昨夜、といってももう日付の変った午前3時過ぎに句会は終わった。そしていま寝たばかりなのに、もう枕元でごそごそと紙袋の音をさせている誰か。「かなわんなあ・・」と思いながら薄目で窺ってみると、なんと全員が布団を畳んだり机を片付けたり、甲斐甲斐しく働いているではないか。「早ようから何してんねん・・」「早いって、もう8時回ってますよ・・」「ええ〜」ということで飛び起きて、寝ぼけ眼であたりを見回す。「ねむらん会」では男どもは句会のある大広間で仮眠をとり、女性だけ部屋をとっている。持ち込み禁止のはずの日本車、焼酎、ワインの瓶が散乱している。
23日の午後4時に始まった句会は、それから延々と11時間、途中にボール蹴り、紙きりなどで遊びながら、長歌に挑戦したりことばのゲームを楽しみ、川柳を作りつづける。もういい年をした少年少女たちが、血相を変えてエンピツを動かしている図は、他人からは狂気に満ちた滑稽さにしか見えないだろうが、三分間に10句近く、あるいはそれ以上作るという愚かさを課題と選者を変えて延々と繰り返す。いわば言葉を挑発するエネルギーの繰り返しといってもいい。まだ未整理で作品は発表できないが、粗製濫造ぎりぎりのところで、それぞれの句に書き手の自負が反映されている。
(三分間吟の一例)
一本の針金ことばにならんとす
お茶碗の中でことばになってゆく
八月の鴉の言葉が光りだす
紺碧のことばを夢の盾とする
雨の日は雨のことばが耳の奥
ことばなら身に一万語つけている
湿ったことばから象を救いだす
バカ貝の引っ込む力はね車
本当の馬鹿になります唐辛子
針の穴バカ以外には通れない
体内水位上がってきたと自覚する
朝は「短歌のお時間」で遊ぶ
青色の卵が孵る頃なのだと壁の絵を指しあなたは言った
食卓の上の荒野の旅人のように置かれている茹たまご
狼の耳うつくしく光るなりTシャツとはこころを隠す布
これはあの新しい町の展開図だぶだぶのTシャツで歩こう

0