読む・作る、は車の両輪であり、どちらが欠けても前進しない。これを提唱してもう10年ほど「川柳塾」を中心に合評会を続けているのだが、思うような成果は得られなかった。句会中心の課題吟を作ること、その入選だけを拠りどころにしているものにとって、最大の関心事は入選する句を作ることであり、入選するために他の句を参考にすることはあっても、「一生懸命作った人さまの句にとやかく言うものではない」と他人の句に批評を加えることなどは悪しき習慣として戒められていたようだ。
BSおややま句会は、競吟よりも合評会を中心に、あるいは誰かの話しを聞く会ではなく、もっと積極的に全員が発言できる会として発足した。句会吟とは別の、自作一句持ち寄りの合評会に「今日はアキラさん私にあてないでね」とか、私の意図はよく伝わっているらしく、すこしの期待と多少の不安もある26名が集まってくれた。案内はBS関係にとどめたが、希望される方にも門戸は開いておいた。
パソコンとプリンターまで持ち込んで、26句を配布し、各自3句採点方式で合評会が始まる。最初はユーモアを交えて、固く閉ざしている口を無理やりこじあけるように、「この句を評価しているのはあなただけだ、この句の弁護士になったつもりで意見を述べよ」「おざなりな褒め言葉はあっても、おざなりな悪口はない」「悪口(批評)はいつでも本気でなければならぬ」「悪口は感情だが、批評は感情ではない」「まず批評されることに感情的にならない体力をつけよう」と前置きをして、「もうこんな句作るのやめようよ」とか、自由に発言できる雰囲気を作った。
高得点句のときは採点していないものに発言をふる。「この句の場合のあなたの意見は希少価値になる。検事になったつもりで述べよ」。アッっとかすかに悲鳴をあげながら、それでもたどたどしく、しかし感情を避けながら何かを述べようとするひたむきさ。高踏的な意見ではないが発言にこれまで川柳をやってきた全体重がかかっているのが分かる。意見が煮詰まったときには、石田柊馬、ゆみ葉が助けてくれた。よどんだときには草地豊子が手を挙げてくれる。このようにして、岡山もようやく「読みの時代」に入ってゆく。
いつの場合も私の叱られ役に耐えて黙々と準備と進行を努めてくれる柴田夕起子に感謝し、補佐の井上早苗、パソコン係を担当してくれた江口ちかる、そして参加者全員に感謝したい。

0