこから一人ずつ消えていくのである。まとまりのなくなった家族ようなものが見えてくる。浮世の一コマが描かれているのだが、「する輪」が窮屈なので工夫をしてみたい。
目新しいことが書かれているのではないのだが、何とか句のよさを引き出そうとする態度が短いことばの隅々にまで行き届いている。

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