秋は身体が真ん中から折れるって「私」を吐き出す透明な虫
三年と三日で終っている君の赤色の文字ばかりのノート
「手の中の金魚を逃してやるときは局部麻酔をかけてやる」
サランラップで封印している無というどんぶりいっぱいのムだ
千切りのたまねぎキャベツまぜているボールのなかの世界の匂い
今日右の脳をレンタルしてきたと簡単に言う妻の左脳は
餓死した影たちが立ち上がる 途中で忘れ物をしたみたいに
簡単に壊れてしまったフレームのなかにあなたの破片が残る
広場には出来損ないの人体が正座のかたちで積み上げられて
背中が大きく開いてはみだしているいくつものわたくしの顔
(短歌誌「井泉」NO25より)
BSおかやま川柳大会のゲスト選者、彦坂美喜子さんの短歌を紹介します。

0